2023年04月17日
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三百字小説『死相が出ていて嬉しそう』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 「おぬし、死相が出ておる」

 そう言われた僕は身体を鍛えた。

 そう簡単には死なない身体ができた。

 それが哲学だ。哲学バンザイ。

 「おぬし、思想が出ておる」

 そう言われた僕は理屈に走ってもいけないと思って詩心を求めてポエムを想った。

 「おぬし、詩想が出ておる」

 そう言われた僕はもっとストレートな欲求を持つべきだと思い、彼女を作った。

 「おぬし、嬉しそうが出ておる」

 それでいい。完璧だ。

 しかし、死相はまだ消えていないことまでは言ってくれなかった。

 そのことに気付いたのは、彼女から崖下に突き落とされたときだった。

 「俺を殺したって遺産はないぞ」

 「ごめんなさい。死相が出ている人を殺すのが死神の仕事なの」

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦