「一応、気になったので見てきたが……」
「どうだった?」
「残念。よくある設定の羅列を物語と勘違いした作品だった。未来のミライやインクレディブル・ファミリーで当たり前のように行われている普通の物語作りが行われていない」
「具体的に問題はどこにあると感じた?」
「キャラクター造形が失敗している。子供が考えた大人、子供が考えたいじめっ子、子供が考えた頭の良い子供ばかりで、描写に奥行きがないし感情移入もできない。そういう立場の人間がそういう言動をするか?という疑問が出続けて感情移入できない。そもそも入る切り口が見つからない」
「問題はそこだけ?」
「物語全体が科学的な意味での整合性を欠いているのに科学を偽装するというよくある失敗パターンに陥っている。ファンタジーならファンタジーでいいんだよ。それなのに、無理をして科学的であるかのように偽装すると全体が破綻してしまう」
「あるいは、ファンタジー世界ならではのファンタジー科学だね」
「まあそうだな。そういうことをするなら、ファンタジー科学でもいい」
「結局、この映画は何だと思う?」
「原作は良く知らないから現象面だけで語ると、ジブリが欠落した穴を埋めるべく【ポストジブリ】競争が勃発しているのだと思う。細田守作品や、スタジオポノックなどもそうだね。でも、それだけタイトルが並んでひしめき合ってしまったら、それに値するスタッフが足りるわけがない」
「表面的な辻褄合わせで精一杯になる映画も出てくるわけだね」
「そう。ビジュアルや設定はそれなりに頑張っているように見えるが、目に見えない物語やキャラクターの性格設定などで劣化がより早く入り込んでくる感じだろうな。内情は良く知らないが」
「じゃあ、最後に一言でこの映画の感想を教えてくれよ」
「寝そうになったけど、お金を払った以上もったいないから必死に起きた」
「えー」
「結局主人公の少年が大人でもなければ子供でもなく、理屈は言うが科学的でもないことが問題だな。おかげで感情移入する切り口が見つからなかった」
「否定形ばかりで【ない】ばかり言っても分からないよ」
「だからね。キャラクターを掴めなかったの。形が把握できなかった。だから【XXではない】【XXではない】と否定形で語ることしかできないの」
「それは辛い……」