「お。ここで、グッと良い感じになってきた」
「どのへんが良い感じ?」
「キティの背後にある死体の山とか、雪姫に言及できるキティの正体とか」
「死体の山って何?」
「覗き込んではいけないものだ。それを見てしまうことが大人になるということだ」
「綺麗事の世界では無いのだね」
「エヴァンジェリンは、綺麗事を言わない希有なキャラクターだ」
「じゃあ、雪姫に言及できるキティとは?」
「あれは過去のキティではあり得ない。過去のキティは雪姫のことを良く知らない。かといって、現在の雪姫でもあり得ない。結局、刀太自身の心の奥底にある何かがキティの姿で出てきただけかもしれないし、もっと超自然的な何かかもしれない」
「何か分からないけれど、恐ろしいものが出たわけだね」
「まあそれはともかく、深刻な話をしながらマージャンしてるのはいいね」
「いいのかい」
「キリヱの決意表明もあっさりとマージャンの流れの中で回収され行く感じ。あれは崇高な決意も、散文的な日常の中に飲み込まれていくだけという皮肉であり、良い描写だと思うぞ」
「結局、彼らは地球最後の日まで生きる?」
「さてね。キリヱの不死の性質からすると、寿命は長くはならないはずだ」
「死をキャンセルして戻れるだけで、寿命が延びる能力ではないわけだね」
「戻った結果として、生きている体感時間は人間以上になるのだろうが、見かけ上の寿命までは伸びないのだろう。たぶん」