トーノZEROのアニメ感想です。
今日のポケモンDPの感想。
サブタイトル §
「灼熱のヒコザル!」
あらすじ §
サトシはジム戦に備え、ヒカリを相手に練習バトルを行います。
グライガーは自分もジム戦に出たいとアピールしますが、サトシはもっと経験を積んでから、とグライガーを諭します。
力が余ったグライガーのために、タケシとのバトルを行います。しかし、その途中で突風が吹き、グライガーは飛ばされます。そして、ポケモンをゲットする寸前だったシンジの邪魔をしてしまいます。
サトシとシンジは喧嘩の寸前にまで行きます。
サトシはシンジにバトルを申し入れますが、シンジは興味を示しません。かつてシンジのものであったヒコザルがアピールすることで、シンジはその気になります。
第1戦はサトシのグライガー対シンジのグライオンですが、圧倒的な力の差でグライガーは大敗します。
第2戦はサトシのヒコザル対シンジのリングマとなります。圧倒的なリングマの力でヒコザルは戦闘不能寸前まで行きますが、そこでこのヒコザルが持つ潜在能力である並外れた猛火が出て、リングマを倒します。この猛火は、かつてシンジが存在を知り、それを出せるようになるべくトレーニングを続けたにも関わらず、出せなかったものでした。
勝負が付いたにも関わらず、ヒコザルは恐怖に我を忘れて暴走します。サトシは、炎をまとったヒコザルを抱きしめ、必死に語りかけて正気に戻します。
シンジは、その猛火を制御できるようになったらバトルの続きをすると言って、立ち去ります。
感想 §
今回は紛れもなく、物語のターニング ポイントでしょう。
これまでは、自分のスタイルを見失ってぬるいバトルをしていたサトシ、対、自分のスタイルを貫徹するシンジという対立構造でした。その対立において、筋を通しきれない「ぬるさ」を持ったサトシは、どうしてもシンジに勝てません。勝てないというのは、単にバトルに勝てないという意味ではなく、気持ちで負けてしまうことを意味します。
しかし、今回サトシが示した態度は、その構造が既に変わったことを意味します。
それは、サトシのグライガーの扱いを見れば一目瞭然です。サトシは、いかにグライガーがアピールしようとも、ジム戦に出そうとはしません。サトシがいかにジム戦に対して本気であるか、そしてポケモンを育成することの手順の重要性をしっかり認識していることが分かります。それにも関わらず、シンジとのバトルには、あっさりとグライガーを出します。これはもう、強敵を相手に負けることを前提に出したと見るべきでしょう。
ここで、サトシが求めるものが単純な目先の「勝利」ではないことが明確に示されています。これまでのサトシは、割と目先の「勝利」に振り回されたようなところがありますが、今回はそうではありません。サトシがグライガーを出すことで求めたものは、グライガーに極上の本物のバトルを経験させることだったのでしょう。そして、それと同時にバトルを通して、サトシが持つ「信頼」を理解させることも重要な意味があったのでしょう。それらは、サトシが考える「強さ」を得るための重要な手段と言えます。言い換えれば、シンジとのバトル緒戦にグライガーを出すことは、サトシにとって「強さ」を獲得する最善の選択だったことになります。それは勝敗に優越することであり、たとえバトルに負けてもサトシの得たものの方が大きいわけです。
以上が、今回の目玉に至る前提条件となります。
今回の目玉は、シンジには出すことができなかったヒコザルの凄い猛火をサトシは出させることが出来た、という点です。
これが出来た理由について、作中ではいろいろな考えが語られます。しかし、それはそれとして、サトシが迷わなくなり、常に体当たりで真剣にポケモンと向き合うようになったことがある種の理由なのだろうと思います。前半でグライガーに見せたサトシの態度は、当然ヒコザルにも向けられています。全力でぶつかっていけば、負けても倒れても「よくやった」声を掛けてもらえ、そして抱いてもらえると信じられればこそ、自分を引き返せない限界までかき立てられるのでしょう。そして、事実としてサトシは炎に包まれたヒコザルを抱きしめるという方法で、ヒコザルへの信頼を証明します。
もっと感想 §
更に言ってしまえば、ヒコザルの本質的な問題は「恐怖」にあります。
シンジは、恐怖を克服するために、常に厳しい状態に直面させるというやり方を取りました。
しかし、サトシは「信頼関係を作る」という方法で、それを克服しようとしているようです。
シンジとサトシの方法論の違いは、このあたりに集約されているように思えます。
その他感想 §
グライガーがシンジの邪魔をしたのは事実です。その点に文句を言わない点で、シンジは悪い奴ではありません。しかし、コイントスでストレートに「表」と言えずに「裏」を選ぶあたり、心理的な屈折しているところがありそうです。サトシに痛い突っ込みをいれまくる点も、ある種の屈折心でしょうね。
「強くなる」とは何か、ずっと考えてきたというサトシ。表には出していませんが、考えていたわけですね。さすがです。
今回の一言 §
今回の演出で最も凄かったのは、「待て」とタケシがサトシの肩に手を掛けると、傾いた画面が水平に戻るところです。これはもう、素晴らしい演出ですね。心が平衡を失った状態から復帰したことが、上手く表現できています。本来、心はビジュアルには描けないものですが、それを上手くビジュアル表現で補った良い演出だと思います。
これが見られるから、ポケモンはたまりませんねぇ。