19巻の「倹約スナイパー」は、僅か2ページの小作品でありながら、非常に多くの情報とドラマが凝縮された興味深い作品です。
以下、アトランダムに書くと。
● 時間に関する映画
龍宮隊長が、たまには映画でも……と言いながら見ようとするのは、「メッセージ刻を超えて」というタイトルであり、看板にはカシオペアを連想させるような時計が描かれています。
これは、通常龍宮隊長は映画を見るような人ではないが、超のことが割り切れない引っかかりとして残っていたために、「時間」をテーマにした映画を見たいと思ったのだ……という描写でしょう。
同じような割り切れ無さを楓も持っていて、やはり同じ理由で同じ映画を見ようとしていたのだ……とすれば、映画館の前でバッタリ出会うというシチュエーションの必然性が見えてきます。
(風香と史伽は、楓に付いてきただけでしょうね)
● 急接近する龍宮隊長と楓
楓は、本来みだりに見せてはならないはずの忍術を使い、着替えを龍宮隊長に見せます。
一方、龍宮隊長の方も、ゴム弾とはいえ情け容赦なく銃を楓の腹に突き付けます。
2人とも、通常状態でそのような行動は絶対に取らないと考えられます。そこまで不用心ではないでしょう。
ということは、この2人はじゃれ合っているわけです。
学園祭の死闘を通じて、相手に対して自分の間合いに踏み込ませるほど、2人は急接近したと言えます。
更に言えば、劇場のチケット売り場でばったり出会ったことから、お互いに心に抱えた割り切れない気持ちの存在に気付いた結果、そこまで相手を受け入れたと言えるのかもしれません。
ここで、これまでのネギま!にはあまり見られなかった特異的なコンビが出現します。
● 笑えるオチにつながる主要なストーリー
ところがこのストーリーは、全体として見ると超を意識しつつ龍宮隊長と楓が接近するという筋書きではりません。
チケット売り場で中学生と認められず大人料金を要求される龍宮を笑う楓もやはり同じように大人料金を要求され、その後やってきた風香と史伽は中学生でありながら小学生料金で入ってしまいます。
つまり、年齢の誤認によりより多くの料金を要求されるという問題が、全く同様の年齢の誤認により安く劇場に入れる者達もいる、という「笑い」のオチにつながるわけです。
● 中学生らしくない者達もいるという個性の承認
このストーリーは、実は中学生らしくない者達も混ざっているが、それもまた個性であり、承認されるべきものだという主張につながります。「普通」から逸脱した者達も、人間的な魅力のある者達であり、彼らを含めてネギのクラスは成立しているわけです。
それを語るために、「見た目の年齢」に特化して、あえて極端に逸脱した者達を集めたストーリーがこれである……ということもできるでしょう。