2008年04月19日
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ジャック・ラカンは、実は我流独学によって「学」を得た知性派か!?

Written By: 川俣 晶連絡先

 22巻で最もインパクトのある登場人物、ジャック・ラカン。

 彼については、既に「絶対あの有名人を意識したネーミング! ジャック・ラカンって誰やねん!?」においてフランスの精神科医、精神分析家のジャック・ラカンを意識したネーミングという可能性を示唆しました。

 しかし、実際には「この」ジャック・ラカン「だけ」を意識した名前でもないでしょう。やはり、ラカンは羅漢に通じ、阿羅漢を意識している可能性も十分にあり得るでしょう。

 WikiPediaによれば、羅漢(阿羅漢)とは以下のようなものです。

インドの宗教一般で、「尊敬されるべき修行者」をこのように呼んだ。

初期仏教では修行者の到達し得る最高位をこのように呼ぶ。学道を完成し、これ以上に学ぶ要がないので阿羅漢果を「無学位」という。

 つまり、これ以上学ぶ必要のない者を示します。

 更に以下のような説明もあります。

中国・日本では仏法を護持することを誓った16人の弟子を十六羅漢と呼び尊崇した。また、第1回の仏典編集(結集(けつじゅう))に集まった500人の弟子を五百羅漢と称して尊敬することも盛んであった。

 この場合は、特に忠実で優れた「弟子」を示す言葉とも受け取れます。

ネギま!のラカンとは似ていない? §

 フランスの精神科医、精神分析家のジャック・ラカンにせよ、羅漢にせよ、いずれも知的に優れた人物のイメージを連想させる名前です。

 いかにもバカっぽいネギま!のラカンとはあまり似合っていないようにも思えます。

 しかし、そうでしょうか?

 実は、ネギま!のラカンの本質も「知性派」ではないでしょうか?

 しかも、これ以上学ぶ必要がないぐらい博学な知性派ではないでしょうか?

 あのバカっぽい態度や、プラクテ・ビギナルという初学者用の始動キーで魔法を発動していることから知性に劣るかのように思えるかもしれませんが、実際、22巻を何回も読んでいると彼の知性は極めて高いことが分かります。それは以下のような点から分かります。

  • 漢字文化圏に属しているとは思えないのに、多数の漢字を苦もない使いこなしている
  • しかも、「夜露四苦」的な単なる当て字ではなく、漢字の意味を理解した上で使用している
  • 全く別系統の言語であろうカタカナの必殺技名も即座に考えられる
  • 戦車やイージス艦を含め旧世界の知識を豊富に持っている。しかも最新知識
  • かなり高度なエヴァンジェリンの技を自分でやってみせることができる
  • 戦闘力を即座に数値で示すことができる
  • その戦闘力という数値に意味がないことを、きちんと断りながら説明している (これは特に優れた知性を持っていることを示す)
  • 千雨がネギをよく見ていることを理解できる

 しかし、出自が奴隷剣闘士であるために、正規の教育は受けていないのでしょう。だから、おそらくは独学の我流で知性を磨いたのでしょう。実際、紅き翼の構成メンバーには、彼の知性を磨ける者達が揃っていたのは間違いのないことでしょう。特にクウネルあたりが彼をいじめながら知性を磨いた、という可能性も十分に考えられます。

つまり…… §

 元奴隷剣闘士のジャック・ラカンは、バカっぽい筋肉派という見かけと相反する中身を持っていることをさりげなく示唆するために、知性派を連想しやすいフランスのジャック・ラカンや羅漢を連想する名前を与えられた……と考えられるかもしれません。

 まあ、そのような連想を全ての読者が行うことは想定していないと思うので、そのような連想を行わずともラカンの中身は分かるように描かれていると思います。しかし、読者の中にはそのような連想を走らせてしまう者達が居ることも、やはり想定されて描かれているような気がします。

 まあ、根拠はありませんが。

 それにしても、22巻も読めば読むほど中身があって面白いですねぇ。ネギま!最高!

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