正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ジオン軍小失敗の研究は、幸いにも好評をもって迎えられたが、それと同時にジオン軍だけを扱うのは不公平であるという意見を頂きました。小さな失敗は勝利者である連邦軍にも多くあり、これを取り上げないことは公平を欠くというわけです。
そこで、ジオン軍小失敗の研究と同様に連邦軍小失敗の研究を取り上げてみたいと思います。
まず、最初のテーマは諜報情報の軽視です。連邦軍は伝統的に力でねじ伏せるタイプの軍隊であり、諜報活動には熱心ではなかったと言われます。しかし、巨大組織である連邦軍ですから、小さな諜報部といえど、相当な規模の組織であると言えます。その活動は、諜報活動に熱心な小国を遙かに上回る規模であったと言えます。
たとえば、1年戦争以前にも、小惑星帯の反乱軍や、それを鎮圧に向かったジオン軍にもスパイを潜入させており、そこで何が起きたかについて、かなり詳細なレポートが作成されています。そこで、MS-05がどのような活躍を見せたかも、新型MS-06の高性能ぶりも、報告書に詳細に記述されていました。また、ミノフスキー粒子散布を伴う戦法も限定的に試行された経緯も全て報告されていました。そこで、ミノフスキー粒子を広域散布した場合、MS-05/06に対して現状の連邦軍では勝ち目が薄いことまで、的確に指摘されていました。
しかし、この報告書は連邦軍内でまったく取り上げられていません。連邦軍から見れば、ジオン軍には時代遅れの兵器の技術しか供与しておらず、それ以後に独自に技術開発を行ったところで、連邦軍を超えることはあり得ないと思われていました。また、ミノフスキー粒子の存在は知られていましたが、これを製造するには特殊な生成装置が必要で、極めて高価なものと知られていました。つまり、戦場に広域散布するなどできるはずがないと考えられていました。ジオンがミノフスキー粒子の量産プラントを既に稼働させていた可能性を想像する者はほとんどいませんでした。
また開戦日も、諜報活動により数日の幅を持ってかなりの正確さで明らかになっていました。しかし、小規模なゲリラ的攻撃ならともかく、圧倒的な戦力差があるのだから、全面攻撃はあり得ないという判断が大勢であり、諜報部は取り越し苦労しすぎだと言われていました。
このような傾向は開戦後も続いています。南極条約締結時にジオンの残された戦力は僅かであることは、レビル将軍が伝えるまでもなく、諜報部が把握していました。
しかし、諜報部が把握した客観的なデータよりも、レビル将軍個人見聞が優先した結果、連邦軍の反撃計画は回り道と無駄の多いものになりました。ジオン軍が地上に降りて約2ヶ月の間は、適切な地上戦の備えが不足しており、連邦軍の残存戦力で反撃すればジオン地上軍の戦線は崩壊したと言われています。しかし、連邦軍は諜報部の意見を入れて迅速に反撃しなかったために、ジオン軍は地上専用兵器の整備する時間的余裕を与えられ、その結果、オデッサ作戦のような大作戦を行わねば占領地の奪還ができなくなってしまったのです。
また、戦争末期の段階でも、ジオン軍が巨大なコロニーレーザーを建設中であることを諜報部が把握していながら、その情報が活用されていませんでした。連邦軍はア・バオア・クーを攻めるにあたって、主力を1つの大きな艦隊に編成して侵攻させたために、コロニーレーザーの射撃1回で、作戦の成功を危うくするほどの大損害を被っています。もし、諜報部の意見を受け入れて、艦隊を多数の小グループに分けて運用していれば、コロニーレーザーの射撃で失われる艦の数は大幅に少なかったでしょう。
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