「凄いな」
「なにが?」
「凄い飛行機が一杯見られた社長シリーズだが、いくら何でも狙ったわけではあるまいと思って見た社長忍法帖だが、もっと凄かった」
「どういう意味だよ」
「飛行機の出番は少ないが、シリーズ他作よりも増えている。そして主役メカはコンベアCV880!」
「なんだそれは」
「2回目に千歳で降りるカットでは、コクピットの下に描いてある愛称が部分的に読めるIKYOだ。これは、JALの8号機。愛称はKIKYOと思って良いだろう。1963/3/22受領。1969/6/28モーゼスレークで訓練中墜落。……という経歴だ」
「映画は?」
「1965年の正月映画。だから撮影は1964年と思われる」
「受領した直後だね」
「最新鋭機だったのだろう」
「話はそれだけ?」
「いいや。飛んでいるカットだけは特撮かもしれない」
「そのカットだけか」
「あとね。千歳に着陸するところで、背景に小さく別の飛行機が飛んでいる。翼の左右が膨らんでいて、胴体のひしゃげた感じだったので、翼端にタンクを付けたT-33と推定した。何しろ千歳だから空自がいてもおかしくないし、T-33もいたようだ」
「黒い点を見ながらそこまで推定したのか!」
「まだあるぞ。羽田のカットで最も目立ったのは、スイス航空のコンベアCV880。横にいた4発のプロペラ旅客機はおそらくスイス航空のDC-6か7のあたり。おそらくこの映画はJALとスイス航空の協力を得ている」
「そこまで見るのか」
「凄く楽しいぞ。1960年代の旅客機事情が動くカラーで見られる」
「それで君は森繁をちゃんと見てるのかい?」
「えっ?」
追記 §
着陸シーン(背景に黒い点で小型機が飛んでいる)のCV880も、KIKYOであることを確認。