2002年04月18日
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ジオン軍小失敗の研究(3) ムサイに見る艦艇設計思想の不徹底

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 1年戦争の主役と言えばモビルスーツ・ザクということになりますが、当然ザクだけで戦争が出来るわけではありません。ザクを戦場まで運び、補給し、整備するための装備が不可欠と言えます。

 そのためにジオン軍がまったく新規に設計、建造したのがムサイ級巡洋艦です。

 しかし、ムサイが本当にザクを補助するという思想を徹底して設計されているかというと、大いに疑問があると言わざるを得ません。

 ムサイの戦闘用装備は、主に、搭載するモビルスーツ、ビーム砲、そして大気圏突入用機コムサイの3つであると言えます。建前上、ムサイの主力兵器は搭載したモビルスーツであって、ビーム砲はモビルスーツの支援用、そして、コムサイはモビルスーツを大気圏突入させるための装備であると説明されます。

 しかし、ミノフスキー粒子散布下での大口径ビーム砲を用いた長距離砲撃はほとんど命中を期待できないのは明らかです。その事実こそ、モビルスーツが主力兵器として有用さを獲得した理由であり、それを否定することは、モビルスーツ搭載艦としてのムサイの存在意義すら否定しかねません。

 実際に、ビーム砲を活用しようとすれば、敵との距離を縮めねばなりません。事実、勇猛にも敵に接近して沈められたジオン艦も珍しいものではありません。

 しかし、モビルスーツを運用するという観点から言えば、弾薬や推進剤を補給し、応急修理のできる母艦があればこそ、モビルスーツは最大の能力を発揮できるのだと言えます。それにも関わらず、母艦が前進して沈められるような事態があれば、モビルスーツは能力を完全に発揮できなくなってしまいます。

 言うまでもなく、艦艇の搭載砲は破壊力も大きく射撃可能弾数も多いものの、それによってモビルスーツを撃破することは極めて難しいと言えます。それに対して、モビルスーツは艦艇を撃沈するに十分な攻撃力を与えられており、十分な数のモビルスーツさえあればそれだけで戦闘に勝利するだけの力がありました。

 つまり、戦力としての価値から考えれば、艦艇の搭載砲よりもモビルスーツの方がはるかに大きいと考えられます。一方、モビルスーツの母艦としての艦艇の価値は大きく、これは戦闘において容易に失うわけにはいかない重要な要素であると言えます。

 そこから導き出される結論は明らかです。モビルスーツの母艦にとって、火力支援能力は無意味であるばかりか、それを活用としようとすれば母艦自身を危険にさらしてしまう危険な装備なのです。もし、ムサイからビーム砲を取り去り、その分だけモビルスーツの搭載機数を増やしたとしたら、より強力な戦力として運用可能であったかもしれません。

 また、コムサイについては、全ての作戦でコムサイが必要とされるはずがないにも関わらず、コムサイ専用にドッキングスペースが用意されています。つまり、モビルスーツと同格の装備として扱われていることを意味します。もし、モビルスーツ格納庫にもう少し余裕があればコムサイもそこに搭載することができたでしょう。逆に、コムサイ専用装備が不要になる分だけ、より多くのモビルスーツを搭載する余地が生まれたかも知れません。

 このようにムサイの実際の仕様を見る限り、モビルスーツの運用を配慮した艦とは言えても、モビルスーツ専用に特化した艦とは言い難いのが事実といえます。

 ムサイは、ジオン初の独自設計戦闘艦であるチベ級巡洋艦の成果を引き継いだジオン第2世代艦艇と言われますが、実際には第1.5世代と呼ぶ方が正しいかもしれません。小惑星帯の緒戦でジオン派遣軍を勝利に導いた火力優越主義を、自らモビルスーツの開発により否定したはずのジオン軍も、心のどこかで過去の勝利パターンを否定しきれなかったのかも知れません。

 しかし、過去から蓄積された資産が多い連邦軍と異なり、ジオン軍は引きずる過去も少なく、その気になればムサイを完全なモビルスーツ母艦として完成させることもできたはずです。事実、同時期に設計が開始された超大型空母ドロスは、極めて洗練されたモビルスーツ専用艦でした。もし、ドロスを、ムサイ程度の大きさにまでスケールダウンした母艦を量産していたら、戦争の流れが変わっていたかも知れません。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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