「思い出したので書いておく」
「なんだい?」
「なぜ川俣晶がドメイン名としてautumn.orgを使っているのか分かるかい?」
「さあ。理由があるのかい?」
「もちろんある。autumnとorgでは別の理由がある」
「まずorgの方を教えてくれ」
「時はインターネット黎明期。ドメイン名の個人取得が流行っていた」
「うん」
「.jpで終わる日本のドメインは割高だったが、アメリカのドメインは比較的安かったから欲しいと思ったのだ」
「piedey.co.jpは取得してるね?」
「それは会社用だ」
「じゃあ個人用は?」
「実は、アメリカのドメインは.comがブームになっていた。ネット企業が名前にドットコムを付けるのも流行っていた」
「"お名前ドットコム"的な?」
「そう。が、その時点で.comは既に取り尽くされていた。有力な単語や短い名前はほとんど取得が絶望的だった」
「それで諦めたの?」
「いや、.orgならまだ取れるぞ、という情報が出回ったときに【じゃあ行け!】という勢いでレジストリのフォームにautumnと入れてみたら、autumn.orgが取得できてしまった。こんなシンプルな一単語のドメイン名が.orgで安価に取得できる最後のチャンスだったと思うぞ」
「個人で?」
「ほぼ個人だが、形式上はautumn organaizationという組織が取得主体となっている」
「なるほど。orgの取得にはそういう経緯があったのか」
「次はautumnという言葉出てきた経緯だ」
「うん」
「自分の名前は川俣晶である。姓は川俣、名は晶(アキラ)である」
「親が大友克洋マニアだったの?」
「AKIRAじゃないよ。ってか、産まれたことは大友克洋のAKIRAなど影も形も無いよ」
「それで?」
「パソコン通信を開始する際に、ハンドル名を決める必要があったので、以下の連想で決めた」
「オータムを選んだ理由は?」
「季節の名前であって人の名前ではないから、他の人とかぶる可能性が少ないだろうと考えてのことだ」
「フォールにしなかった理由は?」
「fallにすると落下するという別の意味も入ってかぶる可能性が増えるので回避した」
「なるほど。選定理由はユニークネスってことだね」
「ただし、これは失敗だった。十分なユニークネスは確保できなかった」
「どうして?」
「autumnはアメリカでは女性の名前だったからだ。女性のオータムちゃんはいっぱい実在する」
「ダメじゃん」