「面白いじゃないか。凄くいいぞ。どこを切っても良く出来てる」
「じゃあどこに文句があるんだい?」
「客が少なすぎる」
「少なすぎる客を確認できるのも劇場で見る醍醐味だね」
「まあ、森林火災も、消火用航空機も、農薬散布機も、それどころかエアレースも日本では理解されず、飛行機といえば軍用機か旅客機。旅客機も飛行機よりCAのスカートの長さが気になるようだな。プレーンズ・シリーズなんて日本で理解されるはずもない。でも映画そのものはとても分かりやすいいい映画だよ。別にマニアックな知識なんて要求されない。普通に見て普通に良く出来ている映画だよ。でも客が来ない。まあ最低ランクの客の入りではなかったが。ディズニーブランドでこれはしょぼい」
「文句があるわけだね」
「とりあえず、物流博物館の特別展で見た【貨物列車に注目する鉄道ファンが少ない】というぼやきと同じようなもので、戦闘機にばかり注目するようじゃダメだな」
「普通に見て面白いんだから普通に見ろよってことだね」
「うむ。差別はいかん。消防飛行機なんてつまらないはずだと思い込んではいかん」
「でどこがいちばん良かった?」
「翼端フロートを下げて女飛行艇が主人公を抱き寄せるところ」
「他には?」
「やはりチャンピオンがボロボロになるところだな。挫折する話はいいぞ。誰だって挫折したことがあるのに劇中のヒーローだけ挫折しないなんて不公平だ」
「分かった。だから分かりやすい映画なんだね」
それはさておき §
「それはさておき、マニアックなネタが散りばめられている。普通の人は見なくていいものだが、目に入ってしまった。しかし、ネタの半分以上は分からない。とても悔しいね」
「く、悔しいのか」
「目の前にご馳走があるのに分からないんだからね」
「それで?」
「主要な飛行機の元ネタ探し」
「それで?」
「CH-54は名前は出なかったけど、どのヘリかは見ていて分かった。でも他は分からなかった」
「調べたんだね?」
「うん。ディッパーはカタリナみたいだと思ったけどそうではなくスーパースクーパー。キャビーはC-119だ。C-119は太平洋戦争後に出来た飛行機なので、日本にはあまり縁が無いのでピンと来なかったが良い飛行機だね」
「いいのかよ」
「ブレードレンジャーは調べても分からなかった」
「他には?」
「ウィンドリフターがネイティブアメリカン風に喋るのは、CH-54タルヘのタルヘが【18世紀のウィアンドット(アメリカ原住民 )族の酋長の名から付けられたから】らしい」
「へー」
「ついでに、劇中のテレビドラマ"CHoPs"のモデルは白バイ野郎ジョン&パンチ(原題CHiPs)。原題見たら一発で分かるね」
「ひ~」
「ちなみに、ヘリ=チョップなので、【ヘリ版白バイ野郎】という意味だろうね」
「な、なるほど……」
「ちなみに、これを見るときにはVHSのテープを再生していたけれど、古いテレビドラマだから当然メディアも古いのだろうね」
「そこまでこだわっているのか」
「でも分かっていないネタの方が多いぞ」
「ひ~」
ウィンドリフターはTB2? §
「コンテナを搭載し、レスキュー活動を行う緑のCH-54はサンダーバード2号風に見えたけれど、よく考えるとサンダーバード2号の方がCH-54に影響されているのかもしれない。どこまで意識した描写なのか分からないね」
「分からないのか!」
「そういう意味では分からないことだらけの映画だよ!」
「でも本筋は分かりやすいのだね?」
「そうそう。誰が見てもすぐ分かる」