「興味深いコントラストに気づいた。理屈の物語と共感の物語だ」
「ヤマト2199は共感駆動の物語であり、共感できた者は感動出来るができなかった者は置いて行かれて白ける……という話は聞いたような気がするな」
「そう。ヤマト2199は、旅をする理由付けも戦う理由付けも弱い。状況に共感できるか否かで、客の反応が変わる」
「それがどうした」
「その話をしたいわけではない」
「なら、なんなのだ」
「実はSBヤマトこそ対極の【理屈の物語】であるからだ」
「では、SBヤマトはどこが理屈なんだい?」
「旅をする理由、戦う理由が割とシンプルで明快。理解するために共感というステップを踏むことは要求されていない」
「たとえば?」
「理解不可能な異質な侵略者が存在し対話もほぼできない。戦う以外に生存の方法は無い、というのが明確に示されるのがSBヤマト」
「分かった。芹沢のアホがムラサメに撃たせなければ戦う以外の方法があったかも知れないヤマト2199とは理由付けの明快さに差があるわけだね」
「そういう意味で、映画わが青春のアルカディアも【理屈の物語】だ」
「どこに差がある?」
「SBヤマトは軍人の弟だから物資を横流ししてもらえると言われて物資の欠乏状況が描かれる。わが青春のアルカディアも、いきなり食券もらって食えるときに食わないと食い物はないと言われて物資の欠乏状況が分かる。ところがヤマト2199はそういう明快な描写がない。単に暴動が頻発しているだけで衣食に問題があるようには描かれていない。佐渡先生がカストリ酒と言っていても、単に言っているだけでカストリ酒が出てくるわけではない。堂々とカストリ酒とは違う酒を人前に持ち出して会ったばかりの若者に勧められる程度にはゆとりがある。描写に緊迫感がない」
「その差が、理屈の物語と共感の物語の差なのだね」
「まあそうだろう」
「理屈の物語なら【そんな状況に共感はできないが、そこから地球を救うために旅に出るという理由は分かる】となるが、共感の物語だと【共感できない】だけで終わっちゃうわけだね」
オマケ §
「僕らは漠然と同じ価値観を共有し、同じものを面白がり、同じ共感を共有している……という漠然とした前提がオタクの本質だとすればヤマト2199はオタク的だ。しかし、SBヤマトもわが青春のアルカディアもオタク的ではない」
「それは何を意味するんだい?」
「SBヤマトとわが青春のアルカディアは、イマイチ評判が良くない理由がよく分かる」
「じゃあヤマト2199は?」
「毀誉褒貶が激しい。共感できたかできなかったかで評価が真っ二つに割れるからだ」
オマケ復活篇 §
「で、ヤマト復活篇は?」
「要するに日本が沈没しそうなので大船団で逃げ出したらマラッカで海賊が襲ってきたから戦うという話で、実はこれも話が理屈っぽい」