この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック
この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック
『この世界の片隅に』製作委員会
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¥ 1,593

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2016年11月24日
トーノZERO映画感想total 405 count

感想・映画「この世界の片隅に」【ネタバレ注意】

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

「やっと見ることができた」

「客の入りはどうたい?」

「満席ではなかったし、空いた席も多かったが、平日昼間の雪の日の二子玉川というロケーションを考えれば、劇的な客の入りと言って良いだろう。ちなみに、本当は祭日の新宿の割り引き日に見ようと思っていたのだが、前夜予約サイトを見るともう満席だったので断念した。これは、かなりのヒット作と言って良いのではないか」

「今年は意外なヒット作として、シン・ゴジラ、君の名は。、この世界の片隅にの3本があると思うけど、君はどれが最も良かった?」

「文句なく【この世界の片隅に】が良かった」

「それはどうして?」

「シン・ゴジラは思想がトンデモだし、君の名は。は破綻が多いし、特に大きな欠陥を抱えていないのはこの世界の片隅にだけ……って話ではなく、単純に作品の内容が自分の胸にストレートに収まったのはこの世界の片隅にだけなので、これを推す。個人の感想としては事実がそうなのだから、そうとしか言えない」

「つまり、シン・ゴジラは個人的には却下。君の名は。は別に有害ではないし綺麗に終わったので、破綻は多いがあっても構わない。その2つに対して、この世界の片隅には肯定的に受け止めたってことだね」

「そうだな。肯定的に受け止めた」

「どこを最も肯定する?」

「主人公のすずさんはね。最初けっこう可愛いのほほんとした顔をしているのだがね。でも、片手を失い、敗戦を経験して大人の顔になる。大人になる代償としてはあまりにも大きいが、大人になってから理解してももう手遅れ。その手遅れ加減が説得力になるわけだ」

「ストレートな成長物語として評価するわけだね」

「それだけではないぞ」

「というと?」

「実は、原爆の炸裂シーンが存在しない。単にピカッと光って、轟音で家が揺れて瓦が落ちるだけ。まあ、広島からみた山向こうならそんなものだろう。圧倒的な破壊描写を見せ場として用意していない。ただ、淡々と、すずさんの視点から見たであろう光景だけを描いている。だから、実は不発弾として落ちた爆弾が炸裂する描写の方が強烈。あれは、すずさんの間近で起こったからだ」

「それに何の意味があるの?」

「つまりさ。核兵器核兵器と馬鹿の一つ覚えで叫んでいる阿呆は世の中に多いが、核兵器なんか使わなくても悲惨なことはいくらでも起こせる。そういう、本来の当たり前をきちんと描いてあって、原爆が当然登場する地域と年代を描いていながら的確」

「話はそこがメイン?」

「いや、話が終戦をまたぐのも良い。戦艦大和が沈んで負けても止む無しと覚悟するのは映画的な発想で、当時の一般人はそんな光景は見ていない。やはり、敗戦は衝撃だがそれでも生きていかねばならない。戦後の生きるダイナミックさまで話が続いたのは良いことだ。もっとも、永遠の0でも、戦後まで話が続いているのにそこを評価する人をあまり見かけないし、つまらんことではあるがね」

「他には?」

「ビジュアルな描写面でいえば、いっぱいあるよ。自分はこの当時の広島や呉の描写の正しさを判定できるスキルはないのだが、おそらくもの凄く膨大な資料を調べているはずだ。ダブルルーフと切り妻の混在客車列車編成とか、当時のあのあたりでそれが走っていたのかは知らないが、かなり調べないと描けない描写だろう」

「細かいな」

「この映画は、おそらく解説抜きには理解できない描写が非常に多いと思うが、それでも良い」

「なぜ良いの?」

「なぜかと言えば、解説されるべきは【設定】ではなく【過去の事実】だからだ。当然、それが何かを知っている人は多くいて、彼らは映画の詳細を一切知らなくても解説できる。だからこの映画はこの世界の片隅しか描いていないが、もっと広い世界がその周りには広がっている。それらを知る者達はもともといたわけだ」

「シン・ゴジラのマニアックさは設定に過ぎないが、この世界の片隅にのマニアックさは過去の歴史に立脚しているのだね」

「強いて1つ言えば、広島か呉駅か忘れたが、終戦の前に駅の前に丸い穴が半円形に並んでいる描写はおそらく対空陣地。高射砲か何かが収まる予定の穴だろう」

「過去の航空写真で高射砲陣地を探す男が来たよ」

それはさておき §

「それはさておき」

「まだあるのかよ」

「この映画、実はビジュアル表現が写実的でありながら写実的ではない」

「どんなことだい?」

「かなり写実的にリアルに描いているのが基本にあるのだがね。ところが、心理描写的な映像や、すずさんが描く絵と地続きの描写、更には事実ではあり得ない描写も出てきて、どこからどこまでが作中の事実なのかはっきりしない。そこがクールだ」

「それが良いのかよ」

「そうさ。だから解釈が一つに決まらない。何が起きているのか解釈に幅がある」

「その幅は良いもの?」

「良いものだ。見た者は主体的に自分の解釈を確定しなければならない」

「そこも良いわけだね」

「そうさ。価値がある」

カウンターとしての価値観 §

「国が滅びると言われても実感できない……と呟いているTwitterの呟きを見たことがあるが、国が滅びるというのがどういうことか描かれている」

「国が滅びることの意味が分からないのは、単に勉強不足ってことだね」

「それから、戦争が個人に何をもたらすのかもきちんと描かれている」

「暢気に【XX国は悪党だから成敗してやれ】みたいなことを口走る馬鹿は多いが、実際に戦争が始まったら何が起こるかはぜんぜん分かってないわけだね」

「そうさ。たとえ勝ち戦でも敵機が侵入して爆弾を落とすこともある。その場合、誰かの家の上に落ちてくる場合もある。君の家の上かもしれない。まして勝てる保証なんてない。負け戦なら、どんどん民家も燃える」

「燃えなくてもいろいろな労役に駆り出されて、防空壕を掘って、港の絵を描いただけでスパイ容疑となって憲兵が来るわけだね」

「そうさ。軍港を見に行ってあれは大和、あれは利根……みたいなミリタリーオタク的な振る舞いをすれば、いくら戦争賛成でもスパイ容疑さ」

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「やっと見ることができた」

「客の入りはどうたい?」

「満席ではなかったし、空いた席も多かったが、平日昼間の雪の日の二子玉川というロケーションを考えれば、劇的な客の入りと言って良いだろう。ちなみに、本当は祭日の新宿の割り引き日に見ようと思っていたのだが、前夜予約サイトを見るともう満席だったので断念した。これは、かなりのヒット作と言って良いのではないか」

「今年は意外なヒット作として、シン・ゴジラ、君の名は。、この世界の片隅にの3本があると思うけど、君はどれが最も良かった?」

「文句なく【この世界の片隅に】が良かった」

「それはどうして?」

「シン・ゴジラは思想がトンデモだし、君の名は。は破綻が多いし、特に大きな欠陥を抱えていないのはこの世界の片隅にだけ……って話ではなく、単純に作品の内容が自分の胸にストレートに収まったのはこの世界の片隅にだけなので、これを推す。個人の感想としては事実がそうなのだから、そうとしか言えない」

「つまり、シン・ゴジラは個人的には却下。君の名は。は別に有害ではないし綺麗に終わったので、破綻は多いがあっても構わない。その2つに対して、この世界の片隅には肯定的に受け止めたってことだね」

「そうだな。肯定的に受け止めた」

「どこを最も肯定する?」

「主人公のすずさんはね。最初けっこう可愛いのほほんとした顔をしているのだがね。でも、片手を失い、敗戦を経験して大人の顔になる。大人になる代償としてはあまりにも大きいが、大人になってから理解してももう手遅れ。その手遅れ加減が説得力になるわけだ」

「ストレートな成長物語として評価するわけだね」

「それだけではないぞ」

「というと?」

「実は、原爆の炸裂シーンが存在しない。単にピカッと光って、轟音で家が揺れて瓦が落ちるだけ。まあ、広島からみた山向こうならそんなものだろう。圧倒的な破壊描写を見せ場として用意していない。ただ、淡々と、すずさんの視点から見たであろう光景だけを描いている。だから、実は不発弾として落ちた爆弾が炸裂する描写の方が強烈。あれは、すずさんの間近で起こったからだ」

「それに何の意味があるの?」

「つまりさ。核兵器核兵器と馬鹿の一つ覚えで叫んでいる阿呆は世の中に多いが、核兵器なんか使わなくても悲惨なことはいくらでも起こせる。そういう、本来の当たり前をきちんと描いてあって、原爆が当然登場する地域と年代を描いていながら的確」

「話はそこがメイン?」

「いや、話が終戦をまたぐのも良い。戦艦大和が沈んで負けても止む無しと覚悟するのは映画的な発想で、当時の一般人はそんな光景は見ていない。やはり、敗戦は衝撃だがそれでも生きていかねばならない。戦後の生きるダイナミックさまで話が続いたのは良いことだ。もっとも、永遠の0でも、戦後まで話が続いているのにそこを評価する人をあまり見かけないし、つまらんことではあるがね」

「他には?」

「ビジュアルな描写面でいえば、いっぱいあるよ。自分はこの当時の広島や呉の描写の正しさを判定できるスキルはないのだが、おそらくもの凄く膨大な資料を調べているはずだ。ダブルルーフと切り妻の混在客車列車編成とか、当時のあのあたりでそれが走っていたのかは知らないが、かなり調べないと描けない描写だろう」

「細かいな」

「この映画は、おそらく解説抜きには理解できない描写が非常に多いと思うが、それでも良い」

「なぜ良いの?」

「なぜかと言えば、解説されるべきは【設定】ではなく【過去の事実】だからだ。当然、それが何かを知っている人は多くいて、彼らは映画の詳細を一切知らなくても解説できる。だからこの映画はこの世界の片隅しか描いていないが、もっと広い世界がその周りには広がっている。それらを知る者達はもともといたわけだ」

「シン・ゴジラのマニアックさは設定に過ぎないが、この世界の片隅にのマニアックさは過去の歴史に立脚しているのだね」

「強いて1つ言えば、広島か呉駅か忘れたが、終戦の前に駅の前に丸い穴が半円形に並んでいる描写はおそらく対空陣地。高射砲か何かが収まる予定の穴だろう」

「過去の航空写真で高射砲陣地を探す男が来たよ」

それはさておき §

「それはさておき」

「まだあるのかよ」

「この映画、実はビジュアル表現が写実的でありながら写実的ではない」

「どんなことだい?」

「かなり写実的にリアルに描いているのが基本にあるのだがね。ところが、心理描写的な映像や、すずさんが描く絵と地続きの描写、更には事実ではあり得ない描写も出てきて、どこからどこまでが作中の事実なのかはっきりしない。そこがクールだ」

「それが良いのかよ」

「そうさ。だから解釈が一つに決まらない。何が起きているのか解釈に幅がある」

「その幅は良いもの?」

「良いものだ。見た者は主体的に自分の解釈を確定しなければならない」

「そこも良いわけだね」

「そうさ。価値がある」

カウンターとしての価値観 §

「国が滅びると言われても実感できない……と呟いているTwitterの呟きを見たことがあるが、国が滅びるというのがどういうことか描かれている」

「国が滅びることの意味が分からないのは、単に勉強不足ってことだね」

「それから、戦争が個人に何をもたらすのかもきちんと描かれている」

「暢気に【XX国は悪党だから成敗してやれ】みたいなことを口走る馬鹿は多いが、実際に戦争が始まったら何が起こるかはぜんぜん分かってないわけだね」

「そうさ。たとえ勝ち戦でも敵機が侵入して爆弾を落とすこともある。その場合、誰かの家の上に落ちてくる場合もある。君の家の上かもしれない。まして勝てる保証なんてない。負け戦なら、どんどん民家も燃える」

「燃えなくてもいろいろな労役に駆り出されて、防空壕を掘って、港の絵を描いただけでスパイ容疑となって憲兵が来るわけだね」

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