「実は古代論で大きなブレークスルーが得られた」
「それはなんだい?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトは古代の脳内に展開される夢のようなもの。虚構。そのようなものだと解釈するとすっきり解釈できることに気づいた」
「つまりなんだい?」
「テレサとズォーダーは古代の人格の矛盾したある種の側面が具現化したもの。古代の善なる心の具現化がテレサで、好戦的な心の具現化がズォーダーだ」
「それはインサイドヘッド的な表現かい?」
「ある意味ではそうだ」
「それで?」
「古代の善意は、古代の好戦的な心に捕らわれている。善意がSOSを放ってくるので、それを解放しに行かねばならない」
「じゃあ、デスラーは?」
「古代の第3の心。復讐に捕らわれた過去の心だな」
「復讐鬼か」
「しかし、既にデスラーも古代も復讐の空しさは知っている。だから、私の心は君たちに近いと言って死ぬ。復讐心の死だ」
「ふむふむ」
「しかし、古代の復讐心は死ぬ間際に要らぬ置き土産をする。それは【まだ戦う手段がある】という戦いへの誘いだ。復讐心は間違いだと分かっていて自ら消えていくが、戦いを否定したわけではない。大義のためなら戦うべきだという、善意に敵対する戦闘の意欲が残される」
「それで?」
「古代は白色彗星と戦ってしまい、何もかも失うが、敵は滅びない。そこで、古代は武器を取ることをやめ、自分の命をズォーダーに差し出すことに決める。そこで古代の善意であるテレサが合流して古代は宇宙と一つになる。つまり、【宇宙と一つ】とは分裂した古代の人格が一つに統合されることを意味する」
「テレサもズォーダーもデスラーさえも古代の中に統合されて一つの人格に戻る戻ることができるわけだね。では、森雪はどうなる?」
「古代の中で森雪は死ぬ。古代の中のズォーダー的側面は森雪の存在を否定するからだ」
「ふむふむ」
「ちなみに、古代にとっての森雪に対応するのがズォーダーにとってのサーベラー。必然的にサーベラーは森雪と似たコスチュームの色違いを着ていることになる。更にデスラーの対応する位置にいるのはタランだが、実はタランは森雪相当ではなく島大介相当のポジションにいる」
「復讐鬼古代の後席は島大介ってことだね」
「問題は斉藤と藤堂のポジションだが、これは古代を間違った場所に誘導する誘惑者として存在する。彼らは基本的に嘘つきだ。しかし、地球と宇宙のために働けという誤った美徳を掲げる。その結果、古代は惑わされてしまう」
「斉藤から多弾頭砲を頼むと言われてホイホイ持って行ってしまうが、本当はそこで一考すべきだったわけだね」
「そうすると防衛会議とは何か。復興した地球とは何か。それも気になる」
「復興した地球すら虚構?」
「そう。1年であれだけ復興するのは無理だろう……と思うならば、あれも古代が見た幻視としての復興した地球であって、現実の地球はまだ復興途上だろう」
「なるほど。復興計画そのものが古代の気に入らないとか。そんな感じ?」
「かもしれない」
「じゃあ防衛会議は?」
「あれは古代の中の内向きの心なんだ」
「それはどういうことだい?」
「分裂した他の自分を探しに行くよりも、現状を維持したいという弱い心の象徴だ」
「ではアンドロメダは?」
「あれは拡大されたヤマトの後継者だな。ヤマトがガミラスを滅ぼしてイスカンダルに行ったように、アンドロメダは白色彗星を滅ぼしてテレザートに行こうとしたが内向きの心がテレザート行きを否定し、白色彗星に敗北させた。旺盛な戦闘意欲の象徴たるズォーダーには内向きの心では勝てないのだ」
まとめ §
「ということは、さらば宇宙戦艦ヤマトとは古代の心の中の旅に具体的なイメージを与えたものであって、実際には誰も死んでいない?」
「そういう解釈を取るならな。全ての矛盾は解決する。古代の心象風景の中ではそうだった……で終わる」
「白色彗星も存在しない?」
「存在しない。テレサも存在しない。デスラーも既に死んでいて、今更出てくることはない。ヤマト乗組員全員でクーデターなどというあり得ない展開も起きない。嘘を付く藤堂もいなければ、古代をあたまごなしに否定する防衛会議も存在しない」