正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ケンタウルス・ステーション。それは、宇宙船の航行を安全に支援するために月-ルナツー間に設置された基準位置信号発信局です。海でいえば灯台に荘とする施設と言まする。土台は直径約2.5kmの小惑星をアステロイドベルトから引っ張ってきて現在の軌道に乗せたものでした。
似たような基準位置信号発信局は、あちこちに設置されていましたが、ケンタウルス・ステーションは、他のものとはちょっと違っていました。それは、ケンタウルス・ステーションが主にルナツーに入出港する軍艦を誘導するための軍事施設であったことと、内部に大きな空洞を持つことから、取り敢えず使わない装備を保管する倉庫として使われていたことです。
当初は十分に余裕があると思われていたルナツーですが、相次ぐ軍拡により手狭になり、性能評価の終わった試作機や、反地球連邦勢力から鹵獲した兵器など、もう要らないけれど棄てるわけにも行かないものは、順次ケンタウルス・ステーションに詰め込まれていきました。それと同時に、空間のゆとりを使って、研修施設としても使われていました。
さて、1年戦争開戦直後、ルウム戦役の勝利の勢いに乗ったジオン軍は、艦隊の一部を分派して、ケンタウルス・ステーションの破壊を目論みました。
通常、ルナツーからも遠くないケンタウルス・ステーションに小部隊を派遣するのは危険なことです。しかし、レビル将軍を捕虜にし、連邦主力艦隊が壊滅状態にある今、ルナツー周辺の支援設備を破壊してしまう好機でした。ルナツー本体には多数の大型砲が設置され、そこに接近するのは自殺行為でしたが、周辺施設なら話は別です。ルナツーに駐留する主力艦隊さえいなければ、怖いことはありません。
さて、3隻のムサイが接近してくるのを確認すると、ケンタウルス・ステーションは上へ下への大騒ぎになりました。しかし、事態を把握した頃には既にミノフスキー粒子のためにルナツーとの通信が途絶。ケンタウルス・ステーションは、どことも通信できない孤立無援のまま、ジオン艦隊を迎え撃たねばなりませんでした。
ケンタウルス・ステーション自身が持つ武装は、203mm要塞砲を全周囲に6門。補助用として、127mm速射砲を24門。そして、セイバーフィッシュの1個小隊3機でした。しかし、要塞砲は本来ケンタウルス・ステーションの周囲に配置された測距支援システムとリンクして射撃するもので、ミノフスキー粒子が散布された状態ではデータリンクが途絶、射撃不能状態に陥っていました。
速射砲は、目視照準による射撃も平時より訓練されていましたが、いかんせん、ムサイに立ち向かうには豆鉄砲と言わざるを得ませんでした。
そして、セイバーフィッシュが、ジオンの謎の新兵器に対して無力であるという話は、既にケンタウルス・ステーションにも伝わっていました。
完全に手詰まりかと思いきや。
ステーション内の研修施設から声が挙がりました。そこでは、開戦と共に急遽始まったパイロット増員計画に志願した者達が詰めていました。彼らは、娯楽のないこのステーションの中で、暇な時間は内部をうろついて過ごしていました。そこで、彼らは、使う当てもなく保管されていた作業ポッド群を発見していたのです。それは、小惑星帯のゲリラが使っていたもので、宇宙用の作業ポッドに大型のビーム砲やミサイルランチャーを装備したもので、1機1機は弱くとも、集団になれば正規の軍艦を撃沈するだけの力を発揮するものでした。それらは、海賊の手製であり、1機ずつ全て仕様が違っていました。そのため、1機だけ残して他を廃棄するということができず、20機以上が倉庫に眠っていたのです。これを使えば、ジオンと戦えるじゃないか、とパイロットのタマゴ達は主張しました。連邦の最新兵器と違って、ろくな支援設備もない状態で戦うことが前提にこれらの兵器なら、ミノフスキー粒子散布下でも戦う能力がありました。そして、実はパイロットのタマゴの多くは、連邦軍に入隊する前は、コロニー建設現場で作業ポッドを飛ばしていた者達だったのです。
ステーションの司令官は短い時間考えた後に、彼らの出撃を認めました。
これがビーム砲装備の作業ポッドの、1年戦争最初の出撃となりました。
続きます。
ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と～のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と～のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。
