2006年07月12日
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不戦の精神を称えよ! 本作品最重要人物、クイーン・キャンディを論ずる!!

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

 シュガシュガルーンという作品において、実は最も重要なキャラクターはキャンディ・ミューつまりロワイヨームのクイーン(女王)にしてバニラ・ミューの母親ではないかという考えを持つようになりました。

 ここでは、キャンディ・ミューについて論じ、それを称えてみたいと思います。

キャンディ・ミューの真実 §

 キャンディは、ショコラの母親であるシナモンと女王の座を競い、結果として女王の座を獲得した人物です。

 この作品は、キャンディとシナモンの娘であるバニラとショコラが女王を競う物語であり、内気なバニラと積極的なショコラというコントラストが描かれることから、無意識的にキャンディとシナモンの関係も同じようなものだと思い込んでしまいがちです。

 たとえば、実はシナモンこそ女王に相応しい人物であるのに、どこか遠いところで一人必死に戦っていて、キャンディはシナモンの代理で女王の座についているだけ……という想像も可能だったと言えます。

 このような思い込みは、作品終盤までシナモンが行方不明のままであることから訂正する機会を与えられません。(これは視聴者にサプライズを与えるシリーズ構成的なテクニックと見なしうる)

 しかし、実際には違いました。

 シナモンはグラースを浄化しに行き、返り討ちにあって何もできない猫の姿にされていました。

 つまり、キャンディは、シナモンの代理などではなく、自分自身の見識と力でロワイヨームを統治していたことになります。

 キャンディの言葉は、けしてシナモンの言葉を代理で述べているのではなく、すべて自分の言葉であると見なして良いことになります。

キャンディ・ミューの人となり §

 ロワイヨームとオグルは長年戦いを続けていました。

 キャンディは、この戦いの理由をロワイヨームが一部の者達を不当に追放したという過去の出来事にあることを把握しており、ロワイヨーム側に一方的に非があると認識しています。

 そして、そのような認識を前提に戦争の終結を目指しています。

 しかし、それは楽なことではありません。両者の間の長い戦争は、どちらの陣営にも深い憎しみを植え付けています。単純にロワイヨーム側が謝罪したとしても、どちらの陣営にも納得しない者達が多くいることでしょう。実際、たとえロワイヨーム側が謝罪しても、オグルはロワイヨームの者達を傷つけるでしょうし、それが分かっている以上ロワイヨーム側の軍隊もオグルと戦おうとするでしょう。

 ここでキャンディが抱えているのは、高度に政治的な難しい判断に満ちた国内運営と外交問題です。

 ここで特に注目すべきことは、そのような問題が存在することをクイーン候補の少女達には一切知らせないようにしていたことです。ショコラがこの問題に深入りしすぎるまで、それは一切伏せられていました。キャンディがバニラの母親だという特に親しい関係にあるにもかかわらず、です。

 これは、キャンディが立場や公私の相違についてのケジメをきっちり付ける律儀で意志の強い人間であることを示しています。たとえ、相手が娘であろうとも、筋の通し方は揺るぎません。そのことが、逆に娘をオグル側に行かせてしまったのは皮肉なことだと言えますが、その場合でもけしてキャンディは取り乱したりはしません。心の中は、とても平穏ではいられなかったと思いますが、それでも平然とクイーンとしての職務を貫くことができるほど、キャンディは強い心を持った女性と言えるでしょう。

 そう。一見、物静かで優しそうに見えるキャンディですが、その心はとても強いのです。シナモンが、あっさりと誘惑に負けてグラースの浄化に挑戦してしまったことが心の弱さだとすれば、それとは全く対照的です。

最終回におけるキャンディの行動を振り返る §

 最終回で、キャンディは心に染み入る名言を残しています。

「わたくしたちの本当の敵はわたくしたち自身。戦いを望むその心にあります」

 城をオグルに包囲され、結界が破られそうになり、親衛隊が戦いを要求した時に言った言葉です。

 さて、ここで問題なのは、はたしてキャンディは戦わないことによってどのような結末を迎えたいと願ったのかです。

 常識的に考えれば、キャンディの選択は愚策です。なぜなら、たとえロワイヨームが一方的に戦わないと決めたとしても、深い深い恨みを抱えたオグルは、ロワイヨームの者達を傷つけるだろうと予測できるからです。戦わないということは、殺し、奪い、辱める……、といった結末を自ら望むことに等しいと言えます。

 しかし、ここで全力で反撃することも、同様に愚策です。なぜなら、戦って相互に傷つけば、それが新たな恨みを生み出し、次の戦いの動機付けになるからです。永遠に繰り返される恨みのぶつけ合いの連鎖を断ち切るためには、反撃してはならないのです。

 この矛盾した状況を打開するには、どうすれば良いのでしょうか。

 そのための構想を、キャンディはしっかりと打ち立てていたと考えて良いと思います。そのことは、キャンディの口からは語られませんが、ロビンとグラシエがヒントを述べています。

ロッキン・ロビン「我らが受け取る全てのものは、我らが与えた全てのものか」

グラシエ大尉「ふ。全てを与えたあとに、受け取るものがいれば良いがな」

ロッキン・ロビン「いるさ。必ず」

 この、ある意味で意味不明のやりとりの中に、キャンディの構想が示されています。

 まず、「我らが受け取る全てのものは、我らが与えた全てのもの」とは、相手に対して積極的に与えることによって、それに値するものを受け取ることができることを意味します。たとえば、ショコラは自分のハートを見返りの約束などは無しで、一方的にピエールに与えます。たとえハートを失えば自分が死ぬと分かっていても与えます。そして、そのショコラの行動に応えて、ピエールは自分のハートをショコラに与えます。

 しかし、ロビンが示したのは、このようなハートを差し出す行為ではないでしょう。おそらくは、もっとハードに、命を差し出すことだと思います。そのことは、グラシエの台詞から読み取ることができます。グラシエは、与えた後に誰も残らない……という可能性を示唆しています。これは、ロワイヨーム側が命を差し出す覚悟を決めていると考えて良いと思います。

 それに対してロビンは、受け取る者がいると言います。彼がこの台詞を言う部分は、途中からショコラとバニラのシーンに切り替わります。つまり、ロビンが考える「受け取る者」とはこの二人、言い換えれば次期クイーンです。

キャンディの構想を推定する §

 以上をまとめれば、キャンディの構想はこういうことになります。

 恨みによって突き動かされるオグルの行動は、説得では止められません。発端においてロワイヨーム側に非がある以上、戦争を終結させるためには、それ相応の犠牲を差し出すしかないわけです。キャンディは、城と女王つまり自分自身を犠牲として差し出すつもりだったのでしょう。そして、元老院の老人達も、「仰せのままに」「我らの力の尽きるまでクイーンと共に」と最後までクイーンに従う意志を示します。グラシエが「元老院の爺さん達も心を決めたか」と言うのは、クイーンと共に死ぬ覚悟を意味しているのでしょう。

 さて、オグルはロワイヨームの一般人まで皆殺しにするでしょうか? そうではないでしょう。実際、一般人が不安そうに空を見上げているカットがありますが、彼らは攻撃されていません。おそらく、オグルの復讐は、ロワイヨームの指導者層と軍隊に対して主に向けられると思って良いでしょう。とすれば、大多数のロワイヨームの一般人は殺されることもなく、そのまま生き延びると考えて良いでしょう。

 そして、クイーン試験最後の試練に挑戦中のショコラとバニラがいます。不思議な力を持ったユニコーンから承認されれば、たとえ現女王や元老院が残っていなくても、ロワイヨームの新女王が誕生したと認められるのでしょう。

 これらの一連の出来事が終わった時点で、ロワイヨームとオグルは、双方ともに相手に対して残酷な行いをしたという汚点を持つという意味で対等のテーブルにつくことができます。そして、外交交渉を行いうる正当な代表者である新女王はそこに存在します。更に、新女王がショコラであってもバニラであっても、けして復讐のために戦争を望んだりしないという確信もあったのでしょう。

 そこで、停戦に合意できれば長かった戦争に終止符を打つことができます。

実際には…… §

 実際には、ショコラの活躍により、このようなクイーンが命を差し出すような限界領域のシナリオは実行せずに済みました。ロワイヨーム側はほとんど死者を出さずに、この事態を乗り切りました。

 これは、キャンディから見れば想定外の出来事だったのでしょう。

 しかし、1つだけ間違いないことがあります。

 それは、キャンディが戦わないという方針を貫いたからこそ、ショコラとピエールの結婚により、ショコラがロワイヨームとオグルの女王になるという道が開けたと言えるです。戦って恨みを残していれば、それは困難な道になっていたに違いありません。

戦争を終わらせるための強い意志 §

 さて、まとめます。

 以上のような経緯を見れば、キャンディという人物の大きさが見えてきます。

 彼女は、ほぼ独力でロワイヨームとオグルの戦争の終結を構想し、並外れた強い意志を持ってそれを遂行し、しかもその手段として自分の命を差し出すということすら考えます。ショコラはピエールとの愛によって、ロワイヨームとオグルの関係を修復して行きますが、ショコラが活動するための舞台はキャンディによって用意されたものだと言えます。

 最終的に、ショコラはキャンディが予測した以上の大きな成果を出し、事態を終結に導きます。その意味で、ショコラはこの事件の主役と言っても良いでしょう。しかし、最も骨を折った功労者は……と考えるなら、それはキャンディに他ならないと思うわけです。

 キャンディとはそのような意味で、並外れて美しく、優しく、そして強い人物だと思います。

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