第12話「ダイチ、発毛ス」を見てたまげました。
飛び抜けて面白いだけではありません。
これは全く正当に正統派のSFのモチーフを描いていますね。
SFが理屈抜きに面白かった時代の理屈抜きに面白いSF小説の世界が、ストレートに継承されている感じです。
巨大ロボットが出てくるだけでSFと称していたSF音痴の日本アニメ界とは思えない凄さですね。
(日本のアニメは、初期には多数のSF作家がシナリオを書いていたはずなのに……)
「フェッセンデンの宇宙」そして「竜の卵」 §
で、具体的に何が継承されたのか……というと、やはりフェッセンデンの宇宙でしょう。
これは、実験室の中で人間が宇宙を作ってしまうという内容で、もちろん作られた宇宙の中に知的生物が生きています。それに対して、人間が神のごとく介入してしまうことができるという話です。
この手の物語としては、他に「重力の使命」という作品があるのですが、読んでいないのでここでは「竜の卵」を取り上げます。これは、中性子星に住む非常に微細な生物に人間がコンタクトする話です。当初、人間は神のような存在として現住生物からあがめられます。しかし、時間の進み方が桁違いに違うため、人間から教えられた知識によって現住生物はあっという間に人間を超える科学技術に到達します。
フェッセンデンの宇宙では、宇宙の中の者達とコンタクトして語り合うような描写はなかった……と思いますが、竜の卵ではそのような描写が存在します。
そのあたりは、チャットで対話できる第12話「ダイチ、発毛ス」の描写と相通じるところがありますね。
非常に面白いです。
神は死んだ §
第12話「ダイチ、発毛ス」で最も興味深いのは、やはり「神は死んだ」という主張が現れてヤサコのコントロールが利かなくなるところです。
これは、いろいろな意味があるでしょう。
約束事の世界の崩壊、絶対的優位な立場が相手を説得できない状況、あるいは何者も特権的ではいられないこと……。
いずれにしても、奥深い面白い作品です。
こういった古典的SFのモチーフをきちんと消化し、無理なく自分のスタイルで語り直すことができるわけですから。