「SPACE BATTLESHIP ヤマトというのは、ヤマト、波動砲、ワープといった凄いSFガジェットが続々と出てくるが、実はそれらはどうでもいい。表現も軽い。波動砲はショックカノン感覚で簡単に撃つし、ワープにはそれほど制約もなく描写もあっさりしている」
「じゃあ、何が重要?」
「沖田の嘘や、古代の後悔や、森雪の裏切られた気持ちとかさ」
「ぜんぜんSFガジェットじゃないね」
「実はこの特徴、スペース1999(第1シーズン)とまんまかぶると気付いた」
「ええっ?」
「スペース1999も、月面基地、イーグル宇宙船などの凄いSFガジェットの数々が並ぶがいずれも大した役割を果たさない」
「うん」
「たいてい、凄い科学装備はもっと凄い力で無力化される。最後に問題を解決するのは、コーニッグ指揮官の不退転の決意だ」
「なるほど」
「であるから、スペース1999に科学的な正確さはなんら求められない。いきなり太古の地球に月が流れ着いても、人が住める惑星に毎週遭遇しても問題にならない」
「そうか」
「問題はひたすら負けない精神力と決断にある。他の全てはそれを描くための寓話に過ぎない」
ヤマトの果てに見るものは何だろう §
「とすると、君に取って、SPACE BATTLESHIPヤマトは単に宇宙戦艦ヤマトのリメイクであるという枠を超えて、更に先にまで進む契機だってことだね」
「うん。だが、そこにあるのはもうガ○ダムじゃない。惑星大戦争であり、戦国自衛隊であり、宇宙からのメッセージであり、復活の日なんだ」
「復活の日まで行くと、もう凄い未来メカも出で来ないね」
「最大の凄いメカがチリ海軍から借りた潜水艦だっけ? それってことになる」
「そうか」
「考えてみれば、復活の日は主演が草刈正雄。当時としては人気のあるイケメン俳優だ。でもクライマックスではよたよた歩いて南極に向かう男でかっこよくない。それどころか、死者と無言で会話したりする」
「もしかして、立場的に木村拓哉と似てるんじゃないか?」
「かもな。良くは分からないけど」
「そうか」
「でも、草刈正雄は家族が待つ南極に歩き続けた。愛する女と他人の子供だが、それでも家族だ」
「その辺も感じが少しかぶる感じだね」
「良くは分からないけどな」
オマケ §
「しかし、復活の日とヤマト。意外と相性がいい話題だったのかも知れない」
「どうして?」
「ヤマトも復活編があるわけだしさ。復活の日は世界が2度滅ぶのだけど、ヤマトも復活しては滅ぶことを繰り返す」
「なるほど」
「ああ、そうか。遊星爆弾が落ちた三浦半島の実家に3日掛けて歩くのと、ミサイルが落ちた南極に近い南米に歩くのは、非現実的な遠距離を歩いて家族を目指すという意味では同じなんだ」
「距離がまるで違うよ」
「古代はそのとき子供だから、それでも超遠距離だったはずだ」
オマケ1999 §
「実はあとから気付いたのだが」
「なに?」
「指揮官もの、というジャンルは実はあまり多くない」
「どういう意味?」
「通常は、指揮官、博士、実働部隊という構成であり、実働部隊が主人公であることが多い。たとえばサンダーバードは指揮官がパパであり。ブレインズが博士だ。活躍するのは実働部隊の息子達だ」
「うん」
「でも、謎の円盤UFOになると、ストレイカー司令官が主人公になる」
「確かに」
「だが、謎の円盤UFOは群像的で他のメンバーが大きく振る舞うことも多い。ストレイカー司令官はインターセプターには乗らないのだ」
「うん」
「スペース1999になって、初めてコーニッグ指揮官が文句なく主人公になってくる。彼はイーグルの操縦席に座る。スペース1999では、コーニッグが指揮官で、博士がバーグマンで、実働部隊はその他大勢だ。第2シーズンになると、実働部隊がトニー・ベルテッジになる」
「それで?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトも結局同じことなんだ。指揮官ものの1つと見ていいだろう。しかも、スペース1999と同じく、司令室で指揮をするだけでなく、小型メカの操縦までこなして文句なく主役をやる」
「なるほど」
「テレビ第1シリーズの古代というのは、あまり指揮官の孤独を感じていない。古代はみんなの代表であって、沖田の代理ではなかったのだ」
「そうか。それとSPACE BATTLESHIP ヤマトは違うということか」
「ただし、昔のヤマトであっても、完結編の沖田が出てくるところまでは一種の指揮官ものだ」
「みんなの代表ではなく、特別な苦悩を背負うってことだね」
「うん。その苦悩が辞表として出てくる」
オマケ一家 §
「『最大の凄いメカがチリ海軍から借りた潜水艦だっけ?』という話は、零戦黒雲一家と連動する」
「さばらばのラストの元ネタって映画だね。どういうこと?」
「零戦黒雲一家で最大の凄いメカは、アメリカから借りたガトー級らしい」
「えーっ」
「海上自衛隊のくろしおらしいのだが、元は、アメリカから借りたガトー級らしいのだ」
「外国の海軍から借りた潜水艦で映画を撮ってしまうとはスケールが大きい話だね」
「零戦黒雲一家はテキサン零戦も、P2Vのアメリカ爆撃機も出てくるらしいからな。ある意味でマニア感涙だろう」
「P2Vでいいの?」
「いいぞ。だってP2Vももう飛んでないビンテージレシプロ機だもん」
オマケ教授 §
「ああ、そうか」
「なに?」
「バーグマン教授と沖田艦長も立場が似てるんだ」
「どういうこと?」
「どちらも、年の行った渋い名優が本気でこういう作品を演じてくれているんだよ」
「でもラッセル博士の立場は森雪と似てないね」
「残念ながら。そこは似ていない」
「でも加藤とカーターはどことなく似てるかな」
「さあな」
「あと、コーニッグにも当初コミッショナーという上司がいるんだ。でも途中で死んじゃう。あるいは、頼れる年長のバーグマン教授も死んじゃう。第1シーズンと第2シーズンの間にね」
「上司が死んで指揮官の孤独を味わうのもSPACE BATTLESHIP ヤマトと同じか」
「考えろ、考えるんだ。と古代が必死に考えるところなど、本当にコーニッグがやっていても違和感が無い。というか口に出さないだけで実際にやってる」
「そうか」
「いやちょっとまて」
「なに?」
「ラッセル博士の持つ中年女医というキャラは佐渡先生とまるまるかぶるんだよ」
「ええっ?」
「しかも、更に気付いた。通信を行う若い女性のオペレーターというキャラはサンドラと相原でかぶるんだよ」
「えええっ?」
「更に言えば女性陣が無駄なスカート姿で無駄な色気を振りまかず、機能的なパンツルックでスマートという特徴も共通する。まあ、スペース1999も第2シーズンではサンドラも野暮ったいスカートをはくのだが、ここでは暗に第1シーズンを想定しているので対象ではない」
「バーグマン教授が出てくるのは第1シーズンだけってことだね」
「いやまて。やっと分かった。ならば森雪の戦闘的なキャラはサイコンのマヤにかぶるんだ」
「第2シーズンのヒロインだね」
「第2シーズンはトニーとコーニッグのどちらが主役かはっきりしない構成に難があるんだが、その2人を統合したキャラが古代だとすると分かりやすいかも知れない」
「そうか」
「あと、モローが南部。カノだっけ、コンピュータは間違わないといってた黒人は。彼が真田にかぶる」
「ずばずばとキャラに対応関係が引けてしまうね」
「しかも、男女の区別が驚くほど的確に対応関係が取れてしまった」
「しかし、本当にスペース1999の影響など想定できるのかな?」
「できる。なぜならゲリー・アンダーソン特撮では、山崎監督の世代的にスペース1999しかタイミングが合わないからだ」
「謎の円盤UFOは早すぎるし、テラホークスは遅すぎるってことだね」
「そうだ。謎の円盤UFOなんて小森のおばちゃまが若くして解説に出てきたほど昔だぜ。大好きで見てたけど、幼稚園の頃だった」