謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROの厳密にはアニメ感想ではない感想を行ってみよう!
劇場版「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」を見に行って、見ないで帰ってきた顛末です。
期待…… §
この映画は、そもそも私の常識を完膚無きまでに裏切る企画です。
20年も前の、映像技術的にかなり古い、しかもTVシリーズのフィルムを再編集して、それを劇場の大スクリーンに上映できるという神経は、これまでの劇場版アニメに向けられてきた業界の「良心」を真っ向から否定するものです。
業界の「良心」とは何か?
日本のアニメ(アニメーション)の歴史上、本来劇場用作品とはTVよりも時間と手間を掛けて作られたものであったわけです。それにも関わらず、アタックNo.1など、TVのフィルムの再編集版の方に客が入ってしまったために、時間と手間を掛けるのが馬鹿馬鹿しいような妙な状況が生じていました。それに加えて、宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダムと、TVシリーズの再編集映画がヒットしてしまったので、時間と手間を掛けるのが馬鹿馬鹿しいという状況が深まってしまいました。
しかし、アニメ映画には客が入るという確固たる実績が示された後、TVシリーズの再編集映画は消えていきます。宇宙戦艦ヤマトでTVシリーズを再編集したものは最初1本だけ。ガンダムでも、最初の機動戦士ガンダム3部作の後に作られた映画、「逆襲のシャア」では全て劇場用の新作映像で構成されています。
これは、おそらくはアニメ業界の「良心」の発露であろうと感じます。高い金を払って劇場まで見に来る以上は、TVレベルの映像を見せるべきではないのでしょう。
しかし、この「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」はまさに軽やかに先祖返りしてしまっています。いかに新作カットもあるとはいえ、20年前の映像技術的にも古い映像、しかもTV品質のものを劇場の大スクリーンに上映するというのです。
そして、何よりも、このような世間の常識に真っ向から逆らうような態度が、とても面白く感じられ、ワクワクさせられたわけです。
トーノ、行きます §
というわけで、急に見たくなって、劇場に足を運ぶことにしました。
歌舞伎町にある「新宿ジョイシネマ3」の14:45の回に合わせて出かけました。
さて、歌舞伎町の中央にある広い部分に出ると、何やら行列ができています。
まさか、Zガンダム?と思いましたが、並んでいるのは男ばかりです。女性客も多いという話を聞いていたので、Zガンダムではないと判断して劇場の方へ。
しかし、おかしいのです。
どうも行列は、Zガンダムの劇場前に続いています。
思わず、並んでいる人に質問してしまいました。
これは何の行列ですかと。
答は「ガンダムです」
本当に愕然としました。
20年前のフィルムの再編集映画で、これだけの行列だと!?
しかも、みんな文句たらたらで、無条件に面白いと言ったアニメファンを誰一人として知らないZガンダムなのに?
そして、劇場の人が出てきて叫びました。
確実に立ち見になります、と。
その瞬間、私は今日の鑑賞を断念しました。
すし詰め状態の立ち見は、さすがに趣味ではありませんので。
個人的には「さらば」以来の快挙か? §
行列に断念して映画を見ないで帰る、という経験は、滅多にありません。
他にもあったような気もしますが、とりあえず思い出せる範囲で言えば、「さらば宇宙戦艦ヤマト」以来と言うことです。あの、低視聴率で、ドマイナーで、その上小学4年生の子供にすら「見ていると幼児っぽい」と罵倒された(←これは我が身で経験した実話)ヤマトの映画に、なぜこれほどの客が集まるのか当時は全く理解不能でした。
今回の件は、それと全く同じに感じられるのが愉快ですね。MSのデザインは良いのにストーリーがなってない等々、とファンからも罵倒されまくっていたあのZガンダムであるというのに、それがこれほどの客を集めてしまうとは。
ついでに言えば、興行側の集客見込みも完全に誤っていたのだろうと思います。このような映画に客が集まるわけがないと。実際に、やっている劇場は多くないし、しかも大きい劇場ではやっていないようです。世間の予測を裏切る盛り上がりが、たかが20年前のフィルムの再編集映画で引き起こされるというのが、痛快で楽しいですね。
というわけで面白くて仕方がない §
そういうわけで、映画本編は見ないで帰ってきましたが、面白くて仕方がない気持ちです。