「ハッと気付いたのだ」
「何に?」
「この歌詞」
変わらないで 哀しい大人に
自分に 負けるよな
君は 君じゃない
「つまりなんだい?」
「無責任で嘘を付く哀しい大人がいくらでもいるから、そういう大人にならないでくれ、と言っている。ではなぜそんな大人が産まれるのか。それは自分に負けたからだという。自分負けたら既にその人はその人らしくない。そのように言っている」
「それで?」
「大人になることを拒絶した者達がオタクであるとすれば、この歌詞の解釈は違う」
「どんな風に違うの?」
「大人は哀しい存在だから変わらないで永遠に子供でいてくれ、という解釈になる」
「なんてこった! ちょっとニュアンスを変えるだけでそう読めてしまうのか!」
「ではなぜそうなるのか」
「どうして?」
「自分に負けてるからだろう」
「既に君らしい君ではないが、それに気づかないでゾンビのごとく同じ行動を繰り返しているわけだね」
「結果として哀しい大人になっている」
「なるほど。歌詞は解釈次第で【歌詞に沿って行動していたはずが180度逆に見られる】場合もあるわけだね」
「そう。こういうものは全てを語らず読み手が補完するものだから、いくらでも意味が変化しうる。その結果として180度違う解釈が対立する場合がある。そして、作り手はたいてい【正しい解釈】をジャッジしない。最初から受け手の感性を受け入れることが前提だからだ。まああまりにも極端に逸脱されてしまうと意見されることもあるがね」