
さあ、これからホラムズとワタソンの歴史と現状についての話を始めるよ。
ホラムズとワタソンの名前を知っている人も、知らない人も、よっといで!!

ホラムズとワタソンって誰? §
最初にこれを書いておかないと始まりませんね。技術解説原稿に親しみを持たせるために「きたあきら」(川俣晶がかつて使用していたペンネームの1つ)によって生み出されたキャラクターです。そして、現在もなおしばしば登場する機会があります。
これと良く似た名前の有名な名探偵と助手がいますが、彼らを気取っているわけではなく、洒落で名乗っている現代の日本人に過ぎません。基本的に、ホラムズとワタソンは、パソコン通信で使用していたハンドルネームです。(このキャラクターが生まれた頃は、まだインターネットの時代ではありません)
なぜ、今ここでホラムズとワタソンなのか §
なぜ、今ここでホラムズとワタソンのことを語らねばならないのか、というと、その理由は3つあります。1つは一般論、1つ特定の出来事、最後の1つはささやかなる営業的なものです。
一般論として言うと、実はホラムズとワタソンというキャラクターには、根強い人気があります。書いた側が驚くほど、多くの読者が愛着を持ってくれています。雑誌連載当時には、Windows APIの解説記事だというのに、何とプログラミングのことは何も知らない人がつい読んでしまうといった事態まで起こっていました。
特定の出来事というのは、この二人が登場するAPI散歩道はもう入手できないのかという問い合わせのメールが来たことです。こういう問い合わせは、実際に行動に移すまでに至る人が少ないため、1つの問い合わせの背景には桁違いに多くの同様の疑問を持つ人がいると思われます。
最後の1つは、言うまでもありません。ささやかに説明は略します。
登場人物紹介 §
初回連載時に、しのらさとしさんの描いた挿絵を借用し、登場人物の紹介を行います。
ホラムズとワタソン §

ホラムズ(右)の本名は堀田高章。
ホラムズとは、子供時代のあだ名。「ホラ吹きホームズ」が短くなったもの。
ベテランのフリープログラマー。
1990年代にはWindows APIに詳しいところを見せていたので、その方面の仕事をしていたと思われます。
現在は、フリープログラマーとして仕事をする傍ら、サイバーニューストゥデイというパソコン業界情報を提供する電子メールマガジンを発行しています。
ワタソン(左)の本名は渡悟幸秀。
パソコンが大好きな普通のサラリーマン。技術レベルは低いが、大好きというパワーで実に楽しげにパソコンを使うという特技の持ち主です。
現在は、以下のパステルと結婚していて、家事全般はワタソン君の担当です。
ホラムズの住居兼仕事場の部屋の隣の部屋に住んでいて、家族同然に付き合っています。
パステル §

ワタソンの大学の後輩。
ファッションより技術が大好きな女の子で、学生時代は技術知識を求めてホラムズのところに入り浸っていました。
現在は、ワタソンの妻です。明らかにワタソンより優秀で、収入も多いようです。また、まるでワタソンが妻であるかのように家事をさせてこきつかっています。ちなみに、ワタソンは嬉々としてパステルにこきつかわれています。
大学卒業後は、大企業に就職したものの、そこをやめてソフトハウスの転職。明らかに実現できないソフトウェアを「作れるはずだ」と押しつけられるような理不尽な出来事の悩み相談のために、ホラムズのところを訪れる日々です。(これは、後述の電子商取引殺人事件で語られるエピソードとなります)
阿久野 §

パステルが学生時代に、ワタソンの恋のライバルだった男です。
それっきり出番もありませんが、絵が面白いので特に紹介。
レストラン警部 §
本名は練藤義隆。
レストラン警部とは、警視庁の刑事であるという理由からホラムズによって無理矢理付けられたあだ名。
ワタソンの大学の先輩で、パソコン関係の事件で頼ってきた関係で、ホラムズとも知り合います。ざっくばらんな態度で人が悪そうに見えて、実は親身に他人の面倒を見るタイプで、しかも有能です。
ホラムズとワタソンの歴史 §
Windows 3.0日本語版が発売された年も終わりが近い頃、Windows専門誌が続々創刊されました。The Windows, Windows Magazine, Windows Worldと3つも生まれましたが、いずれも残っていません。
このうち、ソフトバンクから刊行されたThe Windowsから、Windows APIを解説する連載を書いて欲しいという依頼がありました。この時点で、分かりにくい難しい話なので、登場人物を出して親しみやすい構成にしてはどうかということで、ホラムズとワタソンを生み出しました。
もっとも、担当編集者の山田さんは、もっと堅い実用的な記事構成を望んでいたようですが、その期待には応えられず申し訳なかったと思います。
この時点では、技術解説が主であり、キャラクターやストーリーは従であるという構成が取られていました。
その後、連載が単行本化されました。
- API散歩道 上 ISBN4-89052-586-6
- API散歩道 下 ISBN4-89052-652-8
この時点で、上下それぞれに書き下ろしの1章を追加していますが、これらは実験的にキャラクターやストーリーの描写のウェイトを増し、小説的な味付けを試みてみました。否定的な反応が来るかと思いましたが、そうではなかったので一安心。
このあたりで、パステルの姉が出てきたり、レストラン警部が出てきたり、世界的な広がるが出てきます。
その後、時代は16bitから32bitに移行し、それに伴い、Win32 APIを解説する連載が求められ、API散歩道の路線でまとめました。これも単行本化され、以下にまとめられています。
- Win32 API 散歩道 ISBN4-79730-598-3
ページ数が少ないために、会話スタイルをやめ、ワタソンからの電子メールにホラムズが答えるという構成になっています。
ストーリー性は後退していますが、ワタソンの私生活と密接に結び付く設定を用意しています。ワタソンはパステルと結婚しますが、パステルは優秀ですから大企業の研究所にあっさり就職を決めます。しかし、それは地方にあったために、引っ越しを余儀なくされます。ワタソンは、奥さんの仕事の都合で、自分を地方に転勤させているのです。気軽に会えない場所に住んでいるために、電子メールで質問せざるを得ない、という状況を作りだしたわけです。
その後、しばらく彼らの出番はありません。
どうも技術解説での出番が無さそうなので、どこからも依頼がないまま1990年代末あたりから書き始めた純然たる小説が「電子出版殺人事件」です。
内容は、帰ってきたホラムズが、事件の謎を解きつつ電子出版の裏表を解説してくれるというお得でゴージャスな内容となっています。(ただし、書かれてから時間が経過しているので、やや情報面では古いところがあります。しかし、問題の本質は今でも何ら変わることはないと思います)
この書籍は、2002年1月に、Adobe Readerで読める電子書籍として販売を開始しているので、誰でも読めます。(第1章だけなら、立ち読み版として無料です)
その後、更にこの続編として、電子商取引殺人事件が2002年10月に刊行されています。今度は、電子商取引を対象としていますが、電子商取引に限らず、IT業界によくある詐欺的な欺瞞の構造を、エロスも満点な色気過剰な描写で描いています。
(これも、第1章だけなら、立ち読み版として無料です)
一応、「電子××殺人事件」は3部作として構想され、この続編は「電子政府殺人事件」となるらしいのですが、作業は停止中です。ファンが、「ホラムズさんにもっと会わせて~」と黄色い声を上げたりすると再開する可能性があるかも知れません。
そのあと、以下の技術解説原稿に、ワタソン君だけがひょっこり顔を見せています。
以上で現在に至ります。
なお、ホラムズとワタソンを自社の媒体上で活躍させたい、という申し出は歓迎されます。電子出版殺人事件などを自社出版物として出したいという申し出も歓迎です。(いずれにせよ、うちの会社は何とか電子書籍で出すのが精一杯。紙媒体での出版や、より大規模な電子出版は他社の手を借りねばなりません)。
まとめ・ホラムズとワタソンに会える場所 §
既に単行本化された雑誌掲載記事を除くと、ホラムズとワタソンに会える場所は以下通りとなります。
書籍 §
- API散歩道 上 ISBN4-89052-586-6
- API散歩道 下 ISBN4-89052-652-8
- Win32 API 散歩道 ISBN4-79730-598-3
いずれも既に出版者側に在庫が無く、技術内容的に増刷を行う価値は見出せないと思うので、古書店で探すか、復刊ドットコムで有志を集めて復刊を願うしかないでしょう。
なお、私のところには著者への贈呈分が若干残っているので、どうしてもということであればお分けできます。
2005年3月25日追記。「Win32 API 散歩道」は本棚に初版1冊、2刷1冊という状況になったので、これはお分けできません。ただ、どこかにまだあるはずなので、出てきたらお分けできます。「API散歩道 上下」の方はまだ本棚に数冊ありますので、お分けできます
電子書籍 §
2005年3月24日現在、購入可能。第1章のみの立ち読み版は無料。
読むためには、Adobe Reader 6.0以降が必要。
Web媒体上の記事 §
2005年3月24日現在、無料で閲覧可能。
2007年3月16日追記 §
以下の記事が日経ITProに掲載されました。ホラムズ登場です。