「自転車漕いで行ってきたよ」
「内容は?」
「長谷川町子、毬子姉妹の主に絵がいっぱい」
「サザエさんということ?」
「いや、普通の絵画に近いもの」
「それで感想は?」
「面白かった」
「どこが?」
「アートに関しては素人だと思うが、好きなんだね。作品がちゃんと作品になっている。突っ込む余地があると言えばあるけど。でも作品になっている」
「それで?」
「そして、時々心の闇が口を開けていてな。見ていると心の屈折が絵を通して語りかけてくるのだよ。いくら前に出ても周囲は闇。前に出ることを望むが恐い。出てしまっても、不安ばかり」
「ずいぶん楽しそうだな」
「円満な人格が産み出した円満な作品より面白いだろう」