「人生に最後に買うヤマトグッズかなとも思うCD、【羽田健太郎生誕70周年 羽田健太郎:交響曲 宇宙戦艦ヤマト】が届いた」
「交響曲 宇宙戦艦ヤマトは何枚目だい?」
「たぶん4枚目ぐらい」
「えー」
「でも、新発見スコアによる第4楽章が少し違うバージョン」
「どこが違うんだい?」
「細部に違う箇所がいろいろあったような気もするが、気のせいと言うこともあるからな。あまり明確には断言ができない」
「それで?」
「たぶん締めくくり方が最大の相違なのだろう。オリジナル版は最後に宇宙戦艦ヤマトのテーマの一部を演奏して終わる。しかし、この発見スコア版はそれがない」
「それで印象が変わるのかい?」
「うん、けっこう変わる」
「どう変わるんだ?」
「オリジナル版は何があってもしぶとく最後には生き返るという意思が感じられて、まさに復活篇につながる」
「ではオリジナルスコア版は?」
「素直に終わってしまうのだ。地球は救われました、めでたしめでだしで終わり」
「で、君自身は個人的にどう思ったんだ?」
「2009年に確か池袋の芸術劇場で生演奏を聴いている。その時の印象は【新しい世界を切り開いてやる】という挑戦だった」
「で、このCDは?」
「まさにエンディングだ。これでおしまいだよ。最後にフィナーレを決めて後はもうない。そんな感じ」
「そんな印象で良いと思うのかい?」
「良いも悪いも思ったことはそういうことだ。違うことを言えば嘘になる。君は私を嘘つきにしないのか?」
「いや。そうじゃないけど。それはヤマト2202は宇宙戦艦ヤマトを殺したと言うことかい?」
「そうじゃない。2009年のあの勢いを殺したのは、実はヤマト2202ではなく復活篇のDC版とDC版に【やはり宮川音楽はいい】と褒め称えたファン達。本来復活篇に宮川音楽は使われているが他にも多くの音楽があったことがすっぽり抜け落ちていた。そこにはハネケンも含まれる」
「そこが君は物足りないのだね?」
「そうだな。復活篇サントラに入っている未使用戦闘曲とか素晴らしいと思うぞ。他のクラシックの名曲に良いものはいくらでもある」
「でも、ファンの多数派は拒絶したんだね?」
「まあ拒絶と言えば、完結編の時点で既に音楽を拒絶したファンはいたようだよ」
「うーむ」
「しかし、ファンは割と保守的かと思いきや、ヤマト2199や2202を見てあっさり旧作否定に走っちゃうファンもいるから良く分からないがな」
「じゃあ最終的にこのCDの感想をまとめてくれよ」
「うん。このCDの価値はレア度の高い未使用新発見スコアを演奏したことにあるが、未使用スコアがオリジナルより優れているかは別問題だ。やはり、当時実際に演奏されたバージョンが最も完成度が高いのではないだろうか」
「それは、旧作未使用エピソードを実現しても完成度はイマイチに見えるというヤマト2199の教訓にも似ているわけだね」
「レアな未使用曲、画稿、エピソードなどは本当にいろいろあって、単に時間の都合で落ちただけのものもあるし、品質も様々だ。レアだからといって優れているとは限らない。とはいえ、このCDには同じ曲を今一度やり直すという側面もあるので、スコアだけで切って捨てられるような問題ではないがね。同じ曲の部分でも【おっ】と思うところはあるよ」
「じゃあ結論は?」
「このCDは2009年の置き土産だと思うよ。2009年が【よう】と言いながら2019年に現れて【これは10年前の忘れ物】といって置いていったようなものだ」
「2019年のヤマトシーンとは関係ないわけだね」
「そう。もう関係することはできない。既に別の世界になってしまったのだ」
「どんな風に?」
「【是非次回作も彬良さんに】と言っているファンがいるヤマト2202世界と、大友さんが指揮棒を振るハネケン音楽世界はもう全くの別世界だよ」
「それは復活篇の続編があるとしたら、今のヤマトとは全く別の系統になるしかないってことかい?」
「そうだな。しかし、その【全く別の系統】がどのようなものか全く見えてこない。今のアニメ界でそれは作れない……と思ってもいいと思うよ。まあ2009年のアニメ界でも作れたかは怪しいと思うけどね、西崎義展さん抜きには」
「見苦しいだけだから、もうヤマトの続編は一切作るな、ってことだね」
「たぶん、今の日本のアニメ界には作れない。まあ作れる人はいると思うが、そういう人にバトンがまわる可能性はとても低いと思う」
「で、君はどうするんだい?」
「交響曲ヤマトの新しい演奏という話が出たら興味を持つかも知れないが、一般論としてヤマトは既に過去のものだな。自分が扱うものではない。アニメもしかり」
「えー」
「ヤマトにせよ、アニメにせよ、美しい思い出を胸の宝石箱にしまっておしまいにする」
「それは美しいのかい?」
「うーん、鋭い突っ込み」
オマケ §
むかしむかし
ヤマトはみんなでツッコミを入れる楽しいアニメだったのですよ
本当ですよ
本当ですよ
信じないかも知れないけれど