「好き、好き、好き好き~」
「なんだよ」
「実写のひみつのアッコちゃんを見てきた」
「アベンジャーズはいいのかよ。ポケモン映画みなくていいのかよ。るろ剣はいいのかよ」
「見たい映画を全て見られないことは既に諦めている」
「それで? なぜアッコ?」
「そういう世代だからだ」
「1期アッコ世代ね」
「サリーちゃんから魔法のマコちゃんやリミットちゃんメグちゃんなども含めて、東映魔女っ子第1世代とでも言うべき世代だな」
「包括的なのね」
「というわけで、放置はできなかった」
「結果は?」
「実は予想した水準を100%とすると、300%ぐらいの映画だった。やたら面白かった」
「えー」
事前の懸念 §
「事前の懸念は、作品のあらすじから考えてキテレツ大百科になってしまうことを懸念した」
「キテレツ大百科って?」
「キテレツ大百科の2期OPの「ボディーだけレディー」だな。突然みよちゃんが大人になって大人の世界に入っていくが素敵な人とディスコに行ったらラジオ体操を踊ってしまい、大人の世界は思ったほど楽しくないという歌だ」
「つまりどういうこと?」
「ひみつのアッコちゃんとは、子供の世界の問題を解決するためにアッコちゃんが変身して介入するという話が多いように思う。その際に変身する対象は大人とも限らない」
「そうか。大人になって大人の世界を見るのはアッコちゃん的ではないわけだね」
「そうだ」
「その懸念は当たりだったの?」
「一部ね。ところが、話はそれで終わらなかったからさあ大変」
「えー」
感想 §
「というわけで、見始めてすぐ驚いたのがモコちゃんはいるし、大将はいるし、シッポナはいるし、さすがに少将は猫にまたがっていなかったけど、少将もいるし。しかも私見たわよ。チカちゃんが見ているのを」
「だから、アッコちゃんとして承認できるわけだね」
「あまり活躍しないけどね」
「ひ~」
「そして、ついに鏡が壊れたその夜。あの人が来る!」
「鏡の精が来たんだね?」
「黒い服のおっさんが来た」
「えー」
「まさに、ファンシーララの不思議さんだよ」
「なんだって!?」
「これは予想外」
「結局さ、この映画はアッコちゃんの実写映画化を軸としながらも、『不思議な力をもらって大人になる少女系作品』の集大成的なところがある」
「まさか」
- ストーリーの軸はキテレツ大百科的
- 子供でありながら変身して大人の職場に入るのはクリィミーマミ的
- 自分から魔法を放棄していくのはマジカルエミ的
- 大人になった自分がかつて変身した自分と顔がそっくりなのはクリィミーマミのOVA的
「それで満足したわけだね」
「いやいや、その先があるからだ」
「えっ?」
大人、大人ってなんだ §
「ギャバンは『若さ若さってなんだ』と歌ったがこの映画は逆に『大人ってなんだ』という命題を突きつける。これはまさに意外だった」
「それってなんだよ。『大人になる魔法』という作品の前提が揺らいでしまうじゃないか」
「実はアッコちゃんの世界は揺らがない。なぜならアッコちゃんのコンパクトは他人になる道具であり、大人になる道具ではないからだ」
「えー」
「大人に変身して挫折を味わうアッコちゃんに、大人って何という命題を不思議さんが突きつける。大人と子供が自明であった過去の作品には無い新しいテイストだよ」
はぁ~ぁ~ぁ、納豆~ §
「この映画は実は二重構造になっている」
「というと?」
「化粧品会社の乗っ取りという最初から最後まで大人の話と、変身して一般企業に入り込んでしまう子供という話だ」
「それで?」
「前者の話がけっこう妥協無く進む。筆頭株主とか、資本とか大人の話が延々と続いてアッコちゃんは付いていけない。ここでこの映画は、大人の世界を覗きに行く子供の話ではなく、大人の世界に迷い込んだ子供の奇行の数々のギャップを面白がる映画になっていく。実際、大人の俳優が子供のように振る舞うギャップが面白いわけだ」
「えー。アッコちゃんのドキドキがメインじゃないのかよ」
「だからさ。不思議な女の子を迎え入れる大人の男側に視点から十分に楽しめるわけだ。けして小学生の女の子に感情移入しなくて良い」
「へー」
「中盤のクライマックスは株主総会の乱闘だしな」
「ひ~」
はよこいアッコちゃん §
「結局、話のスケールは予想を超えていく。1つの街の中の子供の問題を扱うのかと思いきや、いきなり一般企業のスケールになり、ヤクザまがいのダーティー企業が出てきたかと思ったら、国際的な規模の戦争を視野に入れた闘争までが見えてきてしまう。スケール感の大きさも凄いよ」
「そうか」
「そこまで行くかっ! と驚かされた」
「そこまで……」
「と思ったらなんと西暦2022年まで話が続いて更にびっくりだよ」
「10年後か。なんていうスケール感だ」
アッコちゃん来もせず用も無いのに §
「用も無いのにあらゆる変身がひたすら繰り返される『最後の変身』のビジュアルも壮絶だったし、最初に変身したフィギュアスケートのコスチュームもムダに色っぽくて良かったな。けっこう目は楽しめたぞ」
「最後の爆弾探しって子供っぽくて安直じゃないの?」
「化粧品会社の男の話は株主総会で終わり、アッコの話は爆弾で終わる。複雑な話を持ち込むとアッコの話として終われないから、そこはあれで良いのだろう」
「いいのかよ」
黒いシッポナ §
「独断で言えば、アッコちゃんはシッポナと婦警に変身しなければならない。でも、ちゃんとどちらにも変身したのでオッケーだ」
「えー」
「シッポナといえば、アニメのシッポナは白いが映画のシッポナは黒い」
「なぜ黒いのだ?」
「それは分からないが、きっと何か意味がある。実は不思議さんの正体だとか」
「えー。本当かよ」
「ただの想像だ」
まとめ §
「この映画は、少女が大人になる瞬間を描いた映画だと言える」
「大人になる瞬間とは、変身した瞬間?」
「そうではない。自分は優秀で何かができるという根拠の無い思い込みが事実では無いと知る瞬間だ」
「えー」
「だから、不思議さんに大人って何だと質問されてしまう。魔法で未来の自分になることは、なんら大人になることではなかったからだ」
「えー」
「だからこの映画は実は筋が通っている。最終的に身体も心も大人になって、それで終了する」
「それがこの映画に対する満足ということだね」
「ボディーだけレディーの先まで描いたとも言える」