「何故こんな映画を見たんだ?」
「昔ね。映画館にちょっと行っていた頃に何回も予告を見たんだ。さすがは信玄、よくぞこのなんとかをたばかったってね」
「それで?」
「その時は、頭がいい信玄が優秀な影武者を使って周囲を華麗に騙す映画だと思ったの」
「ふーん。それで実際は?」
「ぜんぜん華麗じゃなかった。影武者はダメ野郎だし、武田は最後壊滅しちゃうし、もうダメダメなボロボロの映画。だが、そこが面白い」
「面白いのかよ」
「この映画、ほぼ3時間あるんだけど、一気に見られたよ。面白い証拠だ」
「3時間!」
「ああそうか。WikiPediaに『黒澤は「国内版は時間がなかったため編集が不十分。もっと切りたかった』と書いてあるがその通りだろう。もっと切った方がいい」
「長すぎると緊張感が削がれるってことだね」
分かったこと §
「とりあえず、さすがは信玄と言ったのは信長で3年間たばかったことも分かったよ」
「そこが気になるのか」
「印象に残ったのはそこだからな」
感想 §
「すんごい映像もあるし、ともかく物量が凄い。人が多いし馬も多い。凄い映画だ。同じものはもう作れまい」
「ひ~」
「特に夕日を背景に行軍している兵隊のカットとかね。凄く美しいよ。それに冒頭のほとんど同じ顔の男が3人話しているのは1カットの長回しだから凄みがある」
「そこもいいのか」
死体が歩く §
「夢の中の幻想的な空間を死体が歩いてくるのもいいね。そして死ぬ寸前の主人公が結局、死んだ信玄そっくりの顔色なのよ。結局、影武者こそが信玄でもあったのだね」
「なんてこった」