「以前、ファンの愛情を費やした金額で計るのはおかしい……という趣旨のことは言ったがね」
「うん」
「でも、世界はそれに逆行しているらしい」
「どうして?」
「アニメにはもう商品力がないから、マーケットを広げる余地に乏しい。だから、どうしても、ビジネスが小さくなる。小さくなった分を埋め合わせるために、既存のファンを出費額で競わせてもっと金を出せるしかない」
「オマケが店ごとに違うから、同じブルーレイを何枚も買ったりするわけだね」
「それもある。他には限定品を用意して並ばせるとかね」
「それで?」
「しかし、最大の本質はアニメそのものが失速しつつあるのが最大の問題」
「なぜ失速しつつあるの?」
「業界のトップが過去の成功体験にしがみついて、そこから脱却できなくなっている」
「身も蓋も無い分析だ。可能性とか実力とか、そういう問題ではないんだね」
「そうだ。まだ優秀な人材は業界にいくらでもいるが、彼らが本当の意味で活躍できるチャンスは狭くなる一方だ」
「そうすると、ファンの捉え方も変化するわけだね」
「そうだな。かつて、コアなファン層は、ファン層を拡大するための起爆剤のような存在だった。しかし、今は搾り取れるだけ搾り取る存在になっている。今一つ広がりは見えてこない」
「でもさ。そんな立場になって脱落する人もいるんじゃないか?」
「当然だ。ただ、脱落した人は多くを語らないだろう。【オレ、ブルーレイ買ったんだ。ほらほら見て見て】とネットで騒ぐ人は多いだろうが、買わなかったことを騒ぐ人はあまりいない」
「つまり、君も脱落組なんだね?」
「そうだな。でも、考えて見れば昔からそもそも何でも買う人ではなかったし」
「昔を語ってくれよ」
昔話 §
「さらば宇宙戦艦ヤマトまでは、割とヤマト関係で買えるものは全部買う主義でいたような気がするが、実はそうでもなかった」
「どんな感じで?」
「当時、LPのドラマ編は買っていない。全話の録音テープがあれば、ダイジェストの物語は無くてもいいだろう。という判断があった。何でも買ってはいなかったのだ」
「じゃあドラマCDがオマケについても2枚目のブルーレイは買わない主義?」
「そもそも2202第1章は配信で買ったから1枚目のブルーレイもないけどな」
「ぎゃふん」
「まあ、そのドラマCDが良いか悪いかも別問題だがね」
「えー。人気あるじゃないか」
「某所で少し聞いたけど、いじめをお笑いと勘違いしたような内容でアレなら要らんがね。まあ話が脱線した」
「じゃあ君はもともと脱落組?」
「そう。おいらはもう、脱落組だが、昔からそうだったと言えばそうかもしれない」
「それは、いろいろなアニメのスタッフから【君は良いファンだ】という言葉をもらえなくても良いってこと?」
「うん。そう。まあ、そもそも肯定的に評価しているアニメが何本あるかという問題もあるけどな」
「それ以前にほとんどのアニメは見ていないわけだね?」
「それも真実だがな」
「結局、アニメの悪しきシステムを打破する起爆剤になることを期待したヤマトが、悪しきシステムそのものに取り込まれて残念というのが君の感想なのかい?」
「その感想はヤマト2199の頃から既にあったと思うよ」
「じゃあ、何か起爆剤になりそうなアニメってあるかい?」
「今どきのアニメとしては破格に良く出来ているアニメはいくつか見ているが、それらが起爆剤になるかと言えば、難しいだろう。渋すぎて」
「そもそもヤマトにしても、復活篇の劇場公開版は渋すぎてファンにもあまり支持されていない問題があるわけだね。DC版の方が支持されてしまって」
「まあ、復活篇は2009年だから今どきのうちに入れて良いかは微妙だがね」