2023年04月03日
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三百字小説『大公殿下の辛子明太子』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 大公殿下は辛子明太子が好物だった。

 しかし、ある日食卓から辛子明太子が消えた。

 「なぜないのだ」

 「タラがタマゴを産みません。辛子明太子はタラの卵巣から作ります」

 「なぜ産まないのだ」

 「少子高齢化が進んでいまして」

 「なぜみんな子供を持とうとしないのだ」

 「それは大公閣下が重税を課すからです」

 「それはいかん。すぐにタラに支援金を配れ」

 「財源がありません」

 「よし、増税だ。特にタラから多く取れ。受益者負担だ」

 「ではさっそく」

 その結果、タラはヤタラと怒ったそうだ。

 めでたしめでたし。

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦