- 全艦発進せよ!(オール・ファイヤー)SF未来戦記 徳間書店 1978年 (表紙・挿絵)
「というのを紹介して、ヤマトから小説SFへのフィードバックの可能性を示唆のだが、そこで誤解してはならない話がある」
「それはなに?」
「ヤマトは単にオーラロードを拓いただけなのだ。バイストンウェルはもともとあったのだ」
「は?」
「つまりだな。ミリタリーSFの世界は小説系では、もともとあったのだ」
「だけど主流ではなかったの?」
「そうだ。戦後の反戦思想のさなかではあまりウケが良くないムードがあったのだろう。しかし、ヤマトがブームになったので、やってもいいかというムードができあがる」
「本当に?」
「ああ。宇宙で艦隊が戦う小説なんて昔から珍しくも無い。レンズマンとかな」
「それで?」
「結局、その思想はSFを通り越して、架空戦記という別ジャンルに結実する」
「宇宙戦艦ではないわけだね」
「そうなるのもある意味で当然だ。戦艦大和は空を飛べないから敗北して沈んだが、空を飛べるようになって蘇った。そのことから考えれば、実は2199年まで待たずとも問題は解決できる。たとえば、大和をもっと違った形に改造するとか、敵の飛行機が飛べない天候にするとかね。まさに架空戦記の世界だ」
「なるほど」
「だから、SF作家ないし、SF作家の卵が大挙して架空戦記に参入するのある意味で必然だ」
「シミュレーションウォーゲームの世界から参入するのは異例だってこと?」
「たぶんな」
「そうか」
オマケ §
「シミュレーションウォーゲームの世界から参入するのは、どうして異例になるの?」
「世界観が違うからだ。あの世界は基本的にボードとコマを使用して、人間と人間が対戦する。どちらにも勝てるチャンスが存在しなければ意味が無い。ヒストリカルなシミュレーションでは前提に格差があるかも知れないが、それは歴史的な必然だ。だが、それはハンデであって、対戦する両者に勝てるチャンスが存在しなければ意味が無い」
「つまり、戦艦大和が負ける結末も含めてデザインされるのがシミュレーションウォーゲームの世界ってことだね」
「そうだ。あっさり大和がカリブ海で沈んでしまうレッドサンブラッククロスのような世界はやはり架空戦記的には例外なのだろうと思う」
「架空戦記的には、やはり『彗星出現、大和を改造せよ』の世界に行って負けをひっくり返して勝つわけだね」
「大和が主役ならな」
オマケ2 §
「だから、『連合艦隊ついに勝つ』はあっても、『バルチック艦隊ついに勝つ』は成立しない」
「どうして?」
「大和ホテルの汚名を返上して大和をガダルカナルに連れて行く話はあり得る。それは大和に翼を与えるのと本質的に同じだからだ。しかし、バルチック艦隊が連合艦隊に勝ってしまうと、せっかく世界に飛躍するために与えられた三笠の翼を奪うことになる」
オマケ大戦 §
「ああそうか。だからサクラ大戦は飛ぶための翼を持った三笠という象徴が登場する訳か」
「象徴か」
「三笠そのものではないからな」
オマケIII §
「子供の頃に父親から連れて行ってもらえた場所ベスト3」
「ベスト3って」
- 東京湾・客船による東京湾内一周・本物の雑魚寝の船室を見る
- 横浜・氷川丸を見て湾内一周の船に乗る・本物の氷川丸のエンジンを見る
- 横須賀・コンクリートで固められた三笠・本物の戦闘艦を見る
「なんだよこれ。海と船関係ばかりじゃないか」
「考えてみればそうなんだよな。ちなみに、毎年夏休みに連れて行ってくれたのも某熱海方面の海で海水浴」
「それも海か」
「しかも、『連合艦隊ついに勝つ』って本を買ってきたのも父。最初に出版された頃で、架空戦記ブームなんて起こるはるか以前に話だぜ。かかか」
「こんな大人になるわけだ」
「どんな大人だよ」
「失敬。未だにアニメ見てる子供」
「……」
おまけ1971 §
「だがしかし、『連合艦隊ついに勝つ』の出版が1971年でヤマトの1974年に先行すると思えば無縁ではあるまい」
「ヤマトが直接的に影響されたという話は聞いたことがないよ」
「当時は『連合艦隊ついに勝つ』が成立する世相だったわけだ」
「そうか。時代のムードの影響はあり得るね」
「『連合艦隊ついに勝つ』はあくまでアメリカに勝ってしまうが、それはテレビで放送するアニメではよろしくない。具体的にアメリカを名指しにした悪役にはできない。どうしても、戦艦大和に見せ場を作りたければ話を未来の宇宙戦争に持っていくしか無い。宇宙人なら全て架空だから敵にしても角が立たない」
「大和を復活させるスーパー技術も未来ならあり得ると言い切れるわけだね」
「そうだ」
オマケの上の雲 §
「だから、『連合艦隊ついに勝つ』はあっても、『バルチック艦隊ついに勝つ』は成立しない」
「は?」
「と言ったとき、実はまだ坂の上の雲の最終回を見ていなかった」
「そうか」
「なので、公開が遅延しているうちに、バルチック艦隊をテレビで見てしまったことに気づいた」