「さらば」の超巨大戦艦は以下の2つの点で特異的です。
- 単なる巨大化した戦艦ではなく、砲塔を多数持つ戦艦である
- しかし、超巨大兵器しか撃たない
敵戦艦の特徴 §
ヤマトシリーズの敵となる主役級の敵は、たいていの場合、以下の2つの特徴を持ちます。
- 超兵器を持つ (空間物質移送機や火炎直撃砲やデスラー砲も効かない装甲など)
- 超兵器の数は多くなく、それさえ潰せば逆転できそうである
つまり、普通の砲塔を多数持つ超巨大戦艦だけ、この原則から外れます。一方で、月を攻撃した兵器はこの原則に当てはまります。
特攻が最後の手段となるのもある意味、当然です。超兵器なら潜入して破壊することもできますが(あったぞ古代さん。あれだ。うわ～っ!)、普通の兵器が多数並んでいてはお手上げです。
ツギハギ論 §
このようなデザインは、メカデザイン的には巨大感を表現する手段として有効です。砲塔はヤマトと同様であり、それが多いことは強さと大きさを分かりやすい形で表現します。
しかし、白色彗星という帝国を考えていると、実は以下のようにも考えられます。
- 白色彗星帝国の開祖はヤマト程度の普通の宇宙戦艦で宇宙征服を開始した
- そのうちに、白色彗星と都市帝国を建造できる国力を得た
- 都市帝国の内部には開祖の戦艦を飾った
- この戦艦には非常用の脱出船という機能もあった
- そのため、万一に備えて改良と拡大が繰り返された
- つまり、ヤマト程度のサイズの宇宙戦艦用の砲塔が徐々に増設されていき、あの姿になった
- ついでに後から超兵器も付けておいた
とすれば実は以下のことが推測できます。
- 中核部分は時代遅れの旧式艦であり、それほど大きいわけではないかもしれない
- 増設された砲塔を操作できる兵員が揃っているかも怪しい。数も多いし、しかも旧式である
- 下部の超兵器ぐらいは撃てるかもしれない。数が少ないから人数が少なくても操作できるかもしれない
- あのデザインはまさに無計画な増築を繰り返したように見える
- 増築を繰り返しているから無理な操艦をするとバラバラに崩壊するかもしれない
象徴的に見ると §
多数の砲塔を持つ超巨大戦艦は、大艦巨砲主義そのものを象徴的に体現しているのかもしれません。そして、超巨大戦艦が負けるということは、大艦巨砲主義の終焉を象徴的に追体験していることなのかも。それは、戦艦大和が航空機に沈められる事件によって象徴的に示された大艦巨砲主義の終焉を、今度はヤマトが敵に教えるという屈折した構造を持っています。
しかし、そのように考えると、これほどヤマトに相応しい死に方もありません。大艦巨砲主義に幕を引くために沈んでみせるのは、やはり大和/ヤマトならではです。
あるいは、大艦巨砲主義の亡霊に、大艦巨砲主義の亡霊をぶつけて滅ぼしたと思えば、それも1つの物語なのかも。古代が死ぬ必要はなかったのは確かですけどね。彼は大艦巨砲主義の亡霊ではないから。
つまり §
「無数の敵が散らばっていて全てを倒せそうにないのに、クライマックスで全部合体して倒せてしまう」という設定がつまらないとすれば、わざわざ倒せる形で出てくる敵はアホらしいと思うわけです。そういう意味で、膨大なドメル艦隊を返却して、わずかな手勢で攻めてくるドメルはどうもねえ。ドリルミサイル1発で壊滅してしまうような僅かな戦力で出直してくるから、倒せてしまうわけです。
その点で、やはり超巨大戦艦の「砲塔は無数にある」というデザインはかえって良かったのかも。
