「存在感はあったかい?」
「あったぞ。それだけじゃない」
「というと?」
「今回の目玉には、ヤマトの主砲が含まれていた。列車砲のレオポルドもだけどな」
「どこが面白かった?」
「話題だけで言えば、やはり戦闘妖精がいちばん面白かったけどね」
「他に何か?」
「要するに空中戦艦大空飛ぶ代とは、艦これネタなのだがね。上手く流行りの事象を肯定して作品に取り込んでいる」
「それって、君があまり好きではないものだろう?」
「いや、そうなのだけどね。でも、この作品は、艦これを全面的に肯定しながらそれを完全に再現するといかにおかしい光景が招来するのかを、好ましい悪意を込めて描いている」
「悪意?」
「艦これを否定しないことが悪意なのだ」
「どういうこと?」
「艦これのデザインは軍艦のパーツが女の子に付いているものだ。だがスケールが本来は食い違っている。あれは本来なら成立しない立体なのだ。それを、卓越した技術によって成立させてしまうと何が起こるのか。それをやってしまったわけだ。楽しいねえ」
「それなら納得なのだね」
「そうだ。1つ1つの部分デザインは艦これでは全て記号なのだがね。その記号性を取り払って、全てリアリティのある立体として構成すると全体が破綻してしまうのだ。しかし、破綻が作品性になっている」
「それがアートの香りだね」
「あえて破綻した絵を描くのもアートだからね」
「アニメでやると作画崩壊と騒がれるわけだね」
ドール要素 §
「大空飛ぶ代さんの作りは完全にドールなのだがね」
「うん」
「出来合のドールの転用かと思ったら髪と目玉にドールのパーツを使っただけで、新規に作ったらしいぞ」
「見事だね」
「でもちょっと似てない」
「えー」
「似てないことはドールの世界で許されるから、これでいいのだ」
「えー」
「昔、水玉螢之丞さんがそういうことを書いていたこともあるな」
「合掌」
「もちろん最低限は似てるからね。新規に作っただけのことはある」
Uボート §
「下半身のパーツは何かな~と思ったらUボートだった。かつて作った作例で使い残したパーツを使ったらしい。そういう無駄の無い工作も好感ができるところ」
「Uボートか」
「しかし、胯間の前部が膨らんでいるのはどんな意味があるのだろう」
「見ているところがエッチだぞ」
「だが、解釈はしない」
「なんで?」
「みんなでいろいろな可能性を妄想した方が楽しいだろう?」
「だから小林誠さん本人に【あれはなんですか?】と質問しないわけだね」