「まず第1に、邦題が完全に嘘。原題はThe Legend of Tarzanで生まれ変わったりするようなニュアンスは全くない。そもそも、内容的には普通の小説版ターザンで、何かと大幅に仕切り直すようなニュアンスはない」
「ふーん。それで?」
「うん。だからね。ターザンのファンには二種類あって、ジャングルで雄叫びを上げると動物が集まってきて悪い密猟者をやっつける野生児ターザンを望む人と、不幸にして類人猿に育てられたイギリス貴族グレイストーク卿を望む人のギャップは根深い。で、【違う。そうじゃない。流ちょうの英語を喋ってフランス語も理解する立派なイギリス貴族なんだ】という人のための映画がこれなのだろう。海の向こうで作られた映画なのに、そこはシンパシーを感じて好感した」
「どこで分かるの?」
「始まってすぐ、【おれターザン、おまえジェーン】的な振る舞いを期待する男に対して、あっさりとグレイストーク卿がノーというのだよね。それではっきり分かった」
「中身は面白かった?」
「面白かったぞ」
「どれぐらい?」
「今日はシン・ゴジラ、ターザン:REBORNの順で映画をはしごしたがね。シン・ゴジラの金の掛かった特撮と本物で描かれる現代兵器の戦闘よりも、ターザンの19世紀の兵器の戦闘の方が迫力があった。半裸の現地人の黒人達が銃を持って襲撃する迫力の凄いこと凄いこと」
「なんてことだ」
「船の描写も良かった。河川用の外輪船なんか、最後はガトリングで穴だらけにされて蒸気の圧力を上げられて最後は大爆発。蒸気機関車も良かったね」
「他には?」
「ストーリーも緩急付いて良かった。なんか良く分からない映像が流れているなと思うこともあるが、ちゃんとあとで意味が分かるようになっていたし」
「劇場はどんな様子だった?」
「ほとんど満席。まあ座席数が少なかったけどね。もっとも、スタッフロールが始まるとすぐに立っちゃう人が多かったのは、野生児ターザンを期待して裏切られたと思ったのかなあ。貴族のグレイストーク卿を期待した人には良かったと思うよ。ジェーンがさらわれて追いかける、といった筋書きは小説版ターザンらしいという気がしたし」