「さらば宇宙戦艦ヤマトの謎は深い」
「いろいろ謎はあるね」
「しかし、最大の謎は結末だ。やはり、どう考えても繋がらないのだ」
「どこが謎なんだ?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトは基本的に物理力の戦いだ。ヤマトが白色彗星を崩壊させて都市帝国を露出されるのも物理力なら、完膚なきまでのヤマトを都市帝国で叩き飲めせるのも物理力なのだ」
「それで?」
「ところが【違う、断じて違う】のあたりから、突然精神力の問題に話が変化してしまう。そもそも命が武器というのも物理力としては意味をなしていない」
「なるほど」
「で、実は「さらば」の豪華本の桝田構成案を再度チェックしてみた。ほとんどフィルムと同じ流れで最後にヤマトで特攻して終わるから見逃していた。でも、実は違うのだ」
「何が違うんだい?」
「以下の2点が決定的に違っている」
- 沖田は【命が武器だ】とは言っていない。【ヤマトの命は尽きていない】と言っている。
- テレサが反物質の身体の破壊力を強調している
「つまりなんだい?」
「フィルム版のさらば宇宙戦艦ヤマトの結末は、非常に精神的な作りになっているが、実際はもっと物理的な力を重視した流れの方が筋が通る」
「つまり、最後の武器は古代の命ではなく、ヤマトの命ということだね」
「そう。扱いを間違えれば宇宙を消滅させうる波動エンジンを持ったヤマトをぶつければ、超巨大戦艦に勝てるかも知れない、という話なら物理力の問題として理解できる」
「テレサもそうだね」
「そうだ。フィルムだとテレサが一緒に行く理由が今一つはっきりしないのだ。精神的な理由が主だからだろう。だが、反物質の破壊力が一緒に行く理由ならそれはすっきり筋が通る」
「つまりなんだい?」
「さらば宇宙戦艦ヤマトの結末は微妙に変更されている可能性が高いとおいらは思う」
「どんな経緯だい?」
- 結末に関するリテイクが発生した
- リテイクの要旨は、物理力主体のドラマから精神力主体の観念的ドラマへの変更である
- オリジナルスタッフのスケジュールが十分に合わず、安彦良和主体でリテイクの作画が行われた
- リテイク及び安彦良和主体の作業に関しては、おそらく西崎氏の意向がおそらく強く反映している
「つまりなんだい?」
「仮に別の誰かによって作画された没テイクの資料がどこかにあっても驚かないぞ。まあとっくに処分されているような気もするが」
オマケ §
「仮想オリジナル版の結末はどんな風に理解すればいいんだい?」
「つまりね。おたくの大統領のロケットパンチサミットで、最強のロケットパンチは【ロケットパンチに自分も乗って一緒に殴る】になったようなもので、命を燃やすのはヤマト。古代は一緒に行って命を燃やすだけ」
「フィルム版は違うわけだね」
「そう。古代が命を燃やしに行く。ヤマトは古代を乗せた乗り物」
「そこが違うわけだね」
「そうだ。そして、テレサが一緒に行く理由は、仮想オリジナル版だと反物質の破壊力。。でも、フィルム版だと古代を見て感動したから」
「そこも違うわけだね」
「おそらくその2点が大きく違う。豪華本の桝田構成案と実際のフィルムの重要な相違点はそこ」