「ダイソンスフィア!」
「大それたことを」
「リングワールド!」
「わー」
「ニーヴン!」
「それは書いてない。調子に乗るでない」
「てへ」
「感想は?」
「しかしまあ。小説・火星の地底世界バルシダーに出てくるマザーリング、マザースフィアがUQのパクリと言われる日がもうすぐ来そうだな」
「書かれたのは90年代なのにね」
「それ以前に、元を辿ればラリー・ニーヴンであり、フリーマン・ダイソンなんだけどね」
「確かに」
「小説家、遠野秋彦として、あえて一言感想を言えば、リングワールドと言わないためにマザーリングという用語を作ったが、UQはズバリ、リングワールドと言っちゃったね」
「感想が雲の上に行っちゃってるな」
「行けるだけの作品だからだよ」
「雲の上に行かない感想は無いのか?」
「あるよ。明石マキナという名前だけで猛烈に燃えたよ」
「ネギ先生のクラスのバスケットマン、明石裕奈の子孫だね。学園祭のゆーな☆キッドで銃の腕前も良い。その子孫が出てきて嬉しいのか?」
「バスケットマンとして戦いの道を拒んだ裕奈の子孫が戦っているのも確かに興味深いが、そこじゃない」
「じゃあ、なんだ?」
「マキナという名前だけで凄かった。たぶん、これは3つぐらいの意味が重ねてある」
「どんな意味だ?」
「まず、日本人の女の子っぽい名前として【マキ】が含まれ、更に【ナ】で終わる名前に見える。これが第1の意味。第2の意味は、裕奈の子孫であることを意識させる3文字で【ナ】で終わる名前」
「第3の意味は?」
「マキナはラテン語で機械を意味する単語だからな。ラテン語の呪文を多用する作品で、こんな単語を使って、ラテン語を意識していないわけがない」
「ジェイコブズ・ラダーで聖書を意識したり、ラテン語を意識したり、とてつもなく格調が高い作品だね」
「まあ、大多数の読者は【XXちゃんは俺の嫁】で終わるから恐くないよ」
「じゃあさ。明石マキナのマキナが機械だとすると、それにどんな意味があるんだ?」
「さあ。そこは分からないよ。物語はサプライズが大切だからね。何かあるかもしれないし、何もないかも知れない。単純に裕奈に似た単語を選んでいるだけかも知れないし、何か意味があるのかもしれない。それ以上は分からないよ」
「やはり感想が雲の上だ」
「じゃあ何を言えば良いのだ?」
「そうそう、メカはどうだい? 大艦隊」
「ナナオと三太とキリヱが乗ってきた自動車っぽい宇宙船は面白いよね。それから宇宙戦闘機隊の発進口が宇宙に対して開いているスターウォーズっぽい構造になっているのも興味深い。たぶん、密閉型格納庫だと、【宇宙船内だ】というビジュアルの説得力が足りなかったからだろう」
「宇宙が見えれば、良く分かるってことだね」
「まあ、普通に開いていると空気が全部逃げちゃうけどな。何かの超技術で気密はあるということで」
「他には?」
「あと、宇宙戦闘機がX-WingではなくY-Wingに似ているのはいいよね。あれをもっと洗練した感じ。あれが大編隊で発進していく描写は【おおっ】と思うよ」
「それでいいの?」
「実は、X-Wingはバランスが悪いんだ。翼を開くモーションが印象的だから主役メカをやれるけど、絵が動かないコミックだと単にバランスが悪いだけになる」
「だけどXとかYとか話をしていると、宇宙戦艦ヤマトっぽくはないね」
「たぶん、宇宙戦艦ヤマトの影響を受けた世代の赤松さんだから、違うことをやったのだろうという気がするし、それで良いと思う。そもそも、今どきの読者は宇宙戦艦ヤマトは知らないがスターウォーズは知っているのだろうと思う」