「平成26年度文部科学省委託事業「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」報告書の「はじめに」が想像を絶する内容だと大評判だ」
「ちょっと待て真面目な報告書なんだろう?」
「とてもそうは読めない」
「笑えるの?」
「あまりの凄さに笑う以外の選択肢は無い」
「それって諸外国から日本は笑いものになってるってこと?」
「日本人からも笑いものになってるよ」
「いいのかよそれで」
「いいわけないだろう」
「何か分析をしてくれよ。なぜそんな悲惨な文書が書かれているんだ?」
「うむ。いい質問だ」
「何かヒントがあるの?」
「あるある」
「どこ?」
「その前に昔話をしよう」
「は?」
「昔ね。Macintoshというパソコンがあってね」
「今でもあるよ」
「それはね。コンピュータを人民に解放すると宣伝しながら、金持ちしか買えない価格で売っていた極悪非道なパソコンなのだがね。一部の人達は、Macintoshなら僕らにも使えると気づいて舞い上がってしまったのだよ」
「簡単だったの?」
「そうだ。機能が少ないからね。一部の用途には使い物にならなかったが、舞い上がったビギナーは【我々だけが真実を知っている】と堅く思い込んで宣教師と化してしまった」
「それで?」
「しかし、要するにビギナーだ。知識が圧倒的に足りないから言ってることはおかしかったよ」
「たとえば?」
「まともな技術論ができないので、説得すると言うことができない。知識が無いんだから当たり前だ。そして説得できないと人格攻撃に切り替えて相手そのものを全否定するような言い方をしてくる。そんな信者がうじゃうじゃいたよ」
「君の前にもいた?」
「何人もいたよ。素人がプロに上から目線でものを教えようとする、という滑稽な光景が何度もあった。突っ込みどころ満載で突っ込むと嫌な顔をしたが反論はできなかったよ。結果として人格攻撃さ。彼らには怨みしか残ってない」
「それじゃ社会に受け入れられないだろう?」
「そうだ。結局社会が受け入れなかった。しかし、受け入れたジャンルが2つだけある。デザイナーと、印刷業界だ」
「で、この話が報告書とどうつながるわけ?」
「表紙に堂々と書いてある著者名が印刷会社の名前なんだよ」
「あ……」
「で、どのあたりで問題が明確化しているのかというと、マウスの説明で80年代半ばにMacで実用化と書いてある」
「何が明確になっているの?」
「実際は、Macより先にマイクロソフトがマウスを商品として売ってるんだよ。それを利用する実用ソフトもあった。でも、そのことは一切無かったことにされて全てMacの功績にする。嘘つきはMac信者の典型的な行動パターンだ」
「愛好家と呼ばず、信者と呼ばれるのは、布教のためなら平気で嘘を付くからなんだね」
「でもそこから逆算すると、なぜこういうギャグが平然と書かれているのかが良く分かる。あまりにも素人すぎる者達が、自分達は物事をプロよりよく知っていると錯覚しているからなんだよ」
「いたって大まじめに笑いが取れるわけだね」
「でも、それは素晴らしい才能の産物ではなく、ただの偶然。天狗にならない方がいいぞ」
「笑わせているのではなく、笑われているのだってことだね」