若者は焼き海苔が好きだった。
海苔がパリパリであることにこだわっていたので、付いたあだ名がパリパリだった。
彼はよく言った。
「パリパリの焼き海苔はもう芸術だ。芸術の都パリの名にかけて」
そこで、「だったらパリに行って焼き海苔を布教してこいよ」
「それは名案だ!」と若者は言ったが飛行機代がない。彼は船を作ってパリに向かって船を漕ぎ出した。パリパリの焼き海苔も船に積み込んだ。
しかし嵐で遭難して流れ着いたのはバリ島だった。焼き海苔はバリバリになっていた。
(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)