謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!
今日の鉄人28号の感想。
サブタイトル §
最終回 「罪と罰」
あらすじ §
村雨の活躍、助けに来る日本の警察によって、正太郎達はPX団によるピンチを脱します。
村雨は死ぬほどの大けがをしたふりをして、正太郎に戦うよう説得します。そして、正太郎の前で死にます。
バギュームを入れた鉄人は黒部に飛びます。
実は村雨が死んだのは演技で、高見沢にキスをすると、正太郎に演技を知られないようにそのまま立ち去りました。
鉄人は、暴走するオックスと戦い、圧倒的な強さを見せます。
敷島はビッグファイヤーがオックスを暴走させてしまった理由を、過去のオックスの記憶装置を使ったためだと見抜きます。鉄人と戦った過去の記憶に動かされ、オックスは鉄人を襲っているのでした。
敷島に向けたビッグファイヤーの言葉は拡声器で外にも届き、正太郎は父の無実を知ります。父、金田博士はビッグファイヤーに騙されていたのでした。
溶鉱炉が壊れ、解けた鉄が流れ、オックスと鉄人を襲います。
ベラネードが正太郎を撃ちますが、鉄人に踏みつぶされます。しかし、それにより操縦機は破壊され、制御を失った鉄人は正太郎に迫ります。正太郎は、これを自分の罪と罰だと思い、鉄人と一緒に滅びる決心をします。しかし、鉄人は倒壊する建造物から正太郎を守り、自分は高熱で溶解していきます。
感想 §
この作品は、ある意味で、大人と子供の話と見ることができるかもしれません。
愚かであることが必須の要件である子供。そして、その子供の愚かさをフォローするほど十分に賢くはない大人。
今回、正太郎は、「きっといつか僕も罰を受ける」と妙なことを悟ってしまいます。その愚かさをフォローできたのは、大人達ではなく、死人と鉄人という、人間ではないものでした。
大人の方に目を転じれば、正太郎をその気にさせるために死人のふりをした村雨。彼の行為は、確かに正太郎をその気にさせることができ、効果があったように見えます。しかし、上手く行ったのはその点だけ。結局、高見沢を捨てて一人で消えねばならない状況に自らを追い込んだことになります。正太郎の気持ちを考えれば、死んだと言うことが嘘だと正太郎に気付かれてはならない、という考えは分かりますが、それも含めて考えれば、あまり賢い話とは思えませんね。しかし、その不器用さは村雨の魅力です。
ビッグファイヤーも、独自の日本観とでもいうべきものを持っていますね。敗戦でコロッと対米追従に変わった日本を非難し、正しい方向に修正するという主張。しかし、その主張も、金田を騙したり、ベラネードとつるんだり、その過去のいかがわしい行動がビッグファイヤーの言葉への共感を許しませんね。
今回の名台詞 §
ビッグファイヤー「逃げろ逃げろ、弱虫は日本の未来に必要ない」
感動的な言葉はいろいろあれど、最もインパクトのあった台詞はこれ!
シリーズを通して §
全体を通して見たとき、3つの大胆さに驚かされます。
- 終戦後という時代背景を描ききったこと
- 非常に古いデザインのテイストをきちんと堅持したこと
- 子供向けだったはずの作品を、大人向けのドラマに作り替えてしまったこと
途中でぬるい雰囲気もあり、本当に半年間の放送が必要だったのか、という疑問はあります。しかし、それを差し引いても、この独特のムードは存在価値があったと言えます。何しろ、本当に感想を書く価値があるのだろうか、という疑問を保ちつつも、最終回まで感想を書かされてしまったのですから、それだけの力のある作品と言うことに疑いはないでしょう。
もう1つ、美少女の力に頼っていない点も特筆すべきかもしれません。ヒロインと呼びうるのは高見沢ただ一人ですが、いわゆる今風の美少女のデザインではなく、扱いもヒロインとは言い難いものです。それでも、作品には魅力があり、楽しませてくれたことは特筆に値します。また、正太郎自身も、けして美少年とは言えません。いくら、金田正太郎が、ショタコンの語源だと言っても、今風の美少年のカテゴリには入れるのは難しいでしょう。しかし、それでもこの作品は見るものをグイグイと引っ張っていく魅力があったと思います。
この作品で最も印象的だったのは、鉄人の目でしょうか。第1話でギロッと睨む鉄人の目から始まり、そて最終回の正太郎を見守りながら崩壊していく目まで。ある意味、鉄人は機械ではなく、キャラクターだと言えるかもしれません。機械の身体を持ち、人の言葉は喋れないものの、目だけが雄弁に何かを物語る希有なキャラクターです。