2014年06月24日
遠野秋彦の庵創作メモtotal 575 count

小説の解釈に【正解】は無い

Written By: 遠野秋彦連絡先

「トモネコさんが執拗に【これが正しい解釈ですか?】と意見を求めてくるのだが、本質にも関わる問題なのでここで解説しよう」

「それは君が【XXには複数の意味がある】的なことを言うからではないのかい?」

「それは1つの意味を理解して満足してしまい、それ以上のことを考えない思考停止に対して、親切な補足をしているだけのことで、正解を要求しているわけではないのだ」

「しかし、複数の意味を見つけることがゴールなのだろう?」

「違うね」

「どう違うんだ? 複数の意味があると君は言った。ならば複数の意味を全て見つけることがゴールとして提示されたのではないのかね?」

「まるで違う」

「じゃあ、その言葉の意味はなんだい?」

「意味は1つではない、と言っているだけなのだ。全て見つけよ、とは言っていないし、答え合わせを必要とする話でも無い。そもそも答え合わせはできない」

「なぜ答え合わせはできないの?」

「答えは1つではないからさ」

「でも君が書くときに想定した答えはあるんだろう?」

「そうさ。でも書き上がった後で作者が自分で発見してしまう意味もあるんだ」

「えっ?」

「あるいは読者が発見してしまう意味もある」

「なんでだよ」

「もともと小説とは重層的、多義的な存在だからだ」

「その人なりのそれぞれの解釈はあって良いということだね」

「そうだ。できるだけ意図を通じるように書くことは作者の義務だが、自分で意味を見出すことは読者の権利なのだ」

「誤読の権利ってやつだね?」

「その言葉は、どうも誤解を受けていかんな。『誤』と言う言葉が否定的な意味を持ちすぎる。むしろ、自分で自分の意味を見出す権利と言い直した方が良いな」

「それは創造的な振る舞いなのだね?」

「そうさ。あまりに読まずに中身を空想してしまわない限りはね」

「空想っていうと?」

「太平洋戦争の史実を書いた話なのに、日本が負けるとはけしからん、とかね。架空戦記じゃないんだから史実をねじ曲げたらドキュメンタリーにならないけど、そこが分からない人はどうにもならない」

「じゃあさ、結局なんなのさ」

「だからね。小説は、書く際に想定した作者の解釈というものが存在するが、それは正解とは呼べないものだ。解釈は読者が自分で行うのが基本。作者はそれほを補助することしかできない。つまり、答え合わせという行為そのものが存在しない不毛のことなのだ」

「それって要するになに?」

「つまりだね。作者が知りたいのは『読者のあなたの解釈』なのだ。『作者の考える正解はこれですね?』ではないのだ」

「ああ、わかった。作者としては、もしも読者がサービスが提供されない世界に行こうとしていたら『そっちじゃないよ』という示唆は与えられても、答え合わせの機能は持っていないわけだね」

「答えも無いしね」

「答えが存在しない領域の話だってことだね」

「そうだ。学校のテストには答えがあったかもしれないが、あれは便宜上のインチキだから。世の中には唯一の正解が存在しない問題が山のようにある。むしろ、正解が1つに決まる方が珍しい」

「結局、どういうことだい?」

「あくまで自分の解釈だけどね。ある人は、間違っているとしてもその人の解釈をニコニコしながら聞いている。そこで重要なことは、その人が真摯に作品と向かい合ったのかということだけであって、正しいか間違っているかなどはそれほど重視していない。むしろ面白い解釈が聞ければその方がいいのだ……。結局自分も同じだよ」

「分かった。答え合わせを求める行為は全て意味が無く不毛だから望まないってことだね。知りたいのは常に『あなたがどう思ったのか』だけなのだね?」

「本来なら当たり前の話なんだけどね」

「じゃあ、この小説の謎を解けって言うのは?」

「矛盾を解消できる解釈を思い付いた時点で終わる。その解釈が何であれ、矛盾が解消できればそれでいい。解消できる矛盾を謎として提示する行為は、少なくとも1つの解釈があれば書けるが、それが唯一の解釈というわけでもない。その人なりの暗黙の前提があれば、より違う解釈は有り得ることになる」

「解釈は無限大ってことだね」

「むしろ、小説の解釈に【正解】は無いと言い切った方がいいね」

「そうだ。だからけして作者が提供できない機能を要求しないように。それは単なる勘違いだし、答えが得られる可能性もないから」

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小説の解釈に【正解】は無い

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「トモネコさんが執拗に【これが正しい解釈ですか?】と意見を求めてくるのだが、本質にも関わる問題なのでここで解説しよう」

「それは君が【XXには複数の意味がある】的なことを言うからではないのかい?」

「それは1つの意味を理解して満足してしまい、それ以上のことを考えない思考停止に対して、親切な補足をしているだけのことで、正解を要求しているわけではないのだ」

「しかし、複数の意味を見つけることがゴールなのだろう?」

「違うね」

「どう違うんだ? 複数の意味があると君は言った。ならば複数の意味を全て見つけることがゴールとして提示されたのではないのかね?」

「まるで違う」

「じゃあ、その言葉の意味はなんだい?」

「意味は1つではない、と言っているだけなのだ。全て見つけよ、とは言っていないし、答え合わせを必要とする話でも無い。そもそも答え合わせはできない」

「なぜ答え合わせはできないの?」

「答えは1つではないからさ」

「でも君が書くときに想定した答えはあるんだろう?」

「そうさ。でも書き上がった後で作者が自分で発見してしまう意味もあるんだ」

「えっ?」

「あるいは読者が発見してしまう意味もある」

「なんでだよ」

「もともと小説とは重層的、多義的な存在だからだ」

「その人なりのそれぞれの解釈はあって良いということだね」

「そうだ。できるだけ意図を通じるように書くことは作者の義務だが、自分で意味を見出すことは読者の権利なのだ」

「誤読の権利ってやつだね?」

「その言葉は、どうも誤解を受けていかんな。『誤』と言う言葉が否定的な意味を持ちすぎる。むしろ、自分で自分の意味を見出す権利と言い直した方が良いな」

「それは創造的な振る舞いなのだね?」

「そうさ。あまりに読まずに中身を空想してしまわない限りはね」

「空想っていうと?」

「太平洋戦争の史実を書いた話なのに、日本が負けるとはけしからん、とかね。架空戦記じゃないんだから史実をねじ曲げたらドキュメンタリーにならないけど、そこが分からない人はどうにもならない」

「じゃあさ、結局なんなのさ」

「だからね。小説は、書く際に想定した作者の解釈というものが存在するが、それは正解とは呼べないものだ。解釈は読者が自分で行うのが基本。作者はそれほを補助することしかできない。つまり、答え合わせという行為そのものが存在しない不毛のことなのだ」

「それって要するになに?」

「つまりだね。作者が知りたいのは『読者のあなたの解釈』なのだ。『作者の考える正解はこれですね?』ではないのだ」

「ああ、わかった。作者としては、もしも読者がサービスが提供されない世界に行こうとしていたら『そっちじゃないよ』という示唆は与えられても、答え合わせの機能は持っていないわけだね」

「答えも無いしね」

「答えが存在しない領域の話だってことだね」

「そうだ。学校のテストには答えがあったかもしれないが、あれは便宜上のインチキだから。世の中には唯一の正解が存在しない問題が山のようにある。むしろ、正解が1つに決まる方が珍しい」

「結局、どういうことだい?」

「あくまで自分の解釈だけどね。ある人は、間違っているとしてもその人の解釈をニコニコしながら聞いている。そこで重要なことは、その人が真摯に作品と向かい合ったのかということだけであって、正しいか間違っているかなどはそれほど重視していない。むしろ面白い解釈が聞ければその方がいいのだ……。結局自分も同じだよ」

「分かった。答え合わせを求める行為は全て意味が無く不毛だから望まないってことだね。知りたいのは常に『あなたがどう思ったのか』だけなのだね?」

「本来なら当たり前の話なんだけどね」

「じゃあ、この小説の謎を解けって言うのは?」

「矛盾を解消できる解釈を思い付いた時点で終わる。その解釈が何であれ、矛盾が解消できればそれでいい。解消できる矛盾を謎として提示する行為は、少なくとも1つの解釈があれば書けるが、それが唯一の解釈というわけでもない。その人なりの暗黙の前提があれば、より違う解釈は有り得ることになる」

「解釈は無限大ってことだね」

「むしろ、小説の解釈に【正解】は無いと言い切った方がいいね」

「そうだ。だからけして作者が提供できない機能を要求しないように。それは単なる勘違いだし、答えが得られる可能性もないから」

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