前置き §
この文章は、地の色がそのまま活かせる場合は色を塗らない方が良いと考える【塗らないメソッド】の理論と方法の説明のために存在する。
この文章は何か §
- 塗らないで済む場合は塗らない方がむしろ良い結果を生むという説明
- その場合、どう作れば良い結果を産むのかという説明
- なぜ良い結果になるのかという説明
この文章は何ではないか §
問題提起 §
塗装はキットがもともと持っている繊細なモールドを埋めてしまう可能性がある。埋めないまでも、浅くしてより目立たなくしてしまう可能性がある。かといって、墨入れで強調すると不自然に印象が強くなってしまう。
塗装皮膜が厚くなりがちな水性ホビーカラー等を利用する場合や、隠蔽力の弱い塗料で出来るだけ下地を隠したい場合も、モールドを埋めてしまいがちである。
着想 §
プラの地の色がそのまま活かせる場合は、むしろ塗らない方がモールドを埋めないで済むのではないか?
着想の難点 §
- そのままでは、モールドが強調されない (目立たない)
- プラの質感はヤスっぽい
- 上から色を乗せて修正ができない
解決案 §
- 薄め液で薄めた黒の塗料等で、軽く汚しを入れる (適当に全体を筆で塗るだけ)
- これにより、安っぽさはかなり軽減される
- 適当に塗ることにより、むらができ、単調さを打ち消す
- モールドに入り込んだ塗料がモールドを強調するが、くどいほどには強調しない
- モールドに入り込んだ塗料は、凹部のエッジに付着し、モールドそのものは浅くならないで済む
- はみ出しの修正は薄め液でぬぐって行えば良い
塗らないメソッドが使用できるとき §
- プラの地の色が、欲しい色よりもやや明るい色の場合 (必須の条件)
- 埋めたくないモールドがある場合
- 面積が広い場合
注意 §
【塗らないメソッド】は塗装の手間を軽減してくれる場合が多いが、全ての場合に使用できるわけではないことに注意。たとえば、明るい緑のプラで成形された零戦を上面を濃緑色、下面を明灰白色に塗るとき、上面には使用できるが下面には使用できない。また関係ない色が付いてしまった場合、いちいち拭き取る手間が発生して手間の軽減にならない場合もある。
従って、手間の軽減だけを目的としている場合には、採用は好ましい結果をもたらさないかも知れない。
また、汚し塗装の濃度である程度色をコントロールすることができるが、思い通りの色は出せないと思って良い。何となくこういう色だよね、という似た色しか再現できない。色の正確さにこだわる場合も使用できない。
【塗らないメソッド】と合性が良いケース §
- メーカーのデザイナーが掘ったモールドを尊重したい
- 元のキットが多色成形
- 色の正確さにはこだわらない (どのみち、色は環境次第でいかようにも見える)
- 模型は自己満足と割り切れる。そして【塗らないメソッド】の完成度で満足できる
【塗らないメソッド】と合性が悪いケース §
- 色の再現にこだわる (工廠の違いで発生する色の様で再現したい等)
- モールドは必要なら堀り直せば良い
- 軽減されるとは言え、やはりプラの安っぽさが気になる
- 展示会やコンテストに出す (手抜きと見なされる可能性が高い)
実例 §
アオシマ1/144銀河 §
ヴァンシップ §
バンダイ旧キットのマゼラン §
追加の注意点 §
【塗らないメソッド】は、塗らずに汚しを入れて終わりという方法論では無い。その上からの仕上げに、色を入れることは必須となる。【塗らないメソッド】を使用するだけでは仕上がりが単調だからである。たとえば、上の実例のマゼランは、要所に白を入れて単調さを打ち消している。
そのような意味で、【塗らないメソッド】とは一色ないし数色を塗る手間を軽減するだけで、全体から見ればそれほど大きな手間の軽減には結びつかない。楽がしたいという理由で採用することはお勧めできない。
しかし、慣れれば工程をショートカットする手段として使用できるので、完成度にはこだわらない前提で積みキットを急速消化したい場合には採用の余地がある。特に塗る面積が大きい大型キットで効果が大きい。
蛇足の注意事項 §
模型の楽しみ方は人それぞれなので、【塗らないメソッド】は良いとも悪いとも言えない。あくまで模型の楽しみ方の1つとして、好ましい思えば取り入れれば良いし、好ましくないと思えば取り入れなくて良い。あくまで、判断するのはあなた自身だ。従って、ここで【塗らないメソッド】が良いとも、優れているとも、あなたは採用すべきであるとも言わない。その判断は個々の読者が下すべきものだ。