2012年10月01日
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ヤマトはホテルシップかウォーシップか

Written By: トーノZERO連絡先

「昔、日本海軍の巡洋艦足柄を見たイギリス人が、自分が乗っているのはホテルシップだったと言ったとか言わないとか」

「日本の軍艦の優秀性を認めたわけ?」

「いや。一万トンという制約されたサイズに無理矢理重武装を押し込んだ中身は、居住性が悪すぎるというだけかもしれない」

「えー。皮肉かよ」

「日本海軍の思想は日米の艦隊決戦。太平洋を押し渡って攻めてくるアメリカ太平洋艦隊を迎撃して勝つ。それだけ。短期の1回限りの戦い。それに対してイギリス海軍の戦いは長期戦。Uボートからひたすら輸送船を守り続けなければならない。それ以前に全世界の植民地を守る必要があるから常に長期行動が求められる。居住性への要求の水準が違うわけだ」

「それがどうした?」

「だから5500トン級軽巡の方が好きというのは、設計が古いとは言え、条約型巡洋艦と比較して比較的配置にゆとりがあるからだ」

「話のツボはそこか?」

「いや、本題はその先」

「えー」

「さてここで宇宙戦艦ヤマトはどう解釈すべきかだ」

「そこかよ」

「ヤマトはほぼ1年かけてイスカンダルとの長距離航海を行う。ウォーシップである前にホテルシップであるべきだ」

「日常生活の居住空間であるべきだってことだね」

「だから、ヤマトは外から見たときはウォーシップだが、艦内はホテルシップになっていてサイズに矛盾が生じる」

「ひ~」

「ホテルシップ・ヤマトの全長は500メートルを超えるのが妥当であるらしい」

「SBヤマトの設定全長だね」

「でも、2199は333メートルに押し込んだ」

「居住性が落ちているわけだね」

「武装も押し込まれて扱いが悪そうだ。特に格納庫」

「回転式の格納庫だね」

「かなり無理に押し込んだ感じで、無重力環境下でもぎりぎりだろう。ゆとりは無い」

「それで?」

「そこで問題は、ヤマトにゆとりはあるべきか、無くてもいいのか」

「君の考えは?」

「戦艦大和が大和ホテルと揶揄された以上、生まれ変わったヤマトもやはりホテルであるべきだろう、と自分は判断した」

「なんちゅうオチだ」

「でもね。建造した側に言わせると、これだけの能力をこのサイズに収めたことを誉めてくれと言っているわけで、やはりコンパクトに詰め込みすぎてゆとりが少ないのが大和かも知れない」

「どっちなんだか、はっきりしろ!」

「詳細は戦艦大和研究家に委ねる」

「ひ~」

「ただ、個人的趣味で自分で作る模型のヤマトに関してはホテルシップ解釈を前に出したい」

「ただの個人的趣味かよ」

2199解釈は否定しないが…… §

「設定から可能な限り逸脱しないという意味では、ウォーシップ的な2199解釈を否定しない。あれはあれで1つの完成形だろう」

「なら君はなぜ逸脱するのだい?」

「うん。いい質問だ。なぜだと思う?」

「2199解釈を肯定するのなら、逸脱する必要が無いだろ」

「いや、2199解釈の完成度は高いと思うから逸脱するのだ」

「は?」

「完成度が高い以上、同じ事をやっても見た人はつまらないだろ? ああ、既に見た2199のヤマトね、で終わってしまう」

「1/1000ヤマト2199の格納庫は弱点だと言ったじゃないか」

「アニメのヤマトと模型のヤマトは別物だよ」

「模型の部品分割の問題であってアニメは別ってことだね」

だから §

「ともかく、ヤマト2199は自分の思うヤマトとは別物だが、それは他のヤマトファンと会話するときにはほとんど常に発生する状況であり、それは何ら問題ではない。むしろ、ヤマトとは何であったのかを考えるという自分の命題には有利なのだ。自分とは違うヤマト像を提示されることは、ヤマトとは何かを考える手がかりになり、歓迎することはあれど排斥することは無い」

「萌えキャラは排斥したいようだけど」

「あれは『あなたにとってのヤマトは何ですか?』という問いかけに包含されないからな」

「コスモファルコンならいいの?」

「それがあなたにとってのブラックタイガーだというなら、それはそれでいい」

「分かった。女性キャラが少なすぎるからと言って、そこで見たいのは萌えキャラじゃなくて、森雪の母親とか相原の母親の2199解釈だってことだね」

「それらがあなたにはどう見えたのかってことだ」

「ひ~」

「ともかく2199に関しては猛烈にいろいろあるが、単純に割り切れる状況でもない。『あ、心情的に通じているな』と思える部分もあるから、全て否定するような成り行きでも無い」

「全て肯定する成り行きでも無いわけだね」

「それゆえに、最終的な落とし所がどこなのかは知りたいね」

「その好奇心がまだヤマトに君をつなぎ止めているのか」

「萌えアニメなら、既につなぎ止めるものは残ってないよ。あくまでヤマトに興味がある。しかし、本当に興味があるのはヤマトではなく、ヤマト現象であり、その現象に巻き込まれた人たちだ。その人達の解釈が一定しない以上、こちらの追求する価値観も一定しない」

「でも、解釈を1つにしないとアニメはできないよ」

「正しいように思えるが、ヤマト1974はかなりそうでもない。解釈はけっこうぶれている」

「ぎゃふん」

アニメ論 §

「結局、君がアニメを見る理由ってなんだい?」

「ヤマトに関してはヤマトにケジメを付けないと先に進めないので」

「ヤマト以外は?」

「そうだな。大人が子供に何を語るのかを知りたいから」

「どういう意味?」

「ジャリ向けアニメは、基本的に子供が客なので、子供が興味を持つことがまず要求される。だから、根拠も無く子供がビー玉の発射玩具やペットの動物やカードゲームで世界を救う話が成立してしまう。そして、第2にスポンサーを満足させるために商品の宣伝としての要素を包含しなければならない」

「うん」

「しかし、そこまでやってなお、何かのメッセージを込められる余地が若干残る。そこにどのような語りを入れるかが自分の見たいところだな。最終的に突きつめると」

「どんな感じで?」

「たとえば、クロスファイトビーダマンの主題歌なら、最後に商品名を叫んで終わる」

「うん」

「商品名は強調しなければならないからだ」

「そうだね」

「でも、主題歌の始まりは比較的自由になるわけで、そこでまず何を語って強調するかはある程度フリーハンドだ。そこで、『会ったことない神様など信じやしない』というメッセージが挿入される」

「神を信じないとどうなの?」

「これは、似非ファンタジー設定の神様が自明のゲームやコミックが増えたことに対する健全なるアンチテーゼだろうな。そんなものはいないので、信じるべきではない。信じる心は詐欺師の食い物になるだけだ」

「他には?」

「ソードアイズのOPを見てみろ」

「冒頭から『正解さえも間違いもさえも無いただ1つの道を』と言って、絶対善も絶対悪も否定して、勧善懲悪を否定するような方向性がズバッと出てくる。意外とこういう善悪の相対性は似非大人向きアニメには欠落していることが多いものではないかな」

「そんなもの?」

「たとえば遊☆戯☆王GXとか、心が折れた多くの者達を救ってきた主人公なのに、その主人公は最終的に心が折れて悪のラスボス覇王そのものになるという、壮絶な話をしていた。ヤマトで言えば、古代君がデスラーの代わりにガミラスの総統になってヤマトと対峙するような構造だ。そこまでやるアニメがどれほどあるといえる?」

「そういうものか?」

「女子供のアニメとして甘く見られるポケモンにしても、大会で主人公が優勝しないことはざら。敗北の挫折を描いた回数もとても多い。しかも、普通は負けたら再戦して勝つのが主人公のパターンだが、勝っていないケースもあったりする」

「宿敵は倒しても大会そのものは途中で負けちゃうわけだね」

「ソードアイズにしても、主人公が実は王子だったとか、特別な光を瞳に宿す者達がいて特別であるとか、最初から光と闇にグループ分けされているとか、ベタベタに甘ったるい設定が並んでいるが、実はそこは重要ではない」

「何が重要なの?」

「敵だから、悪いから倒すという硬直した価値観にきっちりクサビを打ち込むことに意味があるわけさ」

「しかし、この話はヤマトとどう関係するんだい?」

「だからさ。ヤマトは正義の味方では無いのだよ。ビーメラ星では森雪自ら野菜泥棒だと言い、ガミラス星ではそこまでやる必要は無いのに相手を滅ぼして後悔するし、イスカンダルに行けば一部の乗組員は反乱してしまう」

「単純にガミラスは悪だから倒して構わない……という話ではないわけだね」

「生きるために悪をなし後悔を抱え込むが、それにも関わらず生き続けねばならない。それが世界の理だ。それにいかにして少しでも触れることができるかが、1つのポイントだな」

「どれほど作り事の箱庭の物語であろうと、そこに触れることができれば、それは意味があるわけだね」

「逆にいえば、触れることができないなら、永遠に続く箱庭世界から出られないわけで、それに意味は無い」

「ひ~」

「あるいは、どれほど作り事の箱庭の物語であろうと、本質を語るための方便ならば、その設定は肯定される」

「たかがカードゲームで世界の運命が決まる設定であっても?」

「そうだ。戦艦大和が宇宙を飛ぶという荒唐無稽な設定であってもだ」

「そこで、カードゲームと宇宙戦艦ヤマトの設定は等価になる訳か」

「どちらも、使いようによっては本質を描く寓話のための大道具だ」

「じゃあダメな使い方もあるわけ?」

「そうだ。SF設定とミリタリー設定だけに特化した戦争物をやっても意味は無い」

「ああ、分かったぞ。君が言いたいこと」

「なんだい?」

「ヤマトの物語の本質として相手は何を読み取ったのかを問いたいわけだね?」

「遠くはないな。ただし、自分が思っているようなことを読み取っていないことも多いはずだ」

「それなのに聞きたいの?」

「それは新鮮なサプライズだ」

オマケ §

「こういう写真はいいと思うよ」

「ヤマト搬入ショーってことだね」

「今日もどこかでデビルマン、じゃなくてヤマト。ならば明日もどこかでヤマトと思えるしな」

「ひ~。もうこれで帰れない感じで怖いよ」

「ただ問題が1つ」

「なんだよ」

「萌えキャラ軍団より、わざわざヤマトの制服を着て警備してくれている人の方が生き生きとしていて目立つ」

「ぎゃふん」

「そりゃそうだ。絵なんてなんでも着せられる。オヤジに腰蓑だって簡単だ」

「それはキタキタオヤジと言わないか?」

「生身の人間はそうは行かない。やはり好意的に協力してくれる意志があって、赤い矢印の服を着てくれるのだろう」

「その好意が良いわけだね」

「無駄に敵ばかり多いヤマトならな」

「ときどき2次の女、3次の女と分類する奴がいるけど、2次元の絵なんかいくらでも好きなことを言わせられる。そんな女が何か言っても感動は無い」

「生きている独立した人間が何か言ってくれたら嬉しいわけだね」

オマケ2 §

「ソードアイズのOPはともかく歌としてカッコイイ。ジャリ向けが気になる人は一切画面を隠して聞いてみるといい」

「わかった。でもそれは君がバトスピ好きであることを言っているだけでヤマトは関係ない」

「いや、そうじゃない。ソードアイズのOPの歌は文句なくカッコイイが、ならばこれがヤマトのOPだったら似合うだろうか」

「あ、分かった。カッコイイことと、似合うことは別問題なのか」

「そうだ。しかし話はまだ終わらない」

「えっ?」

「これがいちばん良いのだ、とスタッフが確信しているのなら、それがどう良いのかを明確に分からせるような演出をきっちり行うべきなのだ」

「じゃあ、ヤマト2199も、その演出を行う限りOP変更しても良いと聞こえるじゃないか」

「もちコース。その部分だけならそうなる」

「でも君はOP変更に否定的なのはなぜ?」

「ヤマト2199はどこを強調したいのかが演出的に明確ではない。たとえば、想定された人気女性キャラは岬で実際は新見だが、フィルムでは山本や原田の方が出番が多い。このあたりは萌えキャラの是非以前に、演出の迷走だろう」

「岬が1番人気になると思うなら、1番人気になるような演出をきっちりしておけ、ということだね」

「そうだ。それにも関わらず明確なドラマがある女性キャラは山本だけってどういうことよ」

「山本イチオシの君としてはどうなんだい?」

「実は裏を返すと第2章までは山本以外にはろくなドラマが無いので、他のキャラは推しようも無いのも事実というわけだ」

「ぎゃふん」

「もちろん、SBヤマトの佐々木のようにドラマを担わない『喋る壁の花』に徹するのは1つの選択で間違っていないが、その場合は1番人気を取るのは難しいと思うべき」

「まとめてよシロクマ君」

「ヤマト2199は個別のシーンには凄いものがいくらでもあるが全体的な整合性に甘い部分がある。だからヤマト1974から大幅に逸脱すると、作品そのものが宙に浮いてしまう危険がある……ような印象を持った」

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