2023年01月23日
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三百字小説『パリのパリパリ焼き海苔』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 若者は焼き海苔が好きだった。

 海苔がパリパリであることにこだわっていたので、付いたあだ名がパリパリだった。

 彼はよく言った。

 「パリパリの焼き海苔はもう芸術だ。芸術の都パリの名にかけて」

 そこで、「だったらパリに行って焼き海苔を布教してこいよ」

 「それは名案だ!」と若者は言ったが飛行機代がない。彼は船を作ってパリに向かって船を漕ぎ出した。パリパリの焼き海苔も船に積み込んだ。

 しかし嵐で遭難して流れ着いたのはバリ島だった。焼き海苔はバリバリになっていた。

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦