思い付いたことをメモっておくためにこれを書いています。
しかし、ある程度分かるようにしておかねば、と思ったところ、文章量が増えてしまいました。とほほです。
内容の正しさは無保証です。というよりも、正しくないと思って読んだ方が良いと思います。
脳をハッキングせよ! §
1980年代に、SF(小説)界で、サイバーパンクというムーブメントが起こっています。非常にいい加減な解釈を書けば、脳とコンピュータが電線で直結される(ワイヤードされる)電脳空間(サイバースペース)で冒険する空想話のジャンルと言えます。(ここでいう電脳空間は、脳とコンピュータやネットワークが電線で直結している状態であることに注意が必要です。インターネットをサイバースペースや電脳空間と呼ぶこともありますが、それと意味が一致していません)
そのようなムーブメントは各方面に影響を与え、たとえばアメリカでも大人気を博した押井守監督作品映画「攻殻機動隊」なども、この流れの上に乗った作品の1つと言えると思います。
こういう世界観では、ネットワークを通じて脳にハッキングを行う、という描写が出てきます。
しかし、そのような描写に説得力があるのかというと、私個人としては、あまり説得力を感じられない印象を持ちます。単純に脳の神経細胞とコンピュータを電線で接続しても、それで意味のある情報のやり取りがどれほどできるか疑問であるし、たとえ可能でも、脳の論理的な表現システムは個人差が大きいから一人ずつインターフェースする必要があるような気がします。それらを行って、視覚聴覚よりも多くの情報をやり取りできるかというと、見たこと聞いたことが全て頭に入っていない状況から考えれば、そもそも、そんな大量のデータをやり取りするのは無理じゃないかという気もします。
まあ、こんな感じで、あまり真面目に考えていないので、大した根拠はありませんが、現実的には脳とコンピュータをワイヤードする(接続する)ことは、みんなが思うほど簡単ではないだろうし、良いものでもないだろうと思っています。
そんな状況で、電線を経由して脳を乗っ取られるリスクなど、(現時点では)真面目に考える価値があるとは思えません。
しかし、これで脳は安全かと思いきや。
そうでもないということに気付きました。しかも、「理論的」に脳への侵入が可能であるという「アイデア」ではありません。「既に」脳への侵入は行われており、そのことに無自覚な人も珍しくない、という考え方ができることに気付きました。より正確に言えば、脳に侵入しているというよりも、精神に侵入していると言った方が良いかもしれません。
人の精神に入り込み、自分の考えではない考えを語らせる存在 §
精神の前に、身体の話から始めましょう。
身体は、ウィルスに感染して病気になることがあります。ウィルスは本人も気付かないうちに身体に入り込み、身体を維持成長させるメカニズムを使って自分を増殖させます。ウィルスは、遺伝子という自らのアイデンティティを持ち、それが増殖することを通じて、生き続けます。けして、条件さえ揃えば、自然に湧いて出てくるものではありません。そして、突然変異を通じて自らを変化させ、環境に適応し、生き延びようとします。
同じようなものが、精神にもあるだろう、と気付いたわけです。それは、本人も気付かないうちに精神に入り込み、人間を利用して自己増殖を行います。そして、自らのアイデンティティを持ち、複製されることで増殖します。条件さえ揃えば自然に湧いて出てくるようなものとは違います。そして、変化を通じて適応力を発揮します。
そのようなものを何と読んだらよいのか分かりません。ここでは、間違いである可能性を踏まえつつ、とりあえず、語感がよいのでミームと呼んでおこうと思います。
ミーム 【meme】
個々の文化の情報をもち,模倣を通じてヒトの脳から脳へ伝達される仮想の遺伝子。イギリスの動物学者ドーキンスが著書「利己的な遺伝子」の中で命名・提唱。
ミームの例: Macintosh §
分かりやすいミームの一例としては、Macintoshというパソコンにまつわるミームがあると思います。ここでは、Macミームと呼ぶことにします。
Macミームは、以下のような特徴を持ちます。
- 人間を惹き付ける輝かしい魅力を発する (強い感染力)
- Macミームの持ち主をMacミームの伝道者として活動させる (強力な自己増殖)
- 同種の他ミームに対する排他性 (混血によるアイデンティティ喪失を遠ざける)
これらの特徴によりMacミームは、Macintosh愛好家を媒介として幅広く広がり、かつ、これが他のミームと交わってMacミームとしてのアイデンティティを喪失するような流れにはなっていません。
それはさておき、これが本当に精神に侵入された結果なのか、という疑問はあり得るでしょう。つまり、Macミームなどというものがなくても、良いものは良いと判断する能力がある人間がMacintoshを愛好しているだけのこという解釈です。
しかし、その解釈では、もともと伝道者として行動するような行動パターンを持たない人が、Macintosh愛好家になったことで伝道するようになる理由を説明するのに十分ではありません。もちろん、Macintoshは良いものであると判断するところまでは、Macミーム抜きで解釈できます。しかし、その先に発生する、Macintosh愛好家ならではの共有される行動スタイルなどは、Macミームによって引き起こされると考えた方が、すっきりするような気がします。
ミームの例: 1日3食 §
ミームは、人間なら誰でも持っているものであり、しかも多数のミームを常時抱え込んでいるのだろうと思います。その中には、生活に密着したものもあると思います。
たとえば、1日3食というのも、ミームの一種だろうと思います。1日に3回食事をするというのは、誰もが思うほど当たり前ではありません。昔の日本では1日2食が普通だったそうです。ですから、1日2食ミームが1日3食ミームに取って代わられた歴史があると解釈して良いと思います。
しかし、最近では朝食抜きという新種の1日2食ミームもあって、秘かに広まっています。これは従来の1日2食ミームが復活したものではなく、1日3食ミームの朝食が欠落することによって出来た亜種ではないかと思います。
ミームの例: 通販の健康器具 §
使いもしない通販の健康器具を何回も買い込んで、しかもTVのCMを見続けるような人がいますが、これもミームの一種の仕業だろうと思います。主にテレビを媒介にして増殖しているように思われます。
良性のミーム・悪性のミーム §
人間の体内に多くの微生物がいるのと同様に、おそらく人間の精神にも多くのミームがいて、人間と共生関係にあると思います。しかし、共生関係にならず、身体に害をなす微生物がいるのと同様に、ミームにも共生する良性のものもあれば、害をなす悪性のものもあるのでしょう。
たとえば、1日3食ミームは良性でしょう。
しかし、Macミームは、MacMacと騒ぎすぎて仕事場で孤立したりする可能性があるので、悪性ミームとして発症する可能性もあり得るものでしょう。
ミームに対する無自覚性の問題 §
ミームにまつわる最大の問題は、おそらく、人間が自分自身へのコントロールをミームに乗っ取られる危険性です。悪性でかつ強力すぎるミームは、個々の人間が持っている自分の判断を完全に覆して、自らの行動原理を人間に強制する場合があります。
たとえば、周囲に対して迷惑な行動を取るようなミームである場合、冷静に考えれば自分に不利だと誰でも分かるけれど、ミームのコントロール下にある本人には分からなくなってしまう、という状況が起こりえます。
更に悪いのは、そのようなミームを持つ者達が徒党を組むことです。徒党を組めばミームにとっての安全性が高まって、ミームが生き延びる確率が高まります。そして、安定した存在基盤を持ったミームは感染者を通じて、社会に迷惑を働きかけることもあり得るでしょう。
大切なことは精神の健康。ミームへの耐性を持とう §
人間の身体であれば、健康ならそう簡単に病気にやられたりはしません。それと同じように、精神も健康であればそう簡単に悪質なミームを取り入れてしまうことは無いでしょう。
しかし、健康が大切だという認識がなければ、いともやすやすと悪性ミームに入り込まれる危険があります。健康への意識がない人が病気になる危険性が高いのと同じことですね。
そのような観点から見ると、実は現在は精神の健康の常識も知らない人ばかりで、かなり危機的状況にあるような印象も受けます。
少なくとも、使いもしない健康器具を売る商売がいつまで経ってもすたれないのは、その種のミームを受け入れてしまう人達がいつまで経ってもそこにいるためでしょうね。少なくとも、平均的な人間の通常のお買い物の心理からすれば、あれはそうそう買ったりしない代物です。他にも、いかにも事実ではあり得ない話をたやすく信じて金を取られる事態が後を絶たないことや、常識からかけ離れた宗教が人を集められることなど、いろいろと事例は考えられます。