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2006年04月29日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編total 1881 count

翼に日の丸 下 閃風篇 川又千秋 角川書店

Written By: 川俣 晶連絡先

 イマイチ面白くなくて、読了までずいぶん時間を要しました。

 まず、ほとんどが新書版のダイジェストで書き下ろしが少ないこと。

 しかも、新書版の内容をすっかり忘れていたので、この下巻の最初から律儀に読んでしまったこと。

 しかし、それは本質的な意味でのつまらなさとは直接関係ないことです。

 たぶん、イマイチなのは、著者自身が決定的に変わってしまったからでしょう。

 ラバウル烈風空戦録の第1巻が持つ決定的な面白さとは、坂井三郎の「大空のサムライ」をなぞる形で、極めて幸運な開戦初日の戦いから「幸運」を取り去ったことに象徴されます。あえて、圧倒的に勝った戦いから、その勝利の快感を奪い去ったわけです。つまり、史実ほど増長しない日本を描くための厳しさが、そこにはありました。

 ところが、この最終局面のドラマに見られるのは、架空の超兵器で勝ち続ける日本と、あまりに絵に描いたような単純な右翼っぽい感情を持ち続ける主人公風間だけです。

 当然のことながら、これで小説は成立しません。いや、強引に成立させようと思えば成立しますが……。

 結局、風間は最終章の主役を務められません。そりゃそうですね。新兵器を見ると、早くこれで戦いたいと思う「だけ」の人間味のないキャラクターに、終戦という出来事を受け止められるわけがありません。最終章は、流星パイロットの北川が主人公になりますが、当然のことでしょう。しかしこの展開も、あまりに唐突です。

 たぶん著者は、重い現実を正面から受け止めることから逃亡して、美しい日本という幻想の世界に旅立ってしまったのでしょう。よくある右翼の常套パターンに過ぎませんが。ただ1つだけ美徳として数えて良いと思うのは、幻想によって強引に小説を書き続ける……という最低の態度だけは回避していることです。

 それはともかくとして、まあとりあえず、ラバ空に結末が付いた……ということで精神的にわだかまったものが1つ消えたので、それでよしとしましょう。中身はともかく、終わったことは良いことです。

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