2003年04月23日
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第3回 動く愉しさとDoGAの功績

Written By: トーノZERO連絡先

 この一連の文章の中で、どうしても外せないのがDoGAという団体の存在と、彼らが提唱したCGA(Computer Graphics Animation)という言葉でしょう。これは、日本のアニメとアニメーション(この2つの言葉はあえて分けて使います)を考える際に重要な意味を持つと思うものです。

 DoGAは現在もあり、自前のサイトも構えています。ですが、このサイトに書かれているDoGAとはという説明と、昔にと~のが聞いた説明はちょっとニュアンスが違っていますね。記憶を辿って要約すると、要するに静止画のCGは面白くないから、アニメーションを作ろうじゃないか、ということだったような気がします (だから動画=DoGA)。そこで、CGではなく、CGAというキーワードが意味を持ってくるわけですね。当時のパソコンの性能は低く、1枚の静止画を作るだけでも大変な話でした。それにも関わらず、アニメーションにこだわるというのは、非常に大胆なことです。それを実現できたのは、1つの大胆な考え方と、ある大胆なパソコンの存在によるとものと言えます。

 1つの大胆な考え方とは、写真のような美しい画像を求めたりせず、動かせる程度に画像を簡略化するということです。これは、画像を静止画として意識することが多い者達には分かりにくいかも知れませんね。マンガはもとより、アニメですら止め絵の美しさで勝負しよう、という作品も多い中で、動かすために画質を落として良いという考え方は、かなり大胆であったと思います。

 もう1つの大胆なパソコンとはシャープのX68000です。当時の主流のパソコンとこの機種を比較した場合、2つの大きな特徴があります。1つは、当時の主流はCPUとしてIBMが採用したものと同じインテル製品を採用するのに対して、X68000ではより大量のデータが扱いやすいモトローラ製品を採用したこと。もう1つは、当時の主流が、画像の表示能力として、少ない色数のまま画素数を増やす方向に進んでいたのに対して、X68000では少ない画素数で多くの色数という画面モードを備えたことです。この2つは、そこそこの画質で実際にパソコンの画面上で動く映像を見せるために必要な技術的条件だったような気がします。しかし、X68000は特殊なマニア層に支持され、売る側もそういう戦略を採ったものですから、当時の主流にはなり得ないものでした。

 このように、明らかにDoGAの方向性は、当時の日本の置かれた状況からかなり逸脱した大胆なものであったと感じます。

 ですが、これが間違ったものであったかというと、そうではありません。実際に、初期のDoGAの映像デモを見て、かなりショックを受けたことは事実です。画面の中をビュンビュン飛び回る宇宙船の自由さは、止め絵中心のアニメとは別世界であり、むしろハリウッドの特撮の宇宙船に近い感触がありました。単に、当時の日本の映像文化の世界に馴染みにくいだけの話であって、無価値だったわけではありません。

 このような歴史的な流れからもたらされるDoGAの映像は動くことに関して優れており、特に宇宙船を描かせたら見事なものがあります。それは、テレビアニメのロストユニバースで、遺憾なく発揮されていて、なかなかと~のの目を楽しませてくれました。しかし、これは当たり前のことではありません。実際に、ロストユニバースの監督が次に手がけたテレビアニメのCG (もちろん手がけたのはDoGAではない) は、明らかに見劣りして見えました。

 振り返ってみれば、アニメーションであることを強く意識したCGではないCGAの世界は、最初の段階から、日本のアニメの世界とは違う価値観や理想を持っていて、違う何かを蓄積してきたと言えるように思います。そして、パソコンが安価になってアニメの製作現場に日常的にCGが入り込んできたときに、この差は視聴者の目に見える形で現れるようになったと言えるかも知れません。

 次回は、ハリウッドにおける3DCGの話の予定です。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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