「面白かったぞ。というか、これは好きだな。アメリカンなヒーロー達の中ではいちばん好きと言って良いだろう」
「どこがいいのだい?」
「生々しい人間の話であり、同時にデザイン的な大胆さもある。宇宙戦艦らしい宇宙戦艦など見ても、もう何も感じないけど、この映画に出てくるなんだか良く分からない神話的な乗り物の奇矯なデザインはいいね」
「そこか、そこかよ」
「これは神話をベースにしているが、神話になると終わってしまう。その後に続くのは説話だけだ。しかし、ソーは神話になることを上手く回避している。少しだけ特別な家族の話だ。ソーが持つ特殊能力は、常に対等のロキと対比されることで特権性を持たない。ソーがハンマーを投げると豪快だが、それだけの話だ」
「つまり、神話ではないと?」
「実はヒーローですらない。本質的にはね。ひたすらにソーとロキという兄弟の確執が続いているわけだ。世界の敵は、実は巨大確執の過程で葬り去られてしまう。しかも、敵側のロキによって葬り去られることも多い。誰が善良で誰が優秀で誰が本当の物語の軸なのか分からないが、少なくとも兄弟の確執が軸であることは確かだ」
「ロキの存在はそんなに大きいのかい?」
「ディケイドの鳴滝タイプの敵だよ」
「そもそも、なんで君はソーに入れ込んでいるんだい?」
「アヴェンジャーズ見た時に、一番気に入ったからだ。アイアンマンよりキャプテンアメリカよりもね。アイアンマンもキャプテンアメリカも凄くいいよ。でも、自分はソーがもっと好き」
オマケ §
「で、見どころは?」
「全裸で走り回る変態のおっさん」
「……」
オマケ2 §
「この映画、実は終わった後の続きが2つある。1つめを見て帰ってはいけないと言われるが、自分はちょっと違う感想を持った」
「どう違うんだい?」
「映画の長いスタッフロールは、実は音楽の見せ場であり、それを利いて味わうことなく劇場を出てしまうのは金を払った客としてはもったいない行為では無いかと」
「スタッフロール時の音楽は論じる意味があるのかい?」
「おいらは論じられるよ。どういう構成にするのか。いろいろ工夫がある」