2004年12月30日
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電子出版のあり方、紙の模倣であるべきか、異なる価値を求めるべきか

Written By: 川俣 晶連絡先

 電子出版事業部便りの隔週連載を約束し、それを何気なくOutlookの定期的なスケジュールに入れていたのですが、何と気が付いたら今日が最初の「電子出版事業部便り」の掲載日にスケジュールされていました。

 うーん、困った。年末のクソ忙しい時期なのに。

 しかも、書いたってみんな帰省して読者もいないだろう。

 しょうがないので、最も根源的な問題を軽く書いてきましょう。

宣伝 §

 君もAdobe eBook形式の電子書籍を読んでみよう! ピーデー電子出版事業部はこちら!!

紙の模倣としての電子出版 §

 電子出版とされているものの多くは、紙の模倣を電子媒体上で行っています。極論すれば、本のページを開いた時と同じものが画面上に見えるスタイルを「電子出版」と称するものです。

 これは出版に携わる人達には非常に分かりやすいスタイルです。紙の書籍の常識の多くが通じるからです。

 また、既存の書籍の電子化も容易です。要するに、全ページをスキャンしてやれば、すぐ電子書籍が出来上がるわけです。

 弊社の電子出版事業部で扱っているAdobe eBookという形式は、基本的にはこの路線上にある技術です。紙の書籍を作るためにDTPソフトで組んだレイアウトをそのままPDFファイル経由でAdobe eBook形式に変換できます。

新たなる価値を創造する電子出版 §

 しかし、手慣れたパソコンユーザーから見ると、上記の方法は「馬鹿にすんじゃないぞ」と怒りの対象になります。

 パソコンを使う以上、読みやすさのために画面サイズに応じてページ当たりの文字数を変えるような機能は必須と言えるし、検索機能を使って特定の文字列を見つけたりするのも他のソフトでは当然実現していることですから、電子書籍でもやりたいわけです。

 しかし、あらかじめレイアウトが決まっていては、文字数を変えることなどできないし、単にページをスキャンした画像データであれば検索の対象にはなりません。

 ここで読者が望むような機能を実現する電子出版フォーマットとしてはHTMLが考えられます。しかし、HTMLのような、何でもありで、著作権保護機能もなく、しかも何が画面上に出るか処理系依存の技術を出版社サイドが採用することは無理だと言えます。

 ここで、必然的に電子出版は供給者と読者のミスマッチが発生します。デッドロック状態と言っても良いと思います。

ピーデー電子出版事業部はなぜAdobe eBook形式を採用したのか §

 個人的には、もちろん1読者として、紙の模倣に過ぎない電子出版など不満足であると思っています。

 それにも関わらず、ピーデー電子出版事業部は紙の模倣技術であるAdobe eBook形式を採用しています。

 その理由は何か。

 身も蓋もない言い方をすれば、イースト株式会社の下川さんから、こんなシステムがあるよ、使わない?と言われたからです。他の技術と比較検討した上でAdobe eBook形式を採用した、というわけではないのです。

 しかし、全く盲目的に採用したというわけではありません。

 それを読むためのAdobe eBook Readerというソフトが、割と好感触だったという理由もあるのです。機能過多ではなく分かりやすい画面や操作感により、ページをめくりつつ気持ちよく文字を読む、という目的によく適していると思いました。

 とはいえ、知名度もないマイナーなソフトであり、そもそもそれをインストールしているユーザーもほとんどいない状態で、ビジネス的なアドバンテージが得られるはずもありません。

しかし状況は変わった……か? §

 実は、ピーデー電子出版事業部を立ち上げた時点とは、状況が全く変わっています。

 Adobe eBook Readerというソフトはもはや存在しません。その機能は、Adobe Reader 6.0に統合されてしまったからです。そして、Adobe Readerが7.0にバージョンアップするという今、Adobe Reader 6.0以降は非常にありふれたソフトとして非常に多くのパソコンにインストールされています。

 それ以上に重要なのは、多くの利用者がAdobe Readerの利用に既に慣れているということです。

 つまり、現在のAdobe eBookとは、多くの利用者が既にインストール済みで、しかも操作に慣れているAdobe Reader向けに電子出版を行うための技術に変化しているのです。

更に見逃せないのは…… §

 更に見逃せないのが、Adobe Reader側も変化しているということです。Adobe Readerでも文字列検索は当たり前のようにできますが、それに限らず単なる紙の模倣の技術を超えて、電子媒体ならではのメリットを生かせるような形で、模索と進化が進んでいます。まだ100%の満足かと言えばそうではありませんが、変化し続けている以上は希望を否定すべきではありません。

 少なくとも、現在のAdobe Readerは最低限の実用性と、将来へのなにがしかの期待を抱くに十分なソフトであり、これをターゲットにした電子出版は十分に有益なチャレンジとしてあり得ると思います。つまり、紙の模倣に過ぎない後ろ向きの電子出版の肯定ではないということです。むしろ、未来に向かって、実現不可能な理想ではなく、実現できる理想と現実の妥協点を探る試みの1つであると考えています。そして、それによって、送り手である弊社はもちろん、読者も様々なメリットを享受することができるのではないかと思います。

 これが、ピーデー電子出版事業部がAdobe eBookを堅持し続ける理由です。

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