Xbox360に標準で付いているHexic HDというゲームが、非常に奥が深い大人向けゲームだということに気付きました。
ある意味で、任天堂もSONYも実現できなかった境地を、あっさりとマイクロソフトが実現したことを意味します。
Hexicとは何か? §
テトリスを手がけたAlexey Pajitnov氏が原案を作成したゲームです。
複数の色のタイルが並んだボードを用いてプレイし、同じ色のタイルを3つ隣接させるとその3つが消える……というのが基本ルールです。
一見、「テトリス」や「ぷよぷよ」のような落ちものゲームのように見えますが、決定的に違う特徴がいくつかあります。
- いちいち何か操作するまで一切の変化は起こらない (反射神経は一切要求されない)
- 明確なゴールが存在する (ブラックパールのクラスターないしフラワーと呼ばれるタイルの形を作ると終わる)
- 中断機能を持ち、短い時間のプレイを繰り返しつつゴールを目指せる
- 運に依存する序盤から、中盤以降は知的に計画するゲームへと変貌する
- 僅かな見落としで、時間を掛けて組み立てた盤面が崩壊するスリルがある
- 崩壊しても致命的な結果にならないような盤面の組み方を考えることができる
- 盤面が崩壊しても、多くの場合修復ができる
これは、プレイヤーの立場から見ると以下のように言うことができます。
- 反射神経は要らないが平常心は重要。焦ったら負け
- 素早さは要らないが慎重さは必要。無理に急ぐと負け
- 膨大な情報を暗記する必要はないが、知的な計画性は必要
- 何時間も連続でゲームに没頭する時間は要らないが、短時間ずつでもコツコツ継続できる継続性が必要
このような特徴は、Hexicというゲームは子供よりも大人の方が有利であることを意味します。
任天堂やSONYの送り出すゲームはたいていの場合、大人よりも反射神経と時間を多く持つ子供に有利と言えます。それゆえに、大人がやっても面白くありません。
しかし、Hexicは大人の方が良い結果を出せる可能性があり得ます。
つまり、希有な大人向けゲームだと感じました。
Hexicを遊ぶには §
Xbox 360を購入すると標準で付属しています。これがHexic HDです。
しかし、英語版で良ければWebブラウザ上で無料で遊べるバージョンがあります。
ActiveXを要求されたので、おそらくIEオンリーです。
レベルが上がるごとに広告が入りますが、無料で遊べます。
上のページからダウンロードできるDeluxe Gameの方はWindows用のプログラムで、無料でデモバージョンのみプレイできます。購入すると、制約が取れます。
3つのモード §
Hexicには3つのモードがあります。
- マラソンモード (特に制約はない)
- タイマーモード (時間制限付き)
- サバイバルモード (消えなかったタイルが残る特殊なモード)
この中で、最も熱い戦いが繰り広げられるのは、おそらく特に制約の無いマラソンモードです。
Hexicの面白いところ §
消すゲームから消してはならないゲームへの変化 §
序盤は、ともかく消すことしかできないので、タイルを消していきます。
そして、偶然に頼りつつ何とかスターと呼ばれるタイルを作ります。
隣接した2つのスターを得た瞬間に、このゲームは「偶然に頼る」ゲームから、「意識的に支配するゲーム」へと劇的に変貌します。
スターは周囲6個のタイルを左右に自由に回転させる能力を持ちます。隣接したスターは互いを回転によって前に送ることで、どこにでも自由に移動できます。そして移動先で、たいていの場合任意のタイルを任意の場所に移動させることができます。
つまり、この瞬間からHexicは計画的に盤面を作り出すゲームに変わります。
盤面の設計 §
スターのような特殊なタイルをどの位置に設置し、それらが持つ効能をいかに発揮させ、どのような結果を得るのか……ということをきちんと考え、それによって盤面を設計することができます。
この設計には唯一の正解はなく、様々な目的の様々な形が考案されています。そして、今でも新しい形が生まれ続けています。
よくある設計目的としては以下のようなものがあります。
- スターを量産する
- 事故が起きても重要なタイルが消えにくくする
- 爆弾とボーナスタイルを一緒に消すことで超高得点を狙う (MMC等と呼ばれる)
最初の2つは、たいていの場合どちらの効能も持った盤面を設計することになります。
とはいえ、最終目的や熟練度などから、必ず同じ形になるわけではありません。(たとえば、今私が使っているファクトリーと呼んでいるパターンは、おそらく他の人が使っている盤面と同じではないと思われる)
技量と目的に合わせて、適当な機能性とバランスを持った盤面を考えるのも面白いところです。
盤面を作る §
設計した盤面は、隣接したスターを活用して実際に組み上げねばなりません。
ところが、ほんの小さな見落としで色が偶然に揃ってしまい、組み上げた盤面が崩れることが珍しくありません。特に、隣接したスターが離れてしまうと、もはや自由な移動ができなくなり、致命的です。
ともかく焦ってはダメです。
崩れた盤面を修復する §
崩れた盤面を修復するのも、1つの興味深い知的なチャレンジです。
予測不可能の状況であるがゆえに、決まり切ったリカバー方法はなく、その場に応じて考えねばなりません。
爆弾処理 §
時々落ちてくる「爆弾」と呼ばれるタイルは、一定回数以内に消さなければなりません。これも事前に計画できないので、臨機応変かつ確実に消すスリルがあります。
特に爆弾処理は慌てたら負けです。慎重にじっくり計画を練って、後遺症を残さないように消さねばなりません。
疲労の自覚 §
簡単な操作で誤ってタイルが消える事故が起こると、「ああ自分は疲れているのだな」と実感できます。
そういう時は、無理に続けないでさっさと中断して寝てしまうに限ります。
ランキング §
Hesic HDはXbox Liveで自動的に全世界のランキングが出ます。
私がブラックパール・クラスターを作ってクリアしたときは、順位が十数万位から六千位台まで一気に駆け上がって爽快でした。
全世界にいるHexicプレイヤーの中で下手な側と上手い側に訳なら自分は上手い側に入るのだ……と思うと、ちょっと気持ちよいですね。
全般的に §
個人的な感想で言えば、「テトリス」よりも「ぷよぷよ」よりも、Windowsに付いているソリテアに近いゲームだ……と感じます。
そう考えると、任天堂やSONYの死角がどこにあり、なぜマイクロソフトがゲームの供給者になれるのか……という理由が何となく見えてきます。
実に興味深いことです。