「ラブ&ピースを見てきたぞ」
「ふーん、それで?」
「これは本質的に正しい怪獣映画だと思った」
「怪獣映画? ロック映画じゃないの?」
「ロックは現実の世界に存在するものだがね。この映画は最初から最後までが虚構世界の寓話。その中に、怪獣がそのまますっぽり入っている」
「全部寓話なの?」
「現実が存在しない。本来現実に見せる世界と、壊れた玩具達がいるトイストーリー的地下世界という寓話世界の2つがあるように見えるがね。実際にはそうではない。最初から寓話なんだ。だからダメ社員は徹底的にダメであり、同僚は徹底的に汚い。全部寓話なんだ」
「だから、テレビが主人公を名指しで批難するわけ?」
「そう。あれは心理表現ではなく、これは寓話世界なのだという表明」
「それで気になったことは?」
「この映画のヒロインは、同僚のメガネ女性なのか、それとも亀なのか」
「えー」
「それから、人生ゲームの赤青の棒が立ってる車を蹴散らしながら進む亀ちゃん最高。人生ゲーム知らないと意味が分からないと思うけど」
「一応、映画の冒頭に出てくるね。人生ゲーム」
「さて、これを怪獣として見るならば、ガメラというよりも、育てよ!亀的な話だなと思った」
「たぶん、誰も分からない比喩だと思うよ」
「地下世界だと黒猫と女の子の人形が良かったね」
「どこが?」
「未来を確信できない態度。黒猫は皮肉に、人形は悲劇のヒロインとなって行く」
「それはどういうことだい?」
「ウッディとバズがいない悲惨なトイストーリーってことだな。それはそれで面白い」
「それでまとめると?」
「亀ちゃんは可愛いが、最後まで亀ちゃんへの思いを持ち続ける主人公も可愛いと言えると思うよ」