宇宙戦艦ヤマトの面白さを語るためには、ヤマトが世に送り出される前の状況に触れねばなりません。
今、アニメファンが当たり前だという状況が、当時は当たり前ではなかったのです。というよりも、アニメファンもオタク産業も、宇宙戦艦ヤマトが突破口となって成立したものであって、それ以前にそれに類するものが存在しなかったのは当たり前です。
それ以前にも、似たようなテイストを持った人種として、特撮ファンや、SFファンという人種が存在したことは事実です。しかし、現在のオタクのような広範囲で膨大な規模を持った人種ではなく、本当に特殊なマニア人種だったと言えると思います。もっとも、中身はディープで高度であったようで、現在のような薄くて広いオタク界と似たものではなかったようではあります。
さて、日本のテレビアニメは言うまでもなく、鉄腕アトムから始まりました。その後、アトムを模倣したモノクロのリミテッドアニメが増殖します。その時点で、アニメの題材となるものは極めて幅広く、戦闘機に変形するロボットの元祖とも言えるレインボー戦隊ロビンから、渋い大人向けの時代劇 佐武と市捕物控まで、様々なものが制作されていました。
その後、カラー化することによって、これらのアニメはパワーアップし、科学忍者隊ガッチャマンのような比較的高年齢層のファンも引きつけるような作品も作られます。
しかし、この勢いは徐々に衰えていきます。成功例と失敗例が積み重なることにより、スポンサーが好む企画というものが明らかになってきます。つまり、スポンサーは子供を相手に玩具を売りたいわけですから、まさに内容は子供騙しであることが求められていくわけです。
そのような流れの中で、画期的なアニメが生まれます。それはマジンガーZと呼ばれる作品で、ロボットアニメの元祖とも言えるものです。これは大ヒットし、多くの模倣作品が生まれました。ただしここで注意しなければならないのは、ガンダム以降のロボットアニメと、当時にロボットアニメはまったく異質な存在であったと言うことです。当時のロボットアニメは、ロボットプロレスとも呼ばれますが、要するに善玉と悪玉がいて、一対一で戦って善玉が勝つという、極めてプロレス的な作品群であったわけです。もしこれを戦争と考えれば、本気でやっていないのは明らかです。悪のロボットを2体以上同時に送れば、一体の正義ロボットでは阻止できません。そんなことは子供でも気付きます。最初から悪の敗北がシナリオに織り込み済みだからこそ、子供向けというよりも、子供騙しなのです。
その結果、アニメがつまらない時代が到来したのです。ある意味で、それまでアニメを見てきた者達は、飢えを感じていたと思います。子供騙しではない、まともなアニメを見たいという欲求が破裂寸前であったかもしれません。少なくとも、と~のはそうでした。
まさにそのとき。いきなり、ポッと我々の前にやってきたのが宇宙戦艦ヤマトであったわけです。
……続きます。
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