「1月1日はTOHOシネマズの割引日なので、見てきましたよ」
「要するにロッキーだろう?」
「そうだ」
「で面白かった?」
「いろいろな意味で面白かった」
「いろいろな意味とは?」
「この映画、実はシナリオ的には破綻していて、足りない要素がいろいろあるのだが、それにも関わらず見終わった後に十分な満足感を客に与えていて、あまり不満を残さない。実に興味深い作り方だ」
「いったい何が足りないんだい?」
「主人公は実質的に本当の挫折を経験していないし、ヒロインやロッキーの病は、単に【病である】というだけで物語的に何の役割も果たしていない。母親が主人公を許す理由も実は良く分からないまま。ロッキーら大人達の言動も、実はよく見ると【本当の大人や年寄りはそんなこと言わないよ】的な発言が多い」
「でも、それでいいわけ?」
「そうだ。最終的に不当な挑発とそれをはね除けるための努力の物語に収録していき、頑張って苦境をはね除けました……という話になるからだ。最終的に優勝しないというのも映画に説得力を与えている。試合に負けて勝負には勝ったという結末なので、いくら努力したとしても経験が足りない新人が勝ってしまう問題からは上手く逃げている」
「つまりなんだい?」
「まとめれば、【上手い】ということだ。映画をうまくまとめてある」
「そこが面白いわけだね」
音楽の問題 §
「走っている主人公にバイクが併走する場面での、音楽が上手く映像に合っていることや、スタッフロールの構成の上手さなど、音楽が光った。それは音楽が良いという話ではなく、映像を含めて総合的な構成が非常に上手いのだ」
「そこも長所?」
「そう。スタッフロールがこれだけ楽しかった映画は滅多に無い」
「スタッフロールの音楽鑑賞家が来たよ」
