「ああ。日本のアニメ界から失われて久しいスピリッツを感じだような気がした」
「日本のアニメ界はこれを作れないの?」
「たぶん、作れない」
「作れる人材はまだいるんじゃないの?」
「いても客が受容しない。未来永劫ガンダムという狂った状況にどっぷり浸った日本アニメ界と、それを受容し続けて感性が鈍りきった客が、こういうものを評価できるはずもない」
「でも面白いの?」
「めちゃめちゃ面白い。面白いけど、今の日本のアニメにはこれを扱う力は無いだろう」
「なぜ【今の日本には】と言い切れるの?」
「だって、この主人公、ほとんどじゃりン子チエのテツだよ。暴力的で嫌われ者。できた娘と、重しになってくれるご隠居がいないテツ」
「かつて、日本のアニメでも描いたかも知れない何かではあるわけだね」
「そう。かつて日本のアニメにも、こういう部分はあったような気がする。でも、日本のアニメは、今は消毒されすぎてあまり見かけないような気もする」
「客も消毒を望んでいるってことだね」
「そう。今の日本でアパッチ野球軍はもう作れない。何より客があの泥くささを望んでいない」
オマケ §
「新感染が面白かったので、同じ監督だというので見に行って良かった」
「作品としての出来はどうだい?」
「確かに技術的に指摘したい箇所が無いわけではないが、そのあたりは物語の勢いが凄いからまあ取りあえず横に置ける」
「つまり、これでもいいわけだね」
「2013年の作品ということを割り引きけば、けっこう良いと思う」
「この映画を見て、アニメ関係者は作り手もファンも【真のアニメの後継者はどっちだっかた改めて考えてみろ】という感じかな?」
「いや、そんなことは考えないと思うぞ」
「なぜ?」
「理由はこの映画を見れば分かる。真実が暴かれたって、それを歓迎するか、それを受け入れるかは別問題だ」
「まさにそれがテーマの映画ってことだね」