2015年11月23日
トーノZEROアニメ雑記total 768 count

オタクはいかにしてニュータイプの受容を誤ったのか・そのメカニズムの考察

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

前提 §

 機動戦士ガンダムで語られた「ニュータイプ」という概念は、現在の人類とは異なるいわば新人類である。つまりは人類の種としての成長である。

 しかしながら、子供が持つ万能感と結びつくことによって、【成長の拒絶】を肯定する思想に化けたのではないか、というアイデアを示すために本稿は書かれた。

ニュータイプの表現 §

 ニュータイプの表現は機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)によれば、【宇宙時代の要求に対応するための知覚の拡大】となる。特に肉体が強くなるとか、あるいは物体を動かす能力を手に入れるわけではない。ただ、離れた誰かや物事のことが良く分かったり、相互理解が進むことがニュータイプの能力とされる。

 このことは、たとえば三角関係の解消能力を意味しない。シャアを愛してしまったララァは、アムロが出現しても簡単に乗り換えることはできない。

 結局の所、ニュータイプの能力とは【分かってしまう】ところまでで、そこから先は別の問題である。

子供の特質 §

 子供と大人の境界線をどのように認識するのかは難しい問題であり、様々な考え方がある。しかし、ここでは万能感というキーワードで両者を区分してみよう。子供とは、難しい問題を全て親に押しつけて、知識経験の不足から、自分は万能の存在だと思うものだ。従って、地球を救うスーパーヒーローにも無条件で感情移入できる。

 それに対して、大人は根拠の無い無制限な万能感を持たない。実際にやってみてダメだったという経験を持つからだ。それにも関わらずそれをやってのける他人も目撃しているかもしれない。だから、大人は地球を救うスーパーヒーローよりも、組織の軋轢の中で苦悩するサラリーマンに感情移入できる。

 従って、この定義で言えば【地球を救うスーパーヒーロー】を喜んで見ている者達は、たとえ肉体年齢が大人であっても、本質は子供である。

子供とニュータイプ §

 ニュータイプは、分かるはずがない遠隔地での出来事が分かってしまうのである。

 これに対して、子供も、分かるはずがない問題の結論が分かってしまうのである。

 もちろん、子供が分かってしまった結論はたいてい正しくない。子供は【お父さんがあれを買ってくれないのは給料が少ないからだ】と分かってしまうかも知れないが、実際は子供に【我慢】を教えるためにあえて買わないだけかも知れない。

 ここでポイントになるのは、【途中経過をすっ飛ばして結論が分かってしまう】という特徴の類似性だ。その点でニュータイプと子供は似ている。

 つまり、【新しい世代を担う新しい人類】という概念と、【これから成長して大人になるべき子供】は混濁し、1つの錯誤が発生する。

 その結果、【我々は新しい人類である】【成長して大人になれというメッセージは退化の要請である】【成長への要請は、新しい人類を去勢して、既存の古い秩序に取り込もうとする陰謀である】といった認識に結びつきやすいのではないか。

 しかしながら、ニュータイプはあくまで宇宙に人類が居住する宇宙世紀の時代的な必然であり、しかもそれはフィクションでしかない。今の【我々】がニュータイプになれる理由は何もない。そういう意味で子供は子供であり、何を信じるとしても結果的に【子供は大人になれ】という社会からのメッセージが消えるわけではない。

 しかしながら、このメッセージはある世代を境に消えてしまう。ある程度の年齢に達したらもう子供であるはずがないと見なされるからだ。しかし、【見なされる】は【大人である】の同義語ではない。実際に大人とは言えない大人は大勢いるし、それはオタクに限定されない。

新人類問題 §

 もう1つの補助線として、1980年頃の流行語である【新人類】がある。これは従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている若者を示す言葉だ。

 ニュータイプがあくまで未来の仮想上の次世代人類であるのに対して、【新人類】は今そこにいる若者を示す言葉だ。表面的には、新しい人類を示すニュータイプという語と、【新人類】は非常に近い関係に見えてしまう。本来はまるで別物だが、直感的に似たようなものとして捉えてしまうと、そこからニュータイプは遠い未来の誰かのことではなく、我々のことだと考えることを可能にする。

 繰り返すが、ニュータイプは遠い未来の仮想上の新しい人類であるのに対して、【新人類】は1980年頃の実在の若者であり、同じと見なすことは全くできない。しかし、理屈を超越して分かってしまう能力があれば、その差は消失してしまう。

考察 §

 大人と無条件に見なされる年代で大人とは言えない精神を持つ者はかなり多い。それはオタクには限定されない。しかしながら、集団である層がまとめてそのようなタイプの者達という事例は少ない。オタクという集団の場合、ニュータイプの誤った受容が、集団で彼らを間違った認識に導いた可能性があるのでは無いか。

 つまり、【新人類】という概念をバックに背負って万能感を持つ子供が機動戦士ガンダムを見ると、あたかもニュータイプが自分であるかのように思えるということだ。その結果として、【我々は既に新しい人類に進化したので、旧人類になるための成長への要請は不要】と見なすことができる。しかしながら実体はただの子供なので、【成長への要請】は消えず、ある年齢層を越えると、【成長への要請】は【社会からの排斥要求】に変化する。

 その原因は、少し難しいことを語りすぎた機動戦士ガンダムという作品の問題とも言えるし、機動戦士ガンダムという作品を自分たちに都合の良いように再定義してしまったオタクの問題とも言える。

 この認識は、異常とも言えるガンダム人気の理由を解釈可能にする。

 オタクのガンダム人気は異常だが、特にファーストガンダム人気の高さは異常だ。たとえば模型店に行けば軍艦や飛行機の模型を差し置いて、ガンダムだけで半分近いスペースを占有することも珍しくない。しかも、その中核商品は未だにリニューアルされ続けるファーストガンダム商品だ。

 つまり、彼らは思想的なバックグラウンドとしてのガンダム特にファーストガンダムを手放すことができない。大人になることの拒絶という行為を正当化してくれる思想性の原泉はそこにあるからだ。

 しかしながら、それは【拡大された誤読】に過ぎない。ニュータイプは子供の万能感を肯定する思想ではないのだ。

 では【拡大された誤読】が多くの人たちを突き動かして1つの巨大なシステムを作りあげることなどあるのだろうか?

 それはある。歴史は【拡大された誤読】で一杯だ。そのような意味で、オタクの振る舞いはなんら奇異ではない。しかし、奇異ではないからといって、社会から肯定されるわけでもない。それはまた別の問題である。

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オタクはいかにしてニュータイプの受容を誤ったのか・そのメカニズムの考察

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前提 §

 機動戦士ガンダムで語られた「ニュータイプ」という概念は、現在の人類とは異なるいわば新人類である。つまりは人類の種としての成長である。

 しかしながら、子供が持つ万能感と結びつくことによって、【成長の拒絶】を肯定する思想に化けたのではないか、というアイデアを示すために本稿は書かれた。

ニュータイプの表現 §

 ニュータイプの表現は機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)によれば、【宇宙時代の要求に対応するための知覚の拡大】となる。特に肉体が強くなるとか、あるいは物体を動かす能力を手に入れるわけではない。ただ、離れた誰かや物事のことが良く分かったり、相互理解が進むことがニュータイプの能力とされる。

 このことは、たとえば三角関係の解消能力を意味しない。シャアを愛してしまったララァは、アムロが出現しても簡単に乗り換えることはできない。

 結局の所、ニュータイプの能力とは【分かってしまう】ところまでで、そこから先は別の問題である。

子供の特質 §

 子供と大人の境界線をどのように認識するのかは難しい問題であり、様々な考え方がある。しかし、ここでは万能感というキーワードで両者を区分してみよう。子供とは、難しい問題を全て親に押しつけて、知識経験の不足から、自分は万能の存在だと思うものだ。従って、地球を救うスーパーヒーローにも無条件で感情移入できる。

 それに対して、大人は根拠の無い無制限な万能感を持たない。実際にやってみてダメだったという経験を持つからだ。それにも関わらずそれをやってのける他人も目撃しているかもしれない。だから、大人は地球を救うスーパーヒーローよりも、組織の軋轢の中で苦悩するサラリーマンに感情移入できる。

 従って、この定義で言えば【地球を救うスーパーヒーロー】を喜んで見ている者達は、たとえ肉体年齢が大人であっても、本質は子供である。

子供とニュータイプ §

 ニュータイプは、分かるはずがない遠隔地での出来事が分かってしまうのである。

 これに対して、子供も、分かるはずがない問題の結論が分かってしまうのである。

 もちろん、子供が分かってしまった結論はたいてい正しくない。子供は【お父さんがあれを買ってくれないのは給料が少ないからだ】と分かってしまうかも知れないが、実際は子供に【我慢】を教えるためにあえて買わないだけかも知れない。

 ここでポイントになるのは、【途中経過をすっ飛ばして結論が分かってしまう】という特徴の類似性だ。その点でニュータイプと子供は似ている。

 つまり、【新しい世代を担う新しい人類】という概念と、【これから成長して大人になるべき子供】は混濁し、1つの錯誤が発生する。

 その結果、【我々は新しい人類である】【成長して大人になれというメッセージは退化の要請である】【成長への要請は、新しい人類を去勢して、既存の古い秩序に取り込もうとする陰謀である】といった認識に結びつきやすいのではないか。

 しかしながら、ニュータイプはあくまで宇宙に人類が居住する宇宙世紀の時代的な必然であり、しかもそれはフィクションでしかない。今の【我々】がニュータイプになれる理由は何もない。そういう意味で子供は子供であり、何を信じるとしても結果的に【子供は大人になれ】という社会からのメッセージが消えるわけではない。

 しかしながら、このメッセージはある世代を境に消えてしまう。ある程度の年齢に達したらもう子供であるはずがないと見なされるからだ。しかし、【見なされる】は【大人である】の同義語ではない。実際に大人とは言えない大人は大勢いるし、それはオタクに限定されない。

新人類問題 §

 もう1つの補助線として、1980年頃の流行語である【新人類】がある。これは従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている若者を示す言葉だ。

 ニュータイプがあくまで未来の仮想上の次世代人類であるのに対して、【新人類】は今そこにいる若者を示す言葉だ。表面的には、新しい人類を示すニュータイプという語と、【新人類】は非常に近い関係に見えてしまう。本来はまるで別物だが、直感的に似たようなものとして捉えてしまうと、そこからニュータイプは遠い未来の誰かのことではなく、我々のことだと考えることを可能にする。

 繰り返すが、ニュータイプは遠い未来の仮想上の新しい人類であるのに対して、【新人類】は1980年頃の実在の若者であり、同じと見なすことは全くできない。しかし、理屈を超越して分かってしまう能力があれば、その差は消失してしまう。

考察 §

 大人と無条件に見なされる年代で大人とは言えない精神を持つ者はかなり多い。それはオタクには限定されない。しかしながら、集団である層がまとめてそのようなタイプの者達という事例は少ない。オタクという集団の場合、ニュータイプの誤った受容が、集団で彼らを間違った認識に導いた可能性があるのでは無いか。

 つまり、【新人類】という概念をバックに背負って万能感を持つ子供が機動戦士ガンダムを見ると、あたかもニュータイプが自分であるかのように思えるということだ。その結果として、【我々は既に新しい人類に進化したので、旧人類になるための成長への要請は不要】と見なすことができる。しかしながら実体はただの子供なので、【成長への要請】は消えず、ある年齢層を越えると、【成長への要請】は【社会からの排斥要求】に変化する。

 その原因は、少し難しいことを語りすぎた機動戦士ガンダムという作品の問題とも言えるし、機動戦士ガンダムという作品を自分たちに都合の良いように再定義してしまったオタクの問題とも言える。

 この認識は、異常とも言えるガンダム人気の理由を解釈可能にする。

 オタクのガンダム人気は異常だが、特にファーストガンダム人気の高さは異常だ。たとえば模型店に行けば軍艦や飛行機の模型を差し置いて、ガンダムだけで半分近いスペースを占有することも珍しくない。しかも、その中核商品は未だにリニューアルされ続けるファーストガンダム商品だ。

 つまり、彼らは思想的なバックグラウンドとしてのガンダム特にファーストガンダムを手放すことができない。大人になることの拒絶という行為を正当化してくれる思想性の原泉はそこにあるからだ。

 しかしながら、それは【拡大された誤読】に過ぎない。ニュータイプは子供の万能感を肯定する思想ではないのだ。

 では【拡大された誤読】が多くの人たちを突き動かして1つの巨大なシステムを作りあげることなどあるのだろうか?

 それはある。歴史は【拡大された誤読】で一杯だ。そのような意味で、オタクの振る舞いはなんら奇異ではない。しかし、奇異ではないからといって、社会から肯定されるわけでもない。それはまた別の問題である。

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